第54話 キングライオンキング討ち取ったり!
最初の標的にサバンナ麒麟を選んだのには理由がある。
背が高いので狙い易かったのだ。
『適当すぎるニャ』
『いや、大事な理由でしょう? できれば当てたいもん』
的のチョイスが良かったのか、弾は狙い通りサバンナ麒麟の首筋を捉え、周囲を凍り付かせた。
当のキリンは真っ白に凍り付き、凍結した地面に倒れてバッキリ首が折れた。
「うわー、あの身長だと倒れただけで粉砕されるのかあ。なかなか凶悪だなあ」
俺もこの世界に来て大分免疫ができた。ダンジョン・モンスターという特殊な相手に遠慮する必要はないと、割り切れるようになっていた。
まとまっていては危ないとモンスターたちは感じたようだが、時すでに遅し。岩山から飛び出したストーン5が液体窒素弾の弾幕を張る。
「くわー。1発でもあの威力のところ、5人がかりで弾幕を張ったら逃げようがないんじゃない?」
普通ならそうだろう。
キングライオンキングはキングの中のキングであった。
仲間たちの前に出てすっくと立つと、その口から特大ブレスを吐き出した。
そのすさまじい火勢に、さしもの液体窒素弾も空中で爆破されてしまった。
なまじ信管付きなせいで誘爆してしまったな。
これなら通常ライフル弾の方が通り易いと判断した俺は、セレクターを切り替えて通常弾を装填した。
KLKは火炎防壁の効果を見届けると、岩陰に隠れた。ストーン5が液体窒素弾を撃てばまたブレスを吐きに顔を出すだろうが、俺の腕では動いている的は当てにくい。
「デカい的なら何とかなるか?」
今度もサバンナ麒麟をターゲットに選んで、シルバーウルフにもそのことを告げる。
どこを狙っているか観測手が知らないと、意味が無いからね。
静かにスコープを覗き込むと、サバンナ麒麟と目が合った。
「ん?」
「ンモーッ!」
牛みたいな鳴き声を上げた方思うと、角をスポーンと飛ばして来た。
「えーっ! そんな飛び道具があるのかよ?」
俺は必死に這いつくばって、岩山と一体化しようとあがいた。そのとき、左右のシルバーウルフが動いた。
俺の前方に立つと、うなりを上げて飛んで来る飛翔体にそれぞれ噛みついて受け止めた。
「おー! やるなシルバーウルフ2。サンキュー、助かったよ」
「バウ」
ウルフたちは皆まで言うなと、大人の素振りで俺の礼を聞き流した。男前だな、おい。
「にゃろう! 勝負したるぞ、オラ!」
俺は素早くアサルト銃を構えると、サバンナ麒麟めがけて通常ライフル弾を撃ち込んだ。
「何っ?」
ガキーンと金属的な音を立て、ライフル弾は弾き飛ばされた。
あいつの頭ってこんなに硬いの?
どうやら「角」の部分に当たったらしい。後でアリスさんに聞いたら、キリンには角が5本生えている個体もいるそうだ。おでこの真ん中にも瘤のように盛り上がって表皮に覆われた角があったりする。
だったら、瘤で良いんじゃね。骨が入っているから角だと? じゃあ、くるぶしも角ですな?
大人げないって? どっちでも良いけどね。
「ふん。弾を変えてみるか? 冷凍弾でもライフル弾でもない、こいつはどうだ」
俺は実地性能が著しく低い癖弾を1発装填し、もう一度サバンナ麒麟目掛けて発射した。
キーン! ぼふっ!
「ぬははは。角で避けたか? それでも結構! 当たってくれればそれで良し!」
何しろそいつは「催涙弾」だからね。堅い物に当ったもんだから、中身の薬剤が激しく噴出したぜ。
「モフッ! ガフッ! ベッ! ベッ!」
もろに吸い込んじまったようだ。この世界に催涙弾なんてないかな? のど、鼻、目にツーンとくるだろう?
