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絶体絶命?

終夜です。自分の作品に納得がいかず、書き直しを実行いたしました。

 暗い路地裏、ビルとビルの間でありゴミ捨て場同然の汚さを誇る場所。

 そんなところを、一人の至って普通の少年が追われていた。

 可もなく不可もない長さの黒い髪に、黒い目。顔はそれなりに整ってはいるが、その顔は今や絶望しかない。

 そんな少年を追っている人影が、三つ、いや五つあった。全員黒ずくめのスーツを着て、サングラスをかけ、極めつけには黒光りする銃、ベレッタM92FSアメリカ軍正式採用拳銃としての名前はM9を持った、屈強な男たちだ。

 路地裏に銃声が一発響く、と同時に少年の頬に一本の紅い筋が走る。

 少年が、痛みに顔を歪めるが、そんなことを気にしてはいられないと、相手も本気になってきたぞ、と足の回転数を上げようとした。

 そのとき、


「ぶべっ!!」


 珍妙な叫び声を上げ、少年は汚れきった地面とご対面してしまった。端的に言うなら、こけてしまった。


『短い人生のだったね』


 自分のことなのに、なぜか他人事みたいに思う少年。

 そのまま撃ち抜かれることを想像し、ぞっとしたが、まぁ天命とあきらめる。自分の命さえあきらめてしまうその根性はどうかと思うが、この状況を打破できる可能性が限りなく低いことからしても、それは仕方がないかもしれない。

 しかし、だ。少年は恨んだ。CDショップで襲撃にあったとき、隣にいた友人は他人のふりをした。あれだけは許せまい。化けてでてやると少年が心に誓ったとき。カツカツとこの路地裏にに場違いな、ヒールの音が響いた。

 不審がって、少年が仰向けになると(いままで、汚い地面とキスし続けていたのは、自分の死を覚悟したからである)そこには、こちらにベレッタM8000 クーガーを向けている少女と目があった。

 プラチナブロンドの背中の中程まであるよく手入れのされたストレートヘヤーに、つぶらな蒼い目、一見人形に見間違うような白い肌、すらりと高い背。一度見たら忘れられないその日本人に似つかわしくない容姿の少女を少年は知っていた。

 輿宮こしみや あや。輿宮グループという、医療から、温泉、デパートなど、幅広く事業を展開している。、大企業の御息女である。その性格は、一言で言い切れる。我が儘だ。残念なことに少年と綾は高校のクラスメイトである。

 少年は呆然とした。この女の子の不興を買ってしまったのか! と、しかもこの様子から相当ご立腹、というか殺す気だろう。親族は、親戚に預けてある妹一人の少年だ。その妹にまで火の粉が飛んでいきそうな予感に愕然とする。


「あきらめなさい」


 綾が言う。その声は誰もを魅了するような声だったが、残念ながら魅了される男子は彼女の周りにはいないだろうが・・・。


「もう、死ぬ覚悟はできてるけど」


力なく少年が答えた。


「ふふ、あきらめてくれましたか」


 綾は頬を緩ませ、少年に向かって手を伸ばした。しかし少年は頭の上にハテナを飛ばして、


「え? 殺すんじゃないの?」


 と聞いた。

 誰だって、銃を持った男たちに突然強襲されたら殺されるか拉致されると思うだろう。


「実は、あなたの・・・」


 綾が言い終わる前に、まだ仰向けに倒れていた少年の頭の方に何かが落ちてきた。もうもうと、土煙が舞う中


「ぐっ」


「かはっ」


「ぐえっ」


「ぎゃっ」


「うっ」


 なぜか、男たちの悲鳴が路地裏のコンクリートの壁に響いた。


「なにごと!!!」


 綾が叫ぶが、男達に反応はない。

 視界を覆っていた土煙が晴れた。

 何となく立ち上がっていた少年と、少し慌てている綾はことごとく倒れた、男達の中心に、一人の少女が立っているのを見た。

 エプロンドレスという服装で、腰まで届く白い髪に、紅い眼、肌は陶磁器のように白く、背も高い。顔の造形はまるで人形の様だった。しかし、その顔に表情はない。

 少年は、彼女も知っていた。


「怜ちゃん」


「主の命を聞くのは癪ではありますが、あなたの命の危険ともなれば話は別です」


 少年は、この場にこの怜という少女を寄越した、先ほど呪ってやろうと思っていた親友・愛沢あいざわ 祐介ゆうすけのにやけた顔を思い出した。少し殴りたくなったが本人がいないので仕方がない。後から【能力】を使って仕返しをしようと思う。




 1987年、世界中に特殊能力(ESP、PK能力ではなく)を有する人間が現れ始めた。

 その特異性は、すべての特殊能力者が視認したモノをどうこうするモノであったことだ。

 確認されたのがこの年だっただけで、それ以前に、存在していたという説もある。たとえば奇跡と呼ばれていたものは彼らの起こしたものだとか、地球規模で起きた災害さえ彼らのせいだとする説もある。

 その当時は確認された人数は世界で十人も居なかったが、二十年後の今では一千人ほどに増えた。

 二十年でどうしてそこまで人口が伸びたかは知らないが、とんでもない伸び率だ。

 それでも少ないことに代わりはなく、その存在は、貴重であったが、危険視もされていた。

 能力者達を利用しようとする人間も少なくなく、一時は能力者をめぐって世界戦争まで起きかけた。

 そのため、二度とその様なことが起こらないように、能力者達は組織を作った。

 その組織の名は、世界能力者連合。なぜか通称がクラウンズ。ひねりも何もない名前だが、組織の目的は、能力者達の管理、及び能力者同士の争いの防止である。

 愛沢 祐介は、能力者だった。

 彼の能力は、非生命体を生命体に変える瞳、【入魂の魔眼】である。

 もうお分かりだろうと思うが、怜は祐介に命を与えられたモノである、与えたモノがマネキンだったため色が付いていなかったところは祐介の任意である。

 が、しかし服装は完全に祐介の趣味である。




 

「では、家までお送りいたします」


 と言って、綾と少年のほうに近づいてくる怜。

 綾自身は、それなりの武術の心得があるといっても、ものの数秒で屈強な男達を倒した怜には敵わないだろう。

 そこで、綾はある作戦に移った。

 その名も・・・


「それ以上近づいたら、彼を殺すわよ!!」


 綾は、少年に銃口を向けた。

 人質作戦である。


「人質とは生きているから人質。大体、貴女は、飛鳥様の能力が目当てなのだから、貴女に飛鳥様は殺せない」


 そう言いながら、どんどん近づいていく怜。

 見えてないのかもしれないのだが、綾の指は引き金にかかっている。

 さすがに生命の危険を感じた、飛鳥、平安飛鳥は、仕方なしに、逃げた。

 綾との距離は、二メートルほどあったので、全くの余裕を持って逃げ出すことが出来たように見えたが・・・


「まちなさい」


 飛鳥の頬にもう一筋の紅い線が走った。

 というか、綾は手に持った拳銃で、飛鳥を撃っていた。

 思わず、立ち止まり、引きつった笑顔で飛鳥が振り向くと、そこにあったのは銃口だった。

 一瞬にして、二メートルの距離を詰めた方法がわからないが確かにそこにあるのだから仕方がない。

 本格的に生命に危機にさらされてきた飛鳥。というか、絶体絶命である。

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