第74話 霊体だから名前は『レイ』ね
「さて、それじゃあちょっくらダンジョンを制圧しましょうかね? トーメー探検隊、出発!」
号令一下、勇ましく出発するわけですよ。ストーン5が。
俺? 「安全第一」って言ったじゃない?
反省したのですよ。テロリスト・ダンマス乱入事件以来、不必要なリスクを取るのは愚であるとね。
俺ダンに下がっていればほぼほぼ安全なわけですよ。ダンジョン入り口のセキュリティも改善したしね。
今や、俺の許可なき存在は「何人たりとも」俺ダンには立ち入れません。それくらいはしとかないとね。
物騒な世の中ですよ。
下僕たちも、俺なんかがうろついていない方が戦いに専念できるってね。
弱っちいのがうろうろしていると、攻撃に集中できなかったらしいのよ。そこは申し訳なかったなと。
人には「器」があり、適材適所という言葉もある。前線向きの人材がいれば、裏方向きの人もいる。
みんなちがってみんないい。そーゆーことでしょ?
ということでおれは1Kマンションを戦況監視ルームとして、後詰めに徹することにしたわけです。
いざという時は、俺ダンの異空間殺法で介入はできるからね。高圧洗浄機もスタンバイしてるし。
ここのアンデッドは実体を伴う系統に偏っているので、ストーン5との相性が良い。
非実体のゴーストは壁やら床やらを通り抜けて来るので厄介だが、ドレインが効くような生身のメンバーを立てなければ恐れる必要がない相手だった。
要するに俺達にとってこのフロアは「カモ」だということだ。
「もう少し可愛げのあるモンスターたちだったらテイムしようって気になるんだけどな」
「死体や骨に歩き回られても困るニャ」
そういう見た目ってだけで、本物の死体というわけじゃないけどね。気味は良くないわ。
「死体じゃなくて、そういうモンスターだってことなら、テイムしようと思えばできるんだな」
しないけどね。ゾンビ映画は趣味じゃない。
「あれ? ゴーストはどうなんだろう? 生物じゃないからテイムはできそうもないね。そうかといってゴーレム化できるかというとこれまた難しそう」
実体らしいものがないからねえ。でもまあ、電気信号とかガスっぽい感じもあることはあるか。
あいつら、壁抜けができるからどこでも行けて便利なんだよね。
「お試しでゴースト1体をゴーレム化してみようかな」
俺は、次にゴーストが出た時はプラズマ放電で消さないようにと、ストーン5に念押しした。
出て来てほしいとなると、なかなか出て来ないね。
マーフィーの法則を働かせている内に、ボス部屋が近付いて来た。これは無理だったかとあきらめかけたところで、ようやくへそ曲がりのゴーストが天井から降りて来てくれた。
「ほい、来た!」
俺は急いでダンジョンに降り立つと、早速ゴーレム・マスターのスキルを使用した。
「我が下僕となれ。クリエイト・ゴーレム!」
相手に精神らしきものが存在するせいか抵抗を感じたが、気合でねじ伏せ、俺色に染めてやった。
ゴーストはぐるりと裏返って、地面に落ちた。
「あら、大丈夫かな? あ、霊体だから名前は『レイ』ね」
名付け行動が良かったのか、ゴースト改めレイはふわりと地面から浮き上がった。
スキル独特の感覚で、魂の絆が結ばれたのを感じる。
テイマーでもゴーレム・マスターでも、この下僕との「リンク」が重要な役割を果たすことに俺は気が付いていた。
「リンク」は時空を超えるのだ。
つまり、俺ダンの中にいても俺は外にいる下僕を操ることができる。それだけではない。彼らの感覚を共有することができるのだ。
やったー! どこでものぞき放題だね! そういうことじゃないんだけど……。
試しに閉ざされたボス部屋にレイを送り込んでみると、部屋の中央にぽつねんとリッチが佇んでいるのが見えた。
「おっ、久々魔法系モンスターですぞ」
「ニャんだって?」
「リッチです、アリスさん」
「その言い方だと、ボクがお金持ちみたいに聞こえるニャ」
面倒くさいね、どうも。紛らわしいから「骸骨博士」ってことにしようか?
「ボス!」
「お? 増田か? 珍しいな、そっちから呼び掛けて来るのは」
「こいつ、気絶させて捕まえられますかね?」
「手加減が難しいけど……、修理まで視野に入れればできるんじゃないか?」
所詮骨だからね。直すのは難しくないだろう。
「できたら、ワタクシに使わせてください!」
「ああ、無くなった体の代わりにしたいのか?」
「はい。ゴーレム化して抵抗を無くしてもらえばワタクシが入り込めるようになります」
なるほどね。先住民がいる所にはそのまま住みつけないが、住人がいなくなればヤドカリみたいに入り込めるってわけか。
「ルックス的にはあまり仲間にしたくないけどなあ」
「大丈夫です。人化の術という奴で、人間の外見を取ることができますから」
「それならいいか。よし、プラズマ放電で失神させろ」
「ま゛っ!」
ストーン5はボス部屋のドアを力強く押し開けた。
虚ろだったリッチの眼窩に、黄金色の光が灯った。
「我が住処を騒がせる身の程知らずは何者か……ばばばば」
何か格好良いセリフを語ろうとしたらしい骸骨博士にお構いなく、ダイヤマンがプラズマ放電(通称「電マ砲」)をぶちかました。
ガクガク震えていた骸骨博士は、耳から煙を出しながらひっくり返った。
「ああー、ちょっと電圧が高すぎた気もするが、大丈夫かな? 煙が出てたよ? 脳は使わないから多少焦げていても大丈夫? それならいいか」
電気屋さんが聞いたら怒られそうな会話をしながら、俺達は気絶した骸骨博士に近付いた。
「出現順のせいで、『ゴールデン黄金バトウ』の人間版という見方しかできないや」
「経験が人間を形作るということが良くわかるエピソードニャ」
こっちの方がよほど「黄金バッ〇」的なルックスだけどね。




