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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第59話 俺のダンジョン。開いててよかったぁ~

 上を見ても周りを見ても、動きがないということを除いては特に変わったところはない。

 手すりから手を突き出しても見えない壁に当たることは無かった。


「ふーん。人気が無いほかはまあまあ普通かなあ」

「目に見える限り街が再現されているだけで十分不思議ニャが、今は置いておくニャ」


 部屋に戻った俺は、今度は玄関を開けてみた。


 これまた普通に外廊下が続いている。もちろん隣人が歩いたりはしていない。

 サンダルを引っ掛けて外に出てみたが、至極普通だ。落とし穴があるわけでもなし、モンスターが現れるわけでもない。


 外に出たついでにメーターボックスの中を覗いてみる。ちゃんとしてる。電気のメーターもゆっくり回っていた。


「作り込みがしっかりしてるね。我ながらあっぱれ」

「しかし、生活臭が漂うダンジョンニャ」


 確かにこれじゃダンジョン感がまったくないね。モンスターが出てくるわけないし。


「そういえばこの中でもダン・増田を呼べるのかな?」

「試してみるニャ」

「おーい! 増田―!」


「お呼びでしょうか、ボス? おっと、これはまた変わった場所ですな」

「おお、ここでも圏外にはならないのね。何だ、だったら最初の時も増田の『どこダン』経由で戻れば良かったんだね」

「いえ、ワタクシ物理的にアリス先輩の腹の中なのでアリスさんがいない世界には出て来られません」


 そうなの? それもまた善し悪しだねえ。かといってラピスラズリを俺が呑み込むわけにもいかないしなあ。


「物理住所を廃止すればいいだけなんですけどね。石に憑りつくのを止めれば、ボスの体に貼りつけます」

「何だよ? 石は関係なかったんじゃん!」

「その辺はその場の『ノリ』という奴で」


 いけませんよ。「報・連・相」は大事にしないと。「報告」、「連絡」、「相談」ね。


「お前の意見はどう? やっぱりこれはダンジョン空間で合ってる?」

「はい、ボス。この縄張り意識をくすぐる違和感と、実家のこたつに入ったしっくり感は、ボスのダンジョンで間違いありません」

 

 落ち着くのか落ち着かないのか、はっきりしないのね。そんなところも久しぶりに帰った実家みたいなもんか?


「ふーん。するってぇと、フィールド型のダンジョンという分類で良いのかな? モンスターがいないんだから、階層なんて無いよね?」

「おそらくは。まだ未発達で、これから成長していく可能性はあると思います」


 なるほど。これがスキルならまだ生えたばかりだしね。使っている内に成長していくわけか。


「今のところ出入口は直径3メートルだから、移動手段に使うとすると時速2600キロニャ」

「わー、増田のダンジョンより大分遅いねって、マッハ2じゃないか!」


 出入口はご家族用くらいの狭さだけど、中に入ればそこそこ広そうだよね。増田に頼らなくても移動手段としては十分なんじゃない?


