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うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。  作者: 藍染 迅


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第52話 よい子はダンジョンで遊ばないニャ

 気を取り直して、我々はボス部屋に現れた階段を下る。


「ダン・増田のダンジョンって結局5階層くらいだったのかな?」

「ええと、第5階層が崩れてしまった結果、第6階層のボスにしてダンジョンのラスボスだったマッチョ・ドラゴンが倒されてしまったという顛末でした」


「ああ、そうか。第6階層に降りた記憶が無かったから混乱していたよ」


 最後はグダグダの展開だったからねえ。ダンジョンを制覇したという達成感も無かったな。


「お前たちのダンジョンて、みんな階層数は同じなの?」

「いえ、そこに取り決めはありません。とはいえ、2階層から10階層の間ではないかと予想されますが……」


「そりゃまたどうして?」

「それ以上増やすのって、フロアの特徴づけが大変なんですよ。キャストも足りないし」


 モンスターのことを「キャスト」って……キャストかも知らんけどが。


「じゃあ、いつ終わりになるのか先の予想が付かないねえ? 飽きたらビバークして、『どこでもダンジョン』でお家に帰れるから別にいいけど」

「ダンジョン攻略がニャんだか『リモート勤務』みたいに思えて来るニャ」


 よく考えると、俺が一緒に同行しなきゃいけない理由も無いんだよね。他のメンバーの方が強いんだし。

 でも離れたところからモニター越しに命令するのは、黒幕みたいで何だか嫌だね。


 所詮現場から離れられない小物なんでございましょう。

 小物は小物らしく、せこせこ働くとするか。


「ハニービー軍団からの連絡ニャ。第2階層はフィールドタイプで、主に森と草原ニャ。徘徊モンスターはゴールデン・バット、クリーン・ハイエナ、サバンナ麒麟、キングライオンキングニャ」


 いくつか気になる名前があったんですけど。質問(ツッコミ)しても良いのだろうか?


「アリスさん、ちょっと気になるモンスターがいました」

「はい、何でしょう?」


「ゴールデンバットと言うのは今は無き煙草の銘柄じゃないでしょうか?」

「そっちは『ゴールデンバット』ニャ。モンスターの方は『ゴールデン・バット』ニャ」

「どっちも金色の蝙蝠ですけどね」


 何で煙草に蝙蝠がと不思議だが、それを言ったらキャメルとかあるしね。金色の蝙蝠は縁起物だったらしい。


「実は黄金色のスケルトンでしたというオチはありませんね?」

「ここはアンデッドフロアではないニャ。動物系のバットだそうニャ」


 いろんな意味で「昭和レトロ」でややこしい。


「続きましてグリーンハイエナなんですが……」

「『グリーン』ではないニャ。『クリーン・ハイエナ』ニャ」

「何ですか、それ?」

「サバンナの死肉をあさる不潔な動物と言う悪評を払拭すべく立ち上がった、清潔感溢れるモンスターらしいニャ」


 何を背負っているんだか? そもそも動物じゃないわけだし。


「はあ。それでもって「サバンナ麒麟」てトークバラエティ番組の匂いがするんですけど」

「キリンはサバンナの動物ニャ。はい、次!」


 扱い雑だな。サウナ談義とかで盛り上げないの?


「えと、一番わけわからないのが最後の『キングライオンキング』なんだけど……」

「発音に注意しないと、ハリウッド方面とトラブルが発生するニャ。区切る位置は『キングライオン・キング』ニャ」


 なんそれ?


「まず、『キングライオン』がいるとするニャ」

「いるんですか?」

「いないニャが、いるとするニャ! その王様が『キングライオン・キング』ニャ」


「KLK、ヒィーアッ!」的なニュアンスだが、平場は大丈夫なのか?


