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日常 地域 こんなことあんなことそんなこと

いつものカラオケ屋にいつも通りに行ったらいつもと違ってすご~く喜ばれた話

作者: 池畑瑠七

 三連休の中日。梅雨空でムシムシと暑い朝。朝のルーティンワークを終わらせてから、いつものカラオケ店に行った。

 わりと頻繁に通うようになってから、店員さんにもいつの間にか顔くらいは覚えて貰っていたようだけど、受付での会話はいつも判で押したように毎回ほぼ、一緒だった。


「いらっしゃいませ」「ご利用時間は」「オーダー方法はご存じでしょうか?」「システムのご希望はございますか?」


 こっちも淡々と、いつも通りに答える。

「えっと2時間半、ワンドリンクで」

「ジョイサウンドでお願いします」


 それでも近頃は「いらっしゃいませ」のまえに「あ(にっこり)」がついて、「あ、いらっしゃいませ」って言われるようには なってた 笑。


 その日もいつもの店員さんの「ああ!いらっしゃいませ」で始まった。

「おはようございます、お願いします」

 その後が、いつもと違っていた。


「あー、よかった今、一部屋だけ空いたんですよ!」


 ん?なんか、うれしそう? (。´・ω・)?


「今朝出勤してきたらもうほとんど部屋埋まっちゃってる感じで!小部屋が空いてなかったら団体用のあちらの大部屋にお通しするところでした!」と、受付ホールからよく見える、扉が解放されてる広い部屋を彼は指さした。


「あっ、そうなんですか?よかった!」


 あああ~、そうね、なんたって三連休だもんね、雨だし暑いし、早い時間から安くて涼しいカラオケにみんなで遊びに来てるわけか!

 受付とドリンクを運んだり清掃に向かう店員さん達で、バックヤードも既にてんてこ舞いしているらしかった。


「大変ですね、連休だからお忙しいですよね、それにもうすぐ夏休みだし」

「そうなんですよー(;'∀')、ご家族連れとか沢山いらっしゃるので」

「お忙しいのに、いつもスイマセン…」


 連休を外して来ればよかったかなあ。こんなに忙しい日に来店してしまって申し訳なかったかな、って思いが一瞬心をよぎった。

 でも返ってきた彼の言葉は、ちょっと予想外なものだった。


「いえいえいえ!常連の方にいらして頂いて、ホッとしますよ~~!」


 え? そうなの? ('◇')ゞ 


 特段に忙しい日にやってきて余計忙しくさせてるんじゃ、って思ったのに。何かホントに嬉しそうに笑ってくれてる。


「(オーダーや滞在パターンが)わかるんで!ありがたいです、凄くホッとします!」


 あっ、そういうこと‥‥‥?


「こちらこそいつもお世話になって。ありがとうございます(*´ω`)」

「じゃ、お部屋は〇〇号室になりますね。ごゆっくりお楽しみください!」


 そんな会話をしてたわずかな間にも家族連れが次々に入店してきて、あっという間に2家族がホールで順番待ちになった。

 その人たちの受付での声を背中に聞きながら、指定の部屋へと速足で向かった。


 いつもはクールな接客態度で、ちっとばかし強面な感じの店員さん。初めて見る超ニコニコ顔に、こちらも嬉しくなってニコニコ。 初めて交わした業務トーク以外の、フラットなおしゃべりだった。

 

 たぶん店長さんだろうな。いつ行っても居て、てきぱきと手際よくお客をさばいている。そんな彼が忙しさの中にポロッとこぼした本音に、なるほど!と思った。

 そうかー、勝手のわからないお客さんが一気に押し寄せて沢山ある部屋がみんな埋まってる状況、確かに接客する側は相当タイヘンだよね。どの部屋からどんなオーダーがいつ入って来るか、全く読めない訳だもんね。


 自分は決まって朝の格安時間帯だけ。ワンドリンクオーダーも判で押したように入室と同時にコーヒーを頼む。変えてもせいぜいカフェオレかウーロン茶。こんなパターンだと、どんなに回数多く来ても売り上げアップにはほとんど貢献してないはずだ。

 ただその分、ほっといて大丈夫な手のかからない利用者だって事は、まあ間違いなかろう 笑。


 この日みたいに超忙しい時、人手が圧倒的に足りない中で対応してる店員さんにしたら、少しでも部屋がこのパターンで埋まってれば確かに少しは気が楽、なのかもしれないな。


 そっかあ、そういうこともあるんだなあ~。


「朝カラオケ」ってシステムで極めて安価な利用料の恩恵に有難く浴し続けてきたんだけど。あまりに格安で「こんな安くていいのか?」ってちょっと申し訳なさも感じたり。

 だからこの日も「あーいつもの客だ、この忙しい所に…」的な塩対応されたとしてもしょうがないなあ、ってどっかしらで思ってしまってた。それがまさか、こんな喜ばれ方をするとは思ってもみなかった。

 目から鱗とはこのこと。


 思わぬところで新たな気づきにちょっと、なんか感動だった。こっちこそ嬉しくって、お店に一層親近感が湧いたし心が軽~くなった。

 その日はいつもよりもテンションが上がって、練習中の難曲も気持ちよくチャレンジし続けられたのは、言うまでもない。


 いつものカラオケ屋さん。


 毎度気持ちよく利用させて貰って、ホントありがとうございます。

 

 












 コロナ禍の折、ほぼ開店休業状態に陥った市内のカラオケ屋さんは多くが閉店してしまった。その波を乗り越えて営業を続けてるこのお店は、近隣のカラオケ好きにとってとても貴重な存在だと思う。

 カラオケ人気の再燃もあって、長期休暇中や週末はもちろん普段の日もかなり忙しそう。受付も配膳も片付けもと、ワンオペで頑張っている姿も時々見かける。シフトも結構厳しいんだろうなあ。

 そんな状況でも、いつ行っても爽やかな笑顔で応対してくれるスタッフの皆さんには、感謝の想いで一杯になる。

 今後もスタッフさんの笑顔が溢れてる、大好きな店で在り続けて欲しいなと切に願う。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] なんてほっこりするお話……! お店の方と仕事以外のお話ができるとなんだか嬉しいですよね。 その気持ち、とってもわかります!(*´ω`*) 久々にカラオケにも行きたくなっちゃいましたv 池畑さ…
[一言] こんにちは。 私もよく朝カラをやりますよ。 安いですよね。 ワンドリンク頼んでも、500円いかなかったり……。 私も接客業なので、(問題のない)常連さんが来る安心感はわかります。 知らない…
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