抹茶の苦さ 和菓子の夢
月に一回お母さんに頼まれて、隣町のおじいちゃんとおばあちゃんの家に行く。
お父さんもお母さんもおじいちゃん達が高齢で心配だからと言うが、趣味を楽しんでいて高二の僕よりもよっぽど元気だと思う。
僕が行くとおじいちゃんはほとんど家にいない。カメラを持って友達と写真を撮っている。歩いて行ける場所がほとんどだが、たまに遠出をするようだ。おばあちゃんは行くと趣味のお茶を立ててくれる。好きなお菓子を買っておいでとお金をくれるが、スナック菓子を買うわけにいかないので、おばあちゃんがいつも使っている和菓子屋へ行く。
「いらっしゃいませ」
思わずスマホから顔を上げて声の主を見る。いつもは和菓子職人の店主の妻でおばあちゃんの同級生だった女性が立っているが、今日は若い女性がいる。珍しくて見てしまうが彼女は気にしていないようだ。
「何になさいますか」
「ええと、今月の和菓子三つお願いします」
おじいちゃんは家にいないが仲間外れにすると拗ねるので三つ買ってきてとおばあちゃんに頼まれている。
「今月の和菓子三つですね」
お金を渡しいつもよりいびつな包み紙を受け取る。
お茶を飲みながら特に話題もなかったのでおばあちゃんにその話をすると、おばあちゃんが色々教えてくれる。
「お孫さんが後を継ぐって、お店に来たらしいわよ。何でも大学卒業していいところに就職したのに、ちっちゃい頃からの夢だったおじいちゃんの店を継ぐのを諦められなかったらしいわ。何年か会社に勤めたけどやめちゃって、和菓子の学校へ行って免許取ったらしいわよ」
おばあちゃんがお菓子を買いに行った時に立ち話をして聞いたらしい。僕は他人ごとで特に興味もなかったが、話もないのでおばあちゃんに合わせる。
「でも、もったいないねー。その人、せっかくいいところに就職したのに」
「本当そうよね。せっかくいい大学卒業してちゃんと就職できたのにね。今お客さん少なくてお店やるの大変みたいだし」
おばあちゃんが口にした大学名に僕はショックを受けた。僕が目指す大学より偏差値が上の大学だったからだ。
塾に通い毎日いっぱいいっぱいの僕が目指す大学より上。
両親は僕の気分転換のためにおばあちゃんの家へ来させているのだと思う。そんな気を使わせてしまう僕。
黙ってしまった僕をおばあちゃんが不思議そうに見ている。
涙が出そうになるのをぐっとこらえてお茶を飲む。
おばあちゃんが立ててくれたお茶はいつになくマズかった。