「ボス、言わせていただければボスのダンジョン、略してボス・ダンはまだまだ軽自動車レベルです。ワタクシのタンカークラスとは比べるまでもございません」

「ほお、『大きさ』でマウントを取ろうという気かい? 内容はどうなのよ? こっちは電気・ガス・水道完備ですよ?」


 あれ? そう言えば他の公共サービスってどうなってるの? 電話とかテレビ放送とかさ。

 チェックしてみましょうかね。


「……。電話はどこにかけても話し中か。圏外じゃないってところに芸の細かさを感じるけど。テレビは見られるけど、見たことのある内容だね」

「トーメーの記憶から再生されているニャ」


 あのドラマの見落とした最終回とかは見られないのね。今更見ても仕方ないけどさ。


「冷蔵庫の中に食料が入ってるね。あ、発泡酒みっけ」


 アルコール度数9%ね。本気で酔っぱらう気のチョイスでしたね、当時の自分。


「こんなのどこから持って来てるのかねえ」

「ダン・マス権限で作り出せる範囲でございます」

「だとしたら、ダン・マスって随分な権力者だねえ」


 ビジネスホテルみたいに出入りするたびに補充されてるとしたら、食料に困ることは無いわけだ。


「無から有は生み出せないニャ。トーメーが作り出したとすると、トーメーの生命力を削っているんだニャ」

「えー、そうなの? じゃあ、俺の生命を削って作ったお酒をオレは飲んでるわけ?」


 あ、モニター調査の一環として、一本オープンさせていただきました。レモン味です。


「まあ、いいか。別に損しているわけじゃなし」

「酒で人生を誤魔化すタイプニャ」


 そういえばパソコンは? アリスさんの故郷でしょ?


「もうハック済みニャ。ハードは正真正銘元の世界に会った物と同じニャ。ただ、中にはアリスにゃんの構成要素は存在しないニャ」

「あら、双子のアリスにはならなかったんだ?」

「時間旅行のパラドクス的な禁忌が働いて、同時存在が不可能なんニャろう」


 ふうん。不思議なもんだねぇ。ダンジョンが作れるという時点で十分不思議なので、中に何があっても今更だけどね。

 パソコンの中身なんて知らないけど、再現できちゃうんだね。「アカシック・レコード」とやらにアクセスしたのかしら? 結果として便利だから良いんだけどね。


「ネットにも当然つながらないニャ。数々の性癖満載コンテンツはハードディスクに残っているニャ」

「どうしよう。別に人に見られるわけじゃないから消さずにおこうかな。また見るかもしれないし」

「見る気あんのかい!」


 この世界では入手不可能ですからねえ。希少価値度は上がってますもの。


「アリスさんがいるからパソコンを使うことは無いと思うけど、『男の隠れ家』的にこの部屋を使えるかもね」

「息抜き程度なら否定はしないニャ。すべてとは言わニャイが相当な量のコンテンツを、異世界転移時にぶっこ抜いて来てあるしニャ」


 物質は大変だけど情報は比較的簡単に持ち込めたのね。準備期間100年掛けてるから、相当な量のデータを持って来ているか? 映画とか、音楽とかも見放題プラン?


「それはイイね。じゃあこのPCからアリスさんのコンテンツを読み出せるようにしておいてよ。検索できるようにしてくれれば、前世のネットとおんなじじゃん」

「簡単なことニャが、ここで引き籠られても困るニャ」

「それはないよ。人外だけど仲間ができたからね。1人で引き籠ってはいられないさ」


 文明の利器がそのまま使えるって、何だかお得な感じがする。


 あれ、パソコンだけじゃなくて他の機械も再現されてるのかなあ。自動車とかバイクとか?

 いや、衣料品店とかホームセンターとか……。いやいや、スーパーとかデパートとか?


「前世の環境を全部再現しているとしたら、俺の生命力って削られまくりじゃない?」

「自動回復と若返り機能のお陰で本来即死するレベルの負担に耐えているニャ」


 あぶねえな、おい。一般人がダン・マス権限使ったら一発でミイラ化確定じゃないか!

 

「普通はこんなダンジョン作らないニャ」

「そこは仕方がないよ。咄嗟に逃げ込める避難場所としてオープンしたんだから」

「咄嗟の仕事にしては、細部に異常なこだわりがあるニャ。企画物動画とか」


 逆にこだわりが無いとも言えますよ? とにかく「生前の状態」を忠実に再現しただけというね。

 生前にこだわりを持ってある種の動画を集めていたことは否定しませんけど。俺は俺を肯定する!


「冷静に考えれば、意外と機械の価値は低いニャ。ほとんどナノマシンと『どこダン』で対応できるニャ。むしろ消耗品の価値が高いと思うニャ」

「なるほど。交通手段は無用の長物か? 食料品とか衣料品は再現しようと思えばできるけど、手間がしこたまかかるところをショートカットできるということだな」

「そう言うことニャ。日本の異常に使い易い文房具とかがいつでも手に入るのは画期的ニャ」


 そうだよね。ノート1冊にしたって異世界じゃ貴重品だもんなあ。ちょっと百均によって帰ろうか。

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