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終末配達ロボット、君の町へ  作者: 非常口
case.1 オジイチャン
14/14

No.13 倉庫

終末世界でロボットは、とある場所を見つける。

少女は開いた石畳の縁に立ち、息をのんでいた。

 木々のざわめきも、鳥の声も、まるで遠くへ吸い込まれたかのように静まり返る。開いた階段の下からは、湿った風とわずかな機械油の匂いが上がってきて、神社の神聖な空気をじわじわと侵食していく。


 彼女が何も言えずに立ちすくんでいると、遠くから音が聞こえた。

 ――ガガ、ガタン。

 遠くから金属が石を蹴るような音。振り向くと、木漏れ日の中をマイルズがすごい勢いで駆けてくるのが見えた。背後からは、休憩していた残りの二体の犬型ロボットもそれに続いて走ってくる。


 「マイルズ!」少女はほっとして声を上げる。「見て、これが――」


 息を整えながら少女は起こったことを早口で説明した。マイルズは橙の光を白色に変え、無言で数段の階段を降りていった。


 冷たい金属の感触が響く。

 扉の前に立ったマイルズは、機械的な静けさの中でわずかに頭部を上げた。

 そのレンズのような目が、扉の上部にある小さな突起――ボタンのような装置に焦点を合わせる。


 少女は階段の上で、犬型ロボットの後ろからその様子を眺めていた。


 次の瞬間、マイルズの頭部から細く鋭いオレンジ色の光線が放たれた。

 ピィィィ――という高い音が境内に反響し、レーザーが正確にボタンを貫くように照らす。


 少女は息を飲んでその様子を見守った。犬型ロボットたちは彼女の左右に並び、まるで護衛するかのように身じろぎひとつしない。


 数秒後、マイルズの機械音声が低く響く。


 「――トキワ地区第二地点、配達発送所と確認。入場権限およびパスワードを入力」


 その言葉と同時に、レーザーが静かに消えた。

 そして――


 ゴウン……ゴウン……と、地の奥から唸るような低音が響き始める。

 巨大な金属扉がきしみながら横へスライドし、封印が解かれる音を境内いっぱいに轟かせた。

 内部からは冷たい風と、淡い青白い光が吹き出し、少女の髪をゆっくりと揺らす。


 マイルズは動かず、その光を見つめ続けていた。

 少女は犬型ロボットの後ろで、恐怖とも期待ともつかないまなざしで、その未知の空間を見つめていた。


 マイルズが音もなく中へ入っていくのを、少女は階段の上から見守っていた。

 階段の上からでは、中は見えない。


  やがて、マイルズの姿が見えなくなると、少女は恐る恐る階段を降り始めた。

 犬型ロボットたちも、まるで少女を守るかのように静かにその後ろに続く。歩幅を合わせ、音を立てないように階段を下りていく。


 階段を数段下りると、ようやく中の様子が見えてきた。

 鳥居の先の明るく幻想的な緑とはまったく違う空間が広がっている。ここは、照明が白く、壁も天井も床も黒い金属で覆われていた。金属板の継ぎ目や配管の間に、緑色の光が細く線を描くように走っている。空気は冷たく、風はなく、空間全体が人工的に設計された「別世界」であることを告げていた。


 中に入ると、200センチほどの鉄筋で組まれた三段の棚が長く並んでいるのが見えた。棚には無数の箱が整然と積まれている。その箱の多くにラベルが貼られており、いくつかは開封されて中身が露出していた。開けられた箱の中には保存食やパックされた食料がぎっしり詰まっているもの、薬らしき小さな容器やアンプルがきちんと並べられているものもあった。箱の隙間には古い配線や保守用具が差し込まれ、棚の端には錆びた工具がいくつか置かれている。


 少女は棚の間をゆっくりと歩きながら、ひとつひとつの箱を丁寧に覗き込んだ。指先でラベルをなぞり、封の切られた包みを手に取り、中身を確かめる。中には見慣れた保存食があった。


 少し進むと、マイルズがいるのが見えた。彼は何かのモニターのような装置の前に立ち、画面を静かに見つめている。少女はマイルズの姿を見て、ほっとしたように表情を和らげ、足早に駆け寄った。

 黒い金属の台座に据え付けられたモニターのような装置を無言で見つめている。


 「……ここ、なに?」


 少女は周囲を見渡しながら尋ねた。


 マイルズは何も言わない。

 すると、マイルズの目が緑色に光り、それに呼応するように黒かったモニターの画面に、光が灯った。


 「HC-47、個体名テリ、メリ、ペリにエネルギー供給。」


 その言葉と同時に、マイルズの前の装置から何本もの黒いケーブルが蛇のように伸び出した。

 ケーブルは空気を切るような音を立て、犬型ロボットたちの方向へ伸びていく。

 そして、まるで生きているかのように正確に三体の犬型ロボットへと接続された。


 接続が完了すると、カチリという金属音とともに、犬型ロボットたちの目が一斉にオレンジ色に光り出した。

 沈黙していた空間に、かすかな充電音が響く。少女は思わずその光景に息を呑んだ。


 その直後、マイルズが再び声を発する。


 「発送所及び管理拠点と確認。在庫状況を確認します。発送所全体のデータを処理中。危険物取扱モードに移行。権利者コードを送信します。」


 電子音が室内に広がった。

 次の瞬間——。


 鈍い重低音とともに、奥の壁の一部がゆっくりと回転を始めた。

 少女は思わず後ずさる。

 金属のきしむ音が反響し、黒い壁が上下に分かれ、内部の構造が露わになる。


 目の前で、ただの壁だった部分が、まるで舞台装置のようにひっくり返った。

 そして現れたのは、整然と並んだ色々な形、様相の大量の武器——銃、ブレード、見たこともない形状の装備品。


 無機質な光がそれらの表面を滑り、反射する。

 少女の目は自然と大きく見開かれ、息を呑む。


読んでいただき、ありがとうございます。評価やブックマーク、感想等をいただけると励みになります。1日1話更新を目指しています。気分でもっと高い頻度で更新するかも。

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