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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第68話 珍客乱入! 旅行先を変更させていただきます

 結局思いついたのは近所の銭湯だった。熱すぎる湯を薄める水道の出口、ドバドバ水が出ている下に俺ダンの出入り口を開いた。

 水は異空間を超えて、秘湯ゲップの湯に降り注ぐ。


 42度の適温になったところで放水終了。


 俺は早速コンバットスーツを脱ぎ捨てて露天風呂に飛び込んだ。


「うおーっ! 真っ昼間、遮るもののない完全オープン露天風呂だーっ!」


 温泉大国日本でも、さすがにそんなところは滅多にない。水着着用とかルールがうるさいし。


「はあー、疲れが取れるねえ。湯に入ると目線の高さが湖と一緒だから水面がどこまでも広がっている感じだわ。たまらんね、この開放感」


 俺がいきなり裸になったもんだから、BB団がおろおろしてるね。こっちの世界には銭湯の文化がないのかな。

 

「おーい。お前らも裸になってお湯に入れよ。気持ちいいぞー」


 俺が声をかけてやると、お互いに顔を見合わせていたBB団がおずおずと服を脱いでお湯に入って来た。


「どうだ? 気持ち良いだろう? 仕事を忘れて、ボケーッとしてみろ」

「うーん! 何だか体を伸ばしたくなりますね。ボスんところのお風呂も良いけど、これはこれで気持ちいいもんで」


 そうだろう? 日本の伝統文化だからな。こうやってお湯に身を任せてボケーッとするのが侘びさびって言うんだぞ?


「おや、波が出て来たか? 湖の水面が何だか盛り上がって……」


 目の前の湖面がずもーっと盛り上がったと思うと、湖面を割って巨大な生き物が頭をもたげた。


「何だこりゃ? ええっ? ネッシー?」

『ネッシーはネス湖のインチキ恐竜ニャ。こいつはエラスモサウルスニャー!』

「エラスモサウルスって何だよー? 何でこんなところにいるのよ?」

『とにかく逃げるニャー!』


「増田―! 俺達を収容してくれー!」


 頭の上から口を開けたエラスモサウルスが襲ってくる瞬間に、オレたちの足元にどこダンへの入り口が開いた。

 俺達は温泉のお湯と一緒に、トイレの汚物よろしくズボーっと吸い込まれていった。


「あっつぶねぇー! 何だあれ? おっどろいたなぁ」


 俺は素っ裸でどこダンの床に尻もちをついた。


「ボスぅ~。怖かったっス。さっきのはドラゴンっスか?」

「いや、あれは大昔の生き物だ。言ってみればトカゲのデカい奴だ」


 しかし、何でまた恐竜が生き残っているのさ?


『2千メートルの高地だからニャ。まさにロスト・ワールドって言うわけニャ』

『あそこだけ進化から取り残されたってこと?』


「ははははっ。ぶったまげたけど、面白いもんを見たなー。生きてる恐竜を見られるとは思わなかった」

「ボスぅ~」

「ははは。安心しろ。もう安全だ。どれ、ちょっと待ってろ。いま服を取ってきてやる」


 俺はどこダンの内部に俺ダンを開いて飛び込んだ。

 ゲップ高地は既にポジション記録済みだ。一瞬で移動できる。


 空中から様子をうかがって、危険がないことを確かめてから俺は地上に出た。


 落ち着いて考えてみたら、俺ダンがある以上本当の危険はないのだった。逃げることもできるし、俺ダンで攻撃することもできる。やらないけどね。絶滅危惧種を虐めるようなことはしたくないもの。


