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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第80話 夢は枯野を駆け巡る。

「こんにちはー。ダンマスOBいらっしゃいますかぁ?」

「な、何事だ?」

「どーもー。ダンマス互助会の者です」

「何だそれは?」


 知らないのも無理はない。俺が今作った。


「ダンジョン・マスター同士がお互いに助け合って生きていこうという、非営利博愛団体でございます」

「聞いたことがないぞ」

「比較的最近できたものでして、お客さんにもぜひご加入いただきたいと。テイム!」

「うきゃっ!」


 絶妙なセールス・トークで気分を解しておいたところでテイマー・スキル炸裂である。

 これは抵抗できまい。


 ピカーン!


 ダンマスOBが金色の光に包まれた。

 眩しい光が薄れると、俺の前に跪くダンマスOBがいた。


御前(おんまえ)に」

「古いだけあって大げさだね。名前がないと不便だからちゃっちゃと名付けちゃうね。お前の名前はヘラクレスのヘラ男だ」

美麗(みれい)との差が激しすぎるニャ」


 ヘラ男の体がもう一度金色の光に包まれた。光の中でシルエットがムキムキに変わって行く。

 光の中から現れたのはゴリマッチョのひげダンディだった。


「えーと、名前変えて良いかな?」

「ボス! 名付けは親子の契約と同じです。つれないことをおっしゃいますな!」


 何か、こいつ暑苦しくて苦手かも。新人だから下積み扱いで良いよね?


「そーゆーことで、ヘラ男は美麗の下で働くように。以上」

「ボスゥ……!」


 ヘラ男はドナドナドーナと、どこダンに飲み込まれていった。


「ちゃんと社員の福利厚生は配慮するからね。良い星系にたどり着いたら、お手頃案件を見繕って放し飼いにしてあげるし」

「多頭飼い飼育が崩壊しないことを切に願うニャ」


 飼い主の責任はきちんと果たしますよ。お互いに寿命が長いのでね。


 ◆◆◆


 それから俺たちは1日10人のダンマスOBを勧誘し続けた。1カ月後には300人のダンマスOBをテイムする結果となった。

 随分デカい組織になっちゃったね、ダンマス互助会。


 勧誘ばかり続けて活動をしないのもネズミ講みたいで感心しないので、俺は一旦新規メンバー募集を打ち切ることにした。


 300隻も宇宙船があれば当面十分でしょう。1日1隻見て回るだけで10カ月かかるからね。

 通常のダンジョン征伐もやらなきゃいかんし。


「アリスさん、スケジュール管理が必要です」

「確かにやることが増えたニャ」

「ブラックはよろしくないですからな」

「事業主はトーメーニャから、好きにするニャ」


 そこで俺は基本スケジュールを提案した。


「月曜日から金曜日は、宇宙探訪ね。毎日1隻ずつ宇宙船のお宅拝見をやって行くのよ」

「ダンマスOBのどこダンで移動するだけニャから、お手軽宇宙旅行ニャ」


 星系到着が近い宇宙船を割り出して、「もうすぐ到着リスト」に加えていくわけね。そういう管理はアリスさん得意でしょう?


 土曜日は現役ダンジョン討伐の日。週に1度1階層か2階層攻略して行けば1月くらいで1カ所討伐できるでしょう。


 日曜日は休業日。骨休めをさせてもらう。


「そんな感じでどうでしょう?」

「良いんじゃニャアか? 週休2日でも問題ニャイが」


 そうは言っても、宇宙探訪の時は別に戦うわけじゃないので、楽をさせてもらえるからね。週休1日で十分じゃないかな。


「ただあれだね。着いた先に知的生命体がいるとは限らないよね」

「それはそうです。そのときはまた、新たな目標を定めて旅を始めるだけです」


 美麗は当然のこととして、旅の現実を告げる。


「そうか。むしろ出会える方が稀なんだな」

「はい。我らの生涯は旅そのものです。途中、「命」に出会えればそこでひと時増殖する。そしてまた旅に出る」

「旅こそが人生なんだな」


 どうだろう。それは既に「旅」ではなく、人生そのものではなかろうか。人生の中に一時期、いやほんの一瞬一カ所にいる時間がある。


 急流を流れる花弁が、流れの淀みに一瞬捕えられたような。


 俺は花びらだなんて風流なものじゃない。せいぜい流れに浮かぶ(あぶく)のようなもんだ。どこに流れ着くかなんてわかりはしない。


 だが、ただ流れに飲み込まれてやるつもりはない。急流を渡り、乗り回し、流れに逆らい、どこまで行けるか、行ける所まで行ってやろう。


 旅の日記の最後には、アリスさんよ、こう書いておいてくれ。


「旅に病んで、夢は枯野を駆け巡る――」

 


「気持ちよくモノローグを並べているところに恐縮ニャが」

「何ですか、アリスさん?」

「波動的な大砲を連ねた、宇宙の海賊さん艦隊が降伏を迫ってきたニャが」


「ほほう。それはそれは、御大層なことですな」


 俺はちょっぴりおセンチなムードから一気に浮上した。


「ほんじゃまあ、我が300のダンマス軍団よ。『圧倒的』という言葉の意味を田舎のヤンキー君に教えて差し上げなさい!」


 俺は――笑った。


(完)

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