第73話 お宝は金未来ミイラ。早口言葉か?
何か残念な感じで第3層の討伐は終了した。
さて、宝箱的なものはどうかしら?
「ピカーン!」
ヨッシャ、出た―!
ボス戦とドロップ・アイテムがアレな感じでしたからね。せめて、宝箱の中身は充実していてほしいと思うですよ。本当に。
棒の先っぽでツンツンやる儀式の後、宝箱オープン!
「パッパラー! 金未来ミイラ? なんそれ?」
うん? 近未来人をイメージした頭部が大きくなった全身黄金製のミイラ?
えーと、ツッコミどころ満載だねぇ。
ひとーつ、近未来と金未来。字が違ーう!
ふたーつ、近未来のミイラって何やねん。未来やったらミイラちゃうやん!
みーっつ、全身黄金製のミイラって何やねん。肉体ねえじゃん!
ただ、金の量が半端ないっス。
金の比重って人体の20倍くらいあるからね? 体重60キロの死体じゃない、ボディーだとして、金の重さにしたら1200キロあるよ? 1.2トンだよ?
金の価値? 1グラムで8千円とか、1万円とかするでしょう。
ざっと100億円は下らないよ。この下らないアイテムが。
うわー。逆に引くわー。
「これは一遍には世に出せないね」
「こっちの世界では相場が大暴落するレベルニャ」
「せいぜい10キロくらいずつ、小出しにして売りさばこうかね」
金のミイラを喜ぶ変態はさすがにいないと思うのよね。
いたら相手にするの嫌だし。
「感覚がおかしくなってるニャが、10キロでも8千万円以上の価値ニャ」
そりゃそうか。ネックレスがどれだけ作れるんだって話だね。
何だかこの先ダンジョン攻略とかするのが、ばかばかしくなって来たね。帰ろうか、もう?
そうもいかない? やれやれだぜ。
やるけどさ? 社会貢献でしょ? わかってますよ。
そうは言っても、メンタル的にきついわけですよ。
一回休憩していいかな?
今日はここまでで切り上げて、また明日ここから再開すれば良いでしょ?
俺は「早退」して、我が家に引き上げることにした。
◆◆◆
俺ダン入って2秒で我が家。
職住近接って便利だね。俺ダンサイコー。
「ただいまー」
「ブヒヒン!」
俺は懐かしの我が家でアロー君をなでなでしてやった。ブラッシングもさっさっさーと。
そうか、気持ち良いか。
よーし、良し。え、お前たちも?
「わかった、わかった。ブラッシングしてやるぞ」
俺はビリーとジーンにもブラシをかけてやった。
「やっぱりアニマル・セラピーは安心確実だな」
心がすっきり落ち着くのよね。ふぅー。
「うん。落ち着いた。精神がノーマルになったところで、体もほぐそうか」
俺は俺ダンを開いて、別府の湯に瞬間移動した。
もう慣れたからね。ダンジョンの中身はイメージ次第でどんな環境でも再現できるのだ。
瞬間移動はゲップの湯にも行えるのだが、あちらは恐竜たちの世界だ。
よそ者の俺達が邪魔することもなかろう。
それにつけても露天風呂は良い。硫黄の香り、湯のぬめり、空気の冷たさ、開けた景色。
「はぁあ~」
思わず声を上げれば、それさえも籠らずに広がって行く。
世界はすべて俺の物、という全能感が漂うのよね。露天風呂って。
この場合は本当に「世界はすべて俺の物」なんだけどね。俺のダンジョンだから。
すっかり体と心をやわらかく解きほぐした俺は、つつましく1合徳利の晩酌をやって、その日はベッドに入った。
◆◆◆
明けて翌朝、俺は爽やかに目を覚ました。
さすが元老人。朝の目覚めは良いのよね。夜中にトイレに起きることもないから、眠りが深いしね。
トーストに目玉焼き、オレンジジュースの朝食を終えた俺は、フラットな気持ちでお仕事に出掛ける。
「それではアリスさん。本日もダンジョン討伐に向かいたいと思います」
「お勤めご苦労にゃ。今日も1日安全運転で行くニャ」
良きお言葉ですな、アリスさん。安全に勝るものなし。
慢心を排してまいりましょう。
昨日はピラミッド階である第3層を討伐しましたからね。本日は第4層から遠征再開であります。
階段を下りた先に広がっていたのは、オーソドックスな地下牢型のダンジョンだった。
「おー、じっとりと暗く湿ってますな。ストーン5、照明投光お願いしますよ。雰囲気だけでも明るくしてね」
ピラミッドもお墓仕立てだったので暗かったけどね。遺跡より地下牢の方が何だか陰湿な気がしてきちゃうのよ。お墓は一応死んだ人を敬う心で作られているからね。
「地下牢タイプってことはあれですかね。アンデッドフロアってことになりますかしら」
「どうぶつの森とは思えないニャ。アンデッドは対策済みニャから、アスベストよりは安全ニャ」
アスベストはねえ。肺に刺さって何十年後に肺がんをひき起こしたりするからなあ。
厄介な代物です。
心を落ち着けようと、俺は俺ダンに籠ってコーヒーを静かに飲んだ。
「戻りましたよー。偵察結果はどうだった?」
「至ってノーマルなアンデッド・フロアニャ。ゴーストにスケルトン、さまよえる鎧にゾンビ、グール、ミイラ男ニャ」
「またミイラかよ? ネタ被りじゃないの?」
わけのわからない宇宙人とかが出て来るよりは、対処法がわかっているだけやり易いか?
「えーと、非実体系のゴーストはプラズマ放電だな。それ以外は火炎放射か液体窒素弾で処理しよう」
「さまよえる鎧には火も氷も効きにくいニャ。こいつもプラズマ放電をぶちかましてやるニャ」
「鎧に電気が効くかね?」
「電気溶接で身動きできなくしてやるニャ!」
なるほどね。ダメージはなくとも動きを封じたら、こっちの勝ちか。ストーン5に踏みつぶされて終わりですな。
そもそも鎧に籠った霊魂的なものって何なのよという、根源的な疑問があるわね。精神活動であるなら電気信号と無縁であるとは思われず。ならば高圧放電一発で吹っ飛ぶかもね。
まあ、物理一辺倒の相手は恐くないので、ストーン5のパワーを見せつけてやってもいいし。
「頼んだぜ、ストーン5!」
「ま゛っ!」
ゴーレム・マスターになってから、こいつらとの一体感が増したねぇー。




