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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第53話 敵はキングライオンキング軍団だ。文具・衛生用品・文具的なこと?

 アリスさんの危なげない戦いにより、我々はクリーン・ハイエナを一蹴した。

 レベルというか、貫禄が違いますよね。


「ぶるん」

「アロー君のバク宙もなかなかカッコ良かったよ」


 頑張った子はほめて伸ばす方針ですよ、我が家では。

 それにしても今回のダンジョンは、動物タイプ中心の割に「魔法系」の技を多用してきますね。


「この辺の傾向って奴も、ダン・マスの趣味嗜好に懸かっているのかね?」

「そうですね。我々ダンジョン・マスター(分身)はダンジョンの存在自体が生きる目的みたいなところがありますから」

「いや、増田は残留思念体に過ぎないんだから生きてないだろ!」

「じゃあ、残留する目的ってことで」


 何だよ、その目的? 地縛霊みたいになっても続けたいほど魅力があるのかねえ。


「それは種族的な使命感ニャのか?」

「うーん……。種族に関する記憶とか帰属意識と言うのは薄れてしまったようですねえ。こういう風に作られたというか」

「ふむ。人工的な生命体という可能性もあるニャ」


 なかなかに「深い話」になりそうであった。その辺も「生身のダンジョン・マスター」を捕獲してみたら明らかになるかもしれない。


「ところでさあ、生きてるダン・マスってどんな外見をしているの?」

「そこニャ。タイプ的にヒューマノイド・タイプニャのか、モンスター・タイプニャのか?」

「外見的にはヒューマノイドですよ。おそらくこの世界に合わせて作られたんでしょう」


 ふーん。現地知性との接触は最初から考えられていたわけね。


「それでドロップ・アイテムとかボス・ドロップとかを用意しているのかな?」

「そうですね。そういうメリットが無いとこの世界の人類は我々に挑もうとはしないでしょうから』

「ニャルほど」


 何だか、角砂糖のご褒美で気絶するまで走らされる馬車馬になったような気分だぜ。

 こいつやっぱりベースの常識が人間とは違うな。


「なぜそこまでして、人間をダンジョンにおびき寄せようとするニャ?」

「その答えには靄が掛かっていて、答えられません」

「ふうん。人間で言えば遺伝子レベルでタブーが組み込まれているのかもしれないニャ」


 俺が生物学者や考古学者なら、興味津々になって目を輝かせたかもしれない。でも、俺は庶民だからなあ。


「別に興味ないかな。ダンジョン攻略が楽になるなら謎解きするのも良いけどね」

「トーメーならそう言うと思ったニャ。ロマンで飯は食えんと言うタイプニャ」


 うん。ロマンてのは預金残高で1年食って行けるようになってから考える物ですな。


「先に進もうか。時間が惜しいから、総力戦で行こうよ」

「わかったニャ。みんな一通り働いて気が済んだはずニャ。ここからは効率厨で行くニャ」


 負傷者も出てるしね。遊ぶほどの余裕はないでしょう。

 ああ、スラ1のは「遊び」じゃなくて「お食事」ね。


「前陣ストーン5! 第2陣はスラ1とアリスにゃん。第3陣にアロー。遊撃にトビー。後詰めをトーメーのフォーメーションで行くニャ」


 異議なし。コビ1は故障者リストね。


「何だかんだ言ってストーン5は『堅い』からね。前衛で戦いを制することができるなら、それに越したことは無い」


 やっぱりロボットってモンスターには強いよね。相性の問題だな。この際押せるだけ押しましょう。


「頼むぞ、ストーン5!」

「ま゛っ!」


 よいお返事だ。無口だがしっかり仕事をやり切るタイプの人ですね。

 人じゃないけど。


「次なる相手は、ゴールデン・バット2箱、サバンナ麒麟2頭、KLK1頭ニャ。ヒーアッ!」

「キングライオンキングの得体が知れないね」

「想定としては『キングの中のキング』と考えておくニャ」


 どこのチャンピオンですか? らいららい?


