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【第10話】ファスタロット王国の貨幣事情

 レオナルドの