ああ、KLKも咳き込んでるね。
あれじゃあご自慢のブレスは使えない。まともに息ができないからな。
「悪いが、狩りと戦争にかけては人間ほど経験を積んできた種族はいないんでね」
500年や600年ダンジョンやってたくらいでデカい面されてもね。スーパーなベジタブル星人以外はお引き取り願おう。
「どれどれ、主力攻撃チームの戦況はどうかな?」
前衛を務めるストーン5はあの図体だからね。斜面を駆け下りるにしてもスピードは推して知るべし。
全体的にはそれに歩調を合わせて進軍だ。
例外は空中戦担当のトビー君だね。「空の王者」健在で喜ばしい限りだよ。
相手がゴールデンな蝙蝠程度では相手にならないね。時速290キロですからね。新幹線と在来線くらい性能差がありますよ?
「うーん? ゴールデンバットはこっちの前衛に何をしようっての? 上空を飛んでひらひら、パタパタ」
何かきらきら光る粉を撒いてる?
「金粉攻撃? 体に悪い成分なんだろうね。でも、ウチで呼吸する人は少数派なんだけど」
もちろんストーン5にはまったく効かない。粘着シートでも持ってきた方が効き目があるかもね。
下ばかり気にしていると、ウチのスピードキングにやられますよ?
「ほら、言わんこっちゃない。超音波砲一閃。2匹とも撃墜だね。蝙蝠が超音波でやられるって、主客転倒? そういう使い方で良いのかな?」
トビーの役割はそれで良い。敵のかく乱、露払い。それだけで戦いが有利になる。
1人の英雄よりチームの総合力が戦いでは物を言うのだ。
後は無理せず、つかず離れずの距離から音響兵器で嫌がらせをしてやれば敵の戦力はダウンする。
動きが鈍ったKLKとサバンナ麒麟は、俺たちの敵ではなかった。アリスさんの出番もなく、アローのレールガンとストーン5の肉弾戦で敵はあっけなく殲滅された。
「全員集合! 被害報告!」
「今回は被害なしニャ。被弾もゼロ」
「良し! 総力戦の成果が出たな」
そうそう。俺から大事な報告がある。
「注目! 今回敵の意外な攻撃手段に対してシルバーウルフ2名が身を挺して俺をカバーしてくれました。その勇気ある働きに対して、総員拍手!」
パチパチ。両手で拍手できるのは俺1人だけどね。コビ1、早く帰っておいで。
BLウルフ2頭は誇らし気であり、恥ずかしそうでもあった。
「えー、我がトーメー探検隊は多様性を歓迎します。他人に迷惑を掛けない限りにおいて、個人の性癖は自由です」
俺の性癖も見逃してもらいたい。
「そこで、今回の功績をたたえ、2人のシルバーウルフを探検隊のメンバーとして正式に受け入れたいと思います。メンバー加入を記念して、隊長の私から2人に『個体名』を与える」
同時に、従魔としてきちんとテイムしよう。俺のテイマー・スキルで。
「ここに我が従魔として名を与える。我に従え、『ビリー&ジーン』!」
2人合わせてビリー・ジーンね。覚えやすいでしょ。まつ毛の長い方がジーンです。
黄金の光が2頭を包み、シルバーウルフの体形がめきめきと筋肉質に変化した。お互いの筋肉を見せ合ってくねくねするんじゃないの。
「なるほどニャ。本来のテイマー・スキルはこういう風に働くものニャか」
「そうなんだね。前回はダンマス相手だったから本来の姿じゃなかったようだ」
「結局、動物王国への道は避けられニャいようニャ」
むやみに増やさないよう自制はしていますよ? 今回は功に報いるためのメンバー繰り入れですからね。
「それにさ、『どこでもダンジョン』があるから、ダンジョン・モンスターに関してはダンジョンに入っていてもらえば場所も取らないし、面倒を見る必要も無いからね」
「何だか、都合の良い女を手に入れたように聞こえるニャ」
社会的な問題になるから、そういうことは言わないで!
「それにしても、BJは変わったね」
「BJニャ?」
「ビリー&ジーン、略してBJね」
テイミングによって体質が変わったのかな?
「マスター・マスター、それはテイミングの効果です」
「増田か? お前にマスターって呼ばれると紛らわしいな。呼び方は『ボス』にしてくれ」
「わかりました、ボス。ワタクシの例でもお分かりのように、従魔はテイマーの影響を強く受けるのです」
事例が少なからず不本意だぞ。増田の歪み方は俺の性格を大きく超えている。
そこはテイミング以前からの性格によるものだと強く主張したい!