「ここまでの傾向で言うと、火魔法とか雷魔法とかを飛ばして来そうだな」

「火魔法や雷魔法はノー・プロブレムだが、氷魔法は注意が必要ニャ」

「うん? ストーン5はロボットなんだから平気でしょ?」

「どんな機械にも動作環境というものがあるニャ」


 あれっ? ストーン5って「寒冷地仕様」になってないの? それはまずいわね。


「超低温ともなれば、バッテリーがやられたり関節が凍り付いたり、電子部品の不具合も出て来るニャ」

「あちゃー。その辺断熱材とか入ってないのか?」

「そこはやっつけ仕事で作り上げたニャ。時間との闘いだったニャ」


 確かに急な話だったからなあ。耐久試験をやる暇はなかったね。


「いざとなったら火を放つニャ」

「氷には火だろうけど、乱暴だなあ」

「巧遅よりも拙速を尊ぶべしニャ。敵味方纏めて燃やしてしまうニャ」


 ストーン5の「人柱感」が止まるところを知りません。ますます墓石に見えてきた。


 「ま゛っ!」


 気のせいか決まり文句の返事にも、一抹の寂寥感が漂うように思える今日この頃であった。


「ストーンは ロボットだから 石柱(いしばしら)


 思わず一句読んでみました。無季だけど。


 作戦が決まったので俺たちは階段部屋を出て、広々としたフィールドにやって来た。


「はあ~。これはどうみてもサバンナですな。見渡す限りとは豪勢な?」


 地平線まで平原なんですけど、次のフロアにはどう進めばいいのさ?


「どこまでも平原が続くように見えるニャが、実際は意外と狭いニャ」

「えっ、そうなの? 壁に絵が書いてあるわけじゃないでしょ?」

「不思議空間の面目躍如で、遠ざかるほどに空間的距離が引き延ばされて見えるようになっているニャ」


 そりゃまた面妖な。


「ハニービーたちが、既に下に降りる階段は見つけてあるニャ。どうやらそこに近付くとフロアボスがポップする仕組みのようニャ」

「ほーう。景観を乱さないように良く工夫されてるのね?」


 どこぞの都市計画もこういうところを見習ってほしいもんですな。


「でもって、そこの岩山を超えるとKLK達が待ち構えているニャ」

「うーん。このシチュエーションで岩山の上に立ったりしたら、歌い出したくなるかも」

「心配はないニャ。頂上まで行ったら一気に開戦ニャ。山の上から逆落としに攻め掛かるニャ」


 鵯越(ひよどりごえ)ですか。そりゃあまた勇ましい。

 でも、馬に乗ってるのって俺だけじゃね? ストーン5も4足歩行って言えば4足だけど。


「地の利はこっちにあるニャ。先ず山の上から液体窒素弾を雨あられとお見舞いして、敵の機動力を削ぐニャ。で煙幕代わりの催涙弾をぶちまけながら斜面を降下。敵に接近したところで火炎放射と電撃アタックニャ。トビーは上空から急降下攻撃を掛けて、敵をかく乱してもらうニャ」


 それはそれは重厚かつ厄介な攻撃だねえ。敵に同情しちゃうよ。

 初期の砲撃戦で高所から攻めて行けるのは圧倒的な有利だもんね。


「じゃあさあ、俺は山上から狙撃を担当するよ。どうせ白兵戦では役に立たないんだから、狙撃手に徹した方が役に立つだろ」

「むむむ。軟弱者と責めたいところニャが、的確な用兵ニャ。わかったニャ。だったら、シルバーウルフ2頭を護衛に付けるニャ」


 ああ、そうか。あいつらが戦力的に浮いていたね。


「うん、了解。スコープを覗いている時に味方が側にいてくれた方が安心だからね」


 おれは2頭のシルバーウルフを連れてアリス達攻撃チームから離れた戦術ポイントに移動した。

 遮蔽物である岩陰に隠れながら敵を見通せる位置に伏射姿勢でスタンバイする。


 携行してきたのは狙撃銃ではないが、この距離なら十分に射程内だろう。どうせこっちは素人だし。

 けん制にでもなれば十分なのだ。

 

 シルバーウルフを観測手として左右に配置し、右に外れたら右のウルフが、左に外れたら左のウルフが声を上げることで射撃結果を知らせる符丁を手早く決めた。


『アリスさん、こちら狙撃位置にスタンバイ完了。これよりの作戦行動はそちらからの指示に従う』

『了解ニャ。こちらも突入態勢展開済みニャ。10秒後、任意射撃開始せよニャ。秒読み開始、今!』

『了解。ご武運を』


 キングライオンキングがナンボのもんじゃい。玉獲ったろうやないかい!


 10秒後、おれはスコープに映るサバンナ麒麟の頭部を狙って、アサルト銃の引き金を絞った。

 使用したのは液体窒素弾である。標的を外しても近くに着弾すれば効果は見込める。


 高所から打ち込む俺の弾丸はどこに撃っても、モンスターの周辺に落下するはずであった。

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