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ハイドレンジア王国

「シェリー様、入ってもよろしいでしょうか」


 扉の外から男の声が聞こえた。

 シェリーが返事をすると、若い男が数冊の本を抱えながら入ってきた。男はひょろっとした体格で、抱えた本の横から覗いた顔はなんだか愛嬌がある。そのふんわりした癖のある茶髪も相まって和やかな雰囲気の男だった。


「お初にお目にかかります。僕はクロム殿下側近の一人、ラセット・ゾイサイトと申します。このたび、シェリー様へのご指南役をおおせつかりました。気軽にラセットとお呼びください」

「シェリー・ベルゼーヌです。よろしくお願いいたします」


 二人が椅子に腰かけたところで、ベキアがお茶を出してくれた。


「ラセット様は、ハイドレンジア一の知恵者と言われている方なんですよ」

「よして下さいベキアさん。話しづらくなるでしょう」


 ラセットはベキアに苦笑してみせたのち、シェリーに視線を移した。


「それにしても、クロム殿下からあなたのお話を聞いたときは驚きました。まさか森で『王の番』を見つけたなんて何かの冗談かと」

「その……『王の番』については、やはりクロム様からでないと教えていただけないのでしょうか」

「ええ、そうですね。『王の番』についてはクロム殿下から直接お聞きになってください。でも……」


 ラセットはシェリーを見つめてニヤニヤしている。


「あの何か?」

「あ、いや失礼。私も嬉しいのですよ。なかなかクロム殿下の『王の番』が見つからず心配していたので。それにこんな美しい方が『王の番』だったとは……ねえ、ベキアさん」

「ええ、本当にようございました」


 ラセットとベキアが嬉しそうに顔を見合わせる。

 美しいなんて言葉をかけられたことがないシェリーは、何か裏があるのではと疑ってしまいたくなったが、しかし彼らの様子はとても相手に悪意があろうようには見えなかった。むしろ心底喜んでいるといった様子だ。これまで忌まわしき黒髪の令嬢と罵られてきたシェリーにとって俄かには信じられないことだが、どうやらこれが文化の違いというものなのだろう。

 ただ褒められ慣れていないシェリーはなんだか居心地の悪さを感じて話題を変えることにする。

 

「ところでクロム様の側近は、ラセット様以外にもいらっしゃるのですか?」

「部下はたくさんいますが側近となると僕以外にあと一人ですね。今は出張で出ていますが、そのうち帰ってきたらごあいさつさせましょう。まあでも、うるさい奴なので僕はできるだけ帰ってきて欲しくないんですけどね」


 そう言ってラセットはイタズラっぽく笑ってみせる。


「ではそろそろ、我が国ハイドレンジアについてご説明しましょうか。シェリー様は、ハイドレンジア王国についてどのような知識をお持ちですか?」

「失礼ながらあまり知識はありません。魔物が多く棲息しているということくらいしか」

「十分です。おっしゃる通り、我が国は資源が豊富に取れる代わりに、昔から多くの魔物被害に悩まされてきました。一方その歴史のなかで対魔物戦闘術が磨かれてきたのも事実です。特に王族はその筆頭として対魔組織を率いています。第一王子でいらっしゃるクロム殿下もまさに第一線で活躍されています」

「そういえば昨日、クロム様に助けていただいたとき、古代魔法を使っていらっしゃった気がするのですが」

「おお、そんなことまで気づいておられたのですね。これは驚いた」

「確信があったわけではないんです。ただ、現代魔法にはない詠唱文(スペル)だったので、もしやと思っただけです」


 ラセットは一冊の本をテーブルの上で開き、シェリーに見せる。


「古代魔法は現代魔法と違って、適性のあるなしが大きく影響します。つまり使える人間が限られているのですね。さらにその難解さもあって現在ではどの国でもほとんど使われなくなりました。ただ我が国の王族には昔から古代魔法の適性を持った方が多く生まれます。それゆえ魔物退治も王族が第一線で活躍されているのです」

「そうだったのですね。古代魔法はすでに失われた魔法だと思っていました」

「諸外国ではそう思われているのが一般的ですね。だから他国の人々からすると、すでに廃れたはずの古代魔法を用いている我が国は恐ろしく見えるようで。ハイドレンジアの王族は、闇の一族の末裔だなんて言われたりするんですよね」


 シェリーもそう思っていた一人だ。ハイドレンジアの王族は闇の魔法を用いる恐ろしい者たちだと。ただそれが闇の魔法ではなく古代魔法であったというなら印象はずいぶん変わる。むしろ古代魔法についてはシェリーも大いに興味があった。


「今でも古代魔法を使いこなす方々がいらっしゃるということは、ハイドレンジアには古代魔法に関する資料も数多く残っているのでしょうか」

「ええ、そうですね。かなり古いものも含めて、全て王家の書庫で保管されています」

「この屋敷にも書庫があるのですか?」

「ええ、もちろんです」

「その書庫を見せていただくことはできますでしょうか」

「構いませんよ。シェリー様には屋敷の中で自由に過ごしてもらうようにとクロム様から仰せつかっています。そういえば屋敷のご案内もまだでしたよね。昼食後、僕と一緒に一度屋敷の中を見てまわりましょうか」

次回は、屋敷を散策しながら新しいキャラに遭遇したり、書庫でたくさんの本にホクホクしたり……します!

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