 俺は脱ぎっぱなしの服をポイポイと俺ダンに放り込み、続いてひょいと飛び込んだ。


 またまた一瞬でどこダン内部に移動して、ブラウニーたちに服を投げてやる。


「粗末な物はそれで隠してちょうだい。男同士じゃ絵面が見苦しすぎる」


 もぞもぞとブラウニーたちが服を着ている間に、俺は脳内通信でアリスさんと相談をした。


『ゲップ温泉は秘境すぎたね。まさか恐竜が出るなんて思わなかったよ』

『誰も寄り付かないわけニャ。どうするニャ? 恐竜を退治して湯治を続けるニャ?』

『あっちが先住者なんだから、それは可哀そうでしょ? 招かれざる客である俺達が失礼しましょ』


 何もここだけがリゾートじゃないし、どこダンを使えばほぼ瞬間移動ができるしね。


『南海の無人島にでも行ければ最高なんだけど。さすがにマップが無いよね』

『この世界に詳細な世界地図はないからニャ』

『待てよ。俺ダンの内部ってどこまで広がってるのかな? 俺のイメージ次第だとしたら、入る時に南の島だと思えばそこにいけるのかな?』

『試してみる価値はあるニャ。どうせタダだし』


 俺は試しに、ワイキキビーチをイメージして境界を開いてみた。


『行けるかどうか、ちょっと見て来るわ』


 ひょいと黒い影に足を踏み入れると、向こう側はワイキキビーチだった。


(おー、行けるもんだねえ。気候まで完全再現されてるわ)


 残念ながら生きてる間に来たことは無かったが、南国特有の空気に包まれていたのはあの(・・)ワイキキだった。人っ子一人いないけれど。


(何だか浦島太郎にでもなった気分だね)


 何にせよ、ここは俺のダンジョンの中だ。何かに襲われることはない。ここでのんびり日光浴でもしようかね。


「ほ。みんな着替えは終わったな。それじゃあ安全な(・・・)リゾート地に移動しようか?」

「今度は大丈夫っスか?」

「大丈夫だよ。ちゃんと下見して来たから。俺の縄張り(・・・・・)だから安全間違いなしだ」


 俺は再びワイキキビーチに境界を開いて、みんなを降ろした。


「うわあー、何スかここ? 温かいし、明るいし、きれいじゃないスか?」

「だろう? そういう場所なんだよ。怖い思いをして疲れたろうから、砂浜に行ってのんびりしようぜ」


 ワイキキビーチを7人で貸し切りだ。こんな贅沢はマイケルでも経験してないだろう。

 気分直しにビーチハウスから冷たいドリンクを持ち出して、俺達はビーチパラソルの下に寝そべった。


「ふわぁ~、風が気持ちイイっスねぇ~」

「日焼けしたかったら裸になっても良いぞ。その代わりこれを塗っとかないと、真っ赤になるからな?」


 おれはビーチハウスで調達した日焼け止めクリームを全員に配布した。


 BJにはハワイの陽気は暖かすぎるようで、ヤシの木陰で寝そべっている。脱水症状になったらかわいそうだから、バケツに水を入れて置いといてやった。


『ゲップ温泉は失敗したなぁ。やっぱり旅行に行くときは十分下調べをしないとダメだね』

『確かにニャ。ダンジョンで戦い馴れて異世界を舐めていたニャ。ボクも反省するニャ』


 問題は現代日本と違って、異世界では情報が集まらないってことなんだよね。ネットで検索なんかできないから。

 メラ姐さんにお薦めでも教えてもらうか?


『今回は割り切って俺ダン内部でお茶を濁すか。1度出て入り直せば、好きな所に行けるわけだし』

『とんでもなく便利な能力を獲得したもんニャ』


 ビーチで夕方までのんびりしたら、夜は日本の温泉で湯治をやり直そうかね。やり始めたことを放り出すのは精神衛生上良くない気がする。


 ゲップ温泉のかたきを別府温泉でってことにするか。別府の名物って何だっけ?


『アリスさん、別府の名産て何だっけ?』

『豊後牛ととり天が有名ニャ』

『ステーキか。いいね。こっちの人間には「海鮮」はハードルが高そうだからね。俺は食うけど』


 A5ランク和牛ステーキの旨さで、あいつらの度肝を抜いてやりましょうか。焼くのは俺だけどね。

 誰が焼いたって良い肉は旨いから大丈夫。楽しみに待ってろよー。


 人間も干からびないように、定期的に水分を補給しつつ夕方まで俺達はビーチに滞在した。


「さて社員諸君。日が傾いたところで魔所を変えようと思う。ちょっと涼しくなるので、びっくりするなよ」


 俺は全員を日本の別府温泉へと移動させた。正確には移動ではなくて、「ダンジョンとして再構成」しているだけなんだろうけどね。実感は移動としか思えない。


 俺達はアリスさんお薦めの一流ホテルにやって来た。俺的には純和風の旅館てのも捨てがたいのだが、ブラウニーたちには座敷は居心地が悪いだろうと思ってね。


 まずは潮風でべたついた肌をさっぱりと洗い流しましょう。正真正銘別府の湯へゴー!

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