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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第69話 掟破りのテロリスト乱入!

「えぇーっ! ボスぅ、さっきと全然違う場所じゃないスか?」

「そうだぞ? ここで風呂に入り直して、夜は宴会をやるぞ!」

「こんなに建物が一杯あるのに、人っ子一人いないっスね……」

「まあ、あれだ。ここはそういう場所だから、気にするな」

 

 さすがは日本随一の温泉湧出量を誇る別府温泉。ホテルのお風呂も立派だわ。

 恐竜も出ないしね。


「ボス、お湯が濁ってますけど毒じゃないんスか?」

「違うぞ。これはこういう成分だ。体に良いらしいぞ?」

 

 最初はおどおどしていたブラウニーたちも、湯で暖まったら気持ちがほぐれたようだ。

 最後はみんなのんびりしていた。

 

 ウチの拠点では日本基準の設備を揃えていたので、カランやボディソープの使い方はみんなわかっていた。

 でも「本物」は一味違うだろう?


「しかし、あれだな。みんな傷痕だらけだな」

「へい。荒っぽい生き方をして来たもんで」

「そうか」

「そう言えば、ボスんところに来てから1つも傷痕が増えてませんね。オレらにしちゃ珍しいこって」

「そうか」


 好き好んで怪我をする奴なんているわけがない。

 こいつらの怪我が減っただけでも、俺がこの世界に来た意味があったのかなとふと思った。


「風呂から出たらフルーツ牛乳を飲むぞ!」

「何スか、それ?」

「神の飲み物だ。当然飲み方には厳しいしきたりがあるぞ。こうやって腰に手を当ててだなあ……」


 俺達はわいわい言い合いながら大浴場を出た。


 ◆◆◆


「ボス、卑怯っス!」

「うるさい! 隙を見せたら、即座に攻め込む。これ戦いの鉄則なり!」


 俺は容赦なくブラウニーに対してスマッシュを決める。伝統文化温泉卓球である。


「オレ、今日初めてやってるのに……」

「卓球の前では人はみな平等なのです。経験のあるなしとか、関係ないのです」

「大人気ない……」

「ふはははは。勝った者こそが正義! 弱者にかける言葉などない!」


 中学時代にちょっとだけピンポンを齧っただけだが、生まれて初めてラケットを持つ人間に負けるはずがない。

 俺はブラウニーを思う存分蹂躙した。


「よーし、勝利―! 後は弱い者同士で傷をなめ合ってくれたまえ。俺は食事の準備をして来るぞ」

「へい、ボス。さっきの食堂で待ってりゃいいんスね?」

「おう、ビールを出しといてやるから、勝手に飲んでろ」

「あざースっ!」


 俺1人で7人分の料理を作るとなると、さぞや大変かと思いきや、さにあらず。

 イメージ力の勝利で「配膳待ちの料理」ができ上がって俺を待っていた。


 いちいち1人前に分けるのは面倒なので、大皿にドバっと盛って食堂へ運ぶ。ここでも、俺ダンを一度出て入り直せば一瞬で運搬完了。

 酒各種、食器類もどんどん運んで、10分で支度は完了した。


 俺の分には刺身の盛り合わせが付いてるぜ。海鮮は異世界に来て以来だな。


 BB団には豊後牛ステーキだ。1パウンドステーキを1人2枚焼いてやったぜ。

 俺は200グラムで十分だ。


「ボスゥ、何すかこの肉ー? 歯が要らないっス!」

「わははは。豊後牛という」

「ブンゴギューっスか? 旨いっスね、ブンゴギュー」

「そうだろう? 好きなだけ食え。足りなきゃ、また焼くぞ!」


 どんちゃん、どんちゃんやっている最中に、俺は猛烈な違和感を感じた。


「ぬっ? 何だこの感じは?」

「トーメー! 敵襲ニャ!」


「ぬう。増田、全員収容! 一旦離脱しろ!」


 食堂の空間に黒い円陣が生まれ、猛烈なスピードで俺に襲い掛かって来た。


「トーメー!」


 アリスさんが触手を伸ばして俺の胴体をひっ掴み、強引に引き寄せた。


 が、一瞬間に合わず、俺の左腕は肩から先を円陣にスパッと切り取られた。


「糞っ!」


 ナノマシンが痛覚をカットしてくれたので痛くはないが、腕一本失って俺は逆上した。

 踏み止まろうとしたところを、胴体を掴んだままのアリスさんにどこダンへと引っ張り込まれた。