「アリスさん、先程の第1階層と言い、この第2階層と言い、登場モンスターの色物臭が濃いんですが大丈夫でしょうか?」

「そこは戦闘シーンのシリアスさでカバーするニャ」


 うーん。シリアスな戦闘シーンねえ。

 コビ1は負傷者リスト入りだから外すとして、ストーン5もトビーもシリアスだと思うけど。


「ここは自然フィールドニャ。肉食獣軍団vs.草食獣軍団で対決という構図で緊張感を演出するニャ」

「と申しますと?」

「こちらの出場メンバーは、アローとボクこと猫のアリスにして『草食チーム』を結成するニャ」


「お言葉を返すようですが、猫は雑食だし、向こうにもキリンがいますが……」

「モンスターである時点でゴリゴリの肉食なのニャ! ボクは食事しないし!」


 いや、アンタ草も食べないっしょ! モンスターは「獣」じゃないし。


「大切なのはイメージニャ。どこぞの48人組も、『恋愛してない』というイメージが大切なだけニャ!」

「止めなさい。小太り眼鏡の大物プロデューサーと揉めたくないです」


 生き馬の目を抜く芸能界を長年生き抜いているような人は、きっと恐ろしい力を持っているに違いない。

 くわばら、くわばら。


「真面目な話で言うと、アロー君の遠距離攻撃&防御力。アリスさんの白兵戦能力を考えると、なかなか強いチームですな」

「もちろんニャ。ボク一人でも殲滅戦はできるニャ」


 猫地獄的な投網攻撃がありますしね。非人道的大量破壊兵器の使用も厭わないダーティさを兼ね備えてますからな、我が家のバステト神(猫の姿をしたエジプトの女神)は。


 あ、バステトって元々「殺戮の女神」らしいっす。似合い過ぎて怖い。


「前方に第1モンスター探知ニャ。ゴールデン・バット2体とクリーン・ハイエナ2体ニャ」

「こいつらは正しく肉食っぽいね」

「ぴらぴらうっとうしい蝙蝠傘をぶち抜いておくニャ。アロー、ぶちかますニャ!」


「ぶるるるいっ!」


 嘶き一声勇ましく、アロー君は跳躍して後方回転した。馬でもバク宙できるのね。シルク・ドゥ・ソレイユもびっくり。


 ゴォーン! ゴォーン!


 後ろ足の蹄から超音速のレイルガン発射。「霊流丸(れいるがん)」とか書くと、中二病っぽくて素敵だね。

 狙いあやまたず、2匹のゴールデン・バットは避ける間もなく吹き飛ばされた。


 緑の小箱をドロップしたが、あれはお医者さんが止めるような毒が入っている気がするので、健康オタクの俺は見て見ぬふりをしておこう。ブラウニーあたりが喜びそうな気がするのだが。


 残るはクリーン・ハイエナ2頭。近付いてみると、確かに清潔感のある毛並みの良さだ。アフガンハウンドを逞しくしたような感じ?

 アフガンハウンドって、モデルの森〇さんに似ている気がするのは俺だけだろうか?


 おっと、アリスさん。今回は正面から歩いて行くんですね? ステルス・モードを使うまでもないと。


 対するクリーン・ハイエナは狩りの名手というところを見せたいのでしょうか。チーム・メイトとアイコンタクトを交わすや、左右に別れてアリスに迫る。


「そっちがそう来るなら、こっちはこうニャ」


 アリスさんの体が真ん中から縦に真っ2つに分かれた。ハーフ&ハーフみたいなことかしら。

 子猫サイズに分身して二手に分かれる。


 一瞬体を硬くして警戒したクリーン・ハイエナだが、相手は子猫だ。気を取り直して、襲い掛かった。

 片や前足の一撃を振り下ろし、こなたは正面から噛みついた。だが――。


 ざざっと、アリスの体は粉になり床に崩れ落ちて移動する。離れた場所に移ってはズズズと再び猫の形で実体化した。


 轟っ!


 その間に接近していたアロー君の火炎放射が1頭のクリーン・ハイエナを襲う。

 火力が違うのだよ。火力が。無尽蔵に水素ガスを生産しておりますからね。


 えっ? 向こうがクリーンならこっちもクリーン・エネルギーだって? 政府広報みたいのは要らないから。


 対抗心を燃やしたのか、残ったクリーン・ハイエナは口から冷気を吐き出す冷凍攻撃を仕掛けてきた。

 アリスに向かって真っ白い冷気が襲い掛かる!


「こっちには魔法対策があるニャ!」


 ドゴーン! バゴーン!


 空中で真っ赤な炎が花開いた。アリスが前方に展開しておいたナノマシン・バリアだ。

 スラ1細胞を搭載したナノ・ドローンは敵の攻撃を感知すると自爆して無効化するのだ。


 冷気は拡散してダイアモンド・ダストに代わった。あら、きれい。


「ギニャアー!」


 アリスのターンは毛針攻撃だった。体毛をビシビシと飛ばして、クリーン・ハイエナにお見舞いする。


「ぷぎゃん!」


 鼻面を針で襲われ、クリーン・ハイエナは苦痛に転げまわった。すると、刺さった針は溶けるように消えてなくなった。


 どろり――。


 非公開レシピの毒液によってクリーン・ハイエナは顔面から溶けて行った。


「うわー……、よい子には見せたくない絵面だわあ」

「よい子はダンジョンで遊ばないニャ」


 ですって。みんな気を付けてね!

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