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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第72話 お前じゃないだろう!

「はい。第2階層はオープン・フィールド型だね。斥候チーム、偵察よろしく」


 さすがにオープン・フィールドを一飲みにするのは無理なので、経路を考えないとね。俺ダンの力づくで攻略しようとしているわけじゃないのよ。


 それに俺達は戦闘狂ではないので、フロア・ボスさえ倒せるなら他のモンスターにはあまり興味ない。

 団十郎(踊る宝石)みたいに希少価値のある子なら、スカウトすることも考えるけどね。


 特殊固体はそう見つかるものじゃないでしょう。


「偵察情報がまとまったニャ。徘徊モンスターは、キック・バード、ダチョウっ子倶楽部、ミスター・フラミンゴ、ニヒルなアヒル、ガチョウ課長ニャ。ボス部屋は湖中央の小島という設定ニャ」

「ええと、モンスターのネーミングにイロモノ臭が漂ってますが」

「そこをツッコむと面倒くさそうニャ」


 お笑い賞レースの2回戦くらいのラインナップだな。


 後、アヒルとかガチョウはどう考えても弱いだろう?

 これは無視してボス部屋というか、ボス島(・・・)直行が良さそうだ。


 俺達はどこダンの移動機能でボス島に上陸した。


「徘徊モンスターのラインナップを見ると、このフロアは鳥型モンスターのエリアかな?」


 皇帝ペンギンは経験済みだからな。それ以外のボスっぽい鳥というと……。


「フロアボスが湧いたニャ。アイアム・(わし)というユニーク・モンスターニャ」

「はい。確定ですね。ふざけちゃってます。もう、相手にせずにぶっ潰しますからね」

「相手が鳥なら自分に任せろと、トビーが言ってるニャ」


 なるほど。鳥には鳥同士でしかわからないプライドのぶつかり合いがあるのかね。


「自分が勝ち残って、鳥界初の『鳥インフルエンサー』になると言っているニャ」

「やめなさい。紛らわしいし、炎上必至なので」


 真面目な話、鷲とハヤブサって明確な違いはないのよね。大きさの差?


 トビーとしては負けられない戦いってことか。


「特に部屋らしきものはないニャ。この島全体がボス部屋と考えられるニャ」

「それならもうボスは湧いていると考えるべきだね」


「GyaaaAAAs!」


 怪鳥音を響かせて、上空から降りて来る黒い影!


「よいしょっと。一遍俺ダンに避難しましょうかね」


 目標を見失ったアイアム・鷲は、地面を舐めるような低空飛行の後、上空目指して上昇して行く。


「KwaaaAAA!」


 水平飛行から上昇しようという姿勢変更の瞬間、上空から一気にトビーが急襲を仕掛けた。

 ご存じ超音波砲炸裂。


「ボ、ボン、ボンっ!」


 急上昇のために大きく翼を羽ばたいたところだった。回避行動を取ることもできず、アイアム・鷲は翼の両方を超音波砲に撃ち抜かれて地面に叩き落とされた。

 翼長2メートルを超える巨大な猛禽類だった。


「Gyaaaa!」


 飛ぶ力を奪われ、アイアム・鷲は地面で哀れにのたうった。


「哀れなり」


 シューッと首刈鎌一閃。アリスがフロア・ボスに止めを刺した。


「トビー君の横綱相撲だったね。相手に相撲を取らせなかったよ」

「最初から相撲は取ってないニャ。ジジイは何でも相撲か野球に例えたがるので面倒ニャ」

 

 すみませんねえ。広い心で受け入れて頂戴。


 おっと? アイテムを落としたね。何だろ、それ?

 

「高級色紙セット一式ニャ」

「何だそりゃ?」

「素材が『和紙(わし)』でできてるニャ」


 下らねぇ―!


「先に行くぞ、先に!」


 階段を見つけて、俺達は先を急いだ。


 ◆◆◆


 第3階層は何とピラミッド型の迷路だった。


 階段を下りて行くと巨大な空間が地下に広がっていた。そこにピラミッドがそびえ立っていたのだ。

 真正面の最下部にどーんと内部への入り口が開いている。


「ピラミッドってこんな『どうぞお入り下さい』みたいな構造じゃないと思うけど」

「所詮増田の同類ニャ。考えることが浅はかニャ」

「お墓だけに浅はかだってか?」


 ダンジョンなんて物に侵入している時点で「墓泥棒」みたいな物かもしれないけどね。


「ピラミッドをわざわざ置いたってことは、ミイラとか毒蛇とか出てきそうだね」

「ミイラは単なる死体でモンスターじゃニャイけどニャ」


 確かにそうだな。王族の死体とかのはずなんだから、包帯撒いたゾンビ扱いするのは失礼だな。

 あれは土葬文化になじんだ欧米人の根源的な恐怖心なんだろうな。


 それに対して日本人は「魂が化けて出てきたら怖い」と考える。

 魂がそのままだったら「良い人」のままなわけで、怖くないのだ。「化けて出る」から怖い。


 得体の知れない「何か」に変わってしまうから恐ろしいのだ。


 はてさて何が出て来るのやら。ハニービー軍団偵察よろしく。

 俺は1Kマンションでコーヒーでも飲んでるから。


 ブルマン1杯を楽しんで戻ってみると、偵察は終了していた。素早いね。

 

「徘徊モンスターは、ミイラニャ。以上」

「うん? 他には?」

「全部ミイラニャ」


 うわー。ミイラ単品でやってますって? 専門店方式のダンジョンかあ。

 一品にプライドを以て営業するというスタイルのお店は嫌いじゃないけどね。えぇー、ミイラだけかぁ。


「速攻で攻略しよう!」


 あんな物は火に弱いに決まっとる。ストーン5、火炎放射で焼き払いなさい。

 ビラビラした包帯なんかよく燃えるでしょ?


 ところが何と、包帯が燃えない!


「アリスさん、何ですか、あの包帯は?」

「成分分析の結果、アスベストと判明したニャ」

「使っちゃダメなやつじゃないか!」


 ミイラには肺がないので繊維を吸い込む心配はないだろうけどさ。もう死んでるし。

 こっちには地味に危険なんだな。防塵マスクをしっかり着けましょう。


 体や衣服に付着した繊維も危険なのよね。ああ、うっとうしい。


「悪いけどストーン5だけで露払いしてくれ。火炎放射が効かないなら液体窒素で凍らせちゃって」


 俺は俺ダンに引き籠って、戦況を見守ることにした。


 元々ミイラなんて動きは鈍いからね。ストーン5にとっては良い的ですよ。

「シュドーン!」、「シャリシャリシャリ」、「パリーン!」てね。


 凍らせちまえば繊維は飛び散らない。何てクリーンな倒し方でしょう。


 ミイラたちは足止めの役にも立たず、俺達は王の玄室であるボス部屋に到達した。


「さて、箱の中身は何じゃろな? 俺ダンでこっそり拝見してみましょう」


 マジックミラー機能でのぞいてみると、こいつは……。


「全身金色のミイラですな」

「ほぼ骸骨ニャ」

「頭部は馬の形ですな」

「間違いないニャ」


「ゴールデン黄金バトウじゃねえか!」


 何だかなあ。これじゃない感が半端ないんだけど。

 仕方がない、これも仕事と割り切って討伐しますか。

 

 一応素材は黄金ですからね。ドロップアイテムは金になるわけで。

 前回は下半身が黄金のバットになったもんな。微妙に下ネタっぽい表現になっちゃうのが嫌だけど。


 待てよ? 下半身がバット2本に化けたんでしょ。

 残す部分が多ければ、ドロップ・アイテムも多くなるんじゃね?


「よーし。今回は首ちょんパ方式で行ってみましょー!」


 それでは首ちょんパ専門家のアリスさん、執刀をお願いします。


「しょーがニャイニャア」


「天知る、地知る、猫が知る……」


 はい。途中省略でアリス・カッター!


「しゅぴーん!」


 切れ味サイコー!


 さて、首を飛ばした骸骨ボディーは何に変わってくれるのかな? ……かな?

 あれ? 金色の光になって消えていく?


 えぇ―、残るのは頭の方なの?


 キラキラ・エフェクトと共に金色の頭部は姿を変えた。光の中から現れたのは……。


「ゴールデン馬頭琴(ばとうきん)!」

「略して馬頭金ニャ」


 説明しよう。

 馬頭琴とはギターで言うヘッドの部分が馬の頭を象った、モンゴル伝統の民族楽器である。

 

 何か、純金製の二弦琴になっちゃいましたね。

 風情があるやら、ないやら。


 ……メラニーさんに引き取ってもーらおっと。

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