「増田、拠点に帰るニャ!」


 一瞬後、俺達は拠点の庭に吐き出されていた。


「第1種警戒警報ニャ! 敵襲! 敵襲!」


 アリスのアラームで、留守番チームが防御態勢を瞬時に取った。

 俺の左肩にはアリスのナノマシンがびっしりと取り付いて腕の再生を進めている。


「アリス、腕の再生はスラ1に任せろ! 自分は敵襲に備えてくれ」

「スラ1、トーメーを頼むニャ」


 どう考えてもさっきの敵は、ダンマス・シリーズのどれかだ。どういう方法かわからないが、俺の居場所を探知して攻め込んできたと思われる。

 敵もどこダン式移動法を使えるようになったようだ。


「増田、あいつら移動できるのか?」

「さっき自分らしい動きを感じました。どうやってか知りませんが、ワタクシの移動法をマスターしたようです」


 もともと同じ遺伝子だからね。ダンジョンに遺伝子があればだけど。

 同族のテレパシーみたいなものをたどって、俺の居場所を探知したのかな?


 だとすると、ここにも増田の痕跡をたどって追い掛けてくるかもしれない。


「同族ダンジョン間の忌避感覚ってどうなったのさ?」

「凄く嫌な感じがしましたよ。あんなに接近したことありませんからね」


 なぜだか知らんが、俺は猛烈に腹が立っていた。

 腕を斬られたせいもあるが、そんなものではない。存在のベースを汚されたようなこの気持ちは何だろう。


「増田、これって掟破りじゃないのか?」

「はい、ボス! ダンジョンが外部に攻撃を仕掛けるなんて、もはやダンジョンじゃありません」


 そういうことか。増田を通じて俺にも流れ込んだ「ダンジョン魂」が、さっきの攻撃を許せないと感じているのだ。


「あの野郎! ぶった斬ってやる!」


 俺の「ダンジョン魂」があいつを斬ると吠えた。根拠はないが、俺には「斬れる」という確信があった。


 ギュイーン! ギュイーン!


 耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。


「また来たニャ!」

「みんな、俺から離れろ! 奴は俺を狙って来る!」

「トーメー!」

「大丈夫だ。俺もダンマスだ。来るとわかってるダンジョンに斬られはしない!」

 

 どこから来る? 右か、左か? 上からか? それとも……。


「下だ!」


 俺の足元に前触れなく黒い円陣が現れた。俺を飲み込んでぶった斬ろうとしている。


「舐めるな!」


 俺は円陣に重ねて俺ダンを出現させ、その中に飛び込んだ。


 出現先は、敵ダンジョンの内部(・・・・・・・・・)である。


「へへっ。内部に入られたら攻撃できねえだろう? こっちの番だ!」


 俺は敵ダンジョン内を全力で疾走した。ダンジョンを掴まえた(・・・・)以上、ダンマスをテイムすることもできたのだが、それでは腹の虫がおさまらなかった。


 俺はダンジョン内部を駆け抜けながら、一瞬ごとに俺ダンの入り口を開閉し、敵ダンジョンを輪切りにしてやった。異空間にあろうとダンジョン内部は確定した時空だ。物質である以上、俺ダンに斬れないものはない。


 俺はダンジョン最深部まで一気に走ると、どん詰まりの壁に俺ダンを開いて飛び込んだ。

 その勢いのまま、元の拠点に出現する。


「トーメー! 無事かニャ!」

「まだだ!」


 同族シンクロで相手の位置はわかっている。俺は敵が立ち直る前に俺ダンで、敵ダンジョンを丸ごと飲み込んだ。

 そして、飲み込んだダンジョンを一瞬後に吐き捨てる。


 捨てた先は、敵ダンジョンの中(・・・・・・・・)だ。


 相手は自分の中にいる中に自分がいる中に自分がいる……。


 無限ループに飲み込まれ、もはや現実界には戻れない。


「見たか、コノヤロー! 無間ダンジョン地獄だ!」


 俺は勝利の雄叫びを上げると、地面にぶっ倒れた。

 

 腕を失ったダメージから回復しきらないうちに、ダンマス・パワーを使い切ってしまった。生命力って奴が枯渇寸前である。


「スラ1、後は頼む。回復してくれ……」


 俺は意識を手放した。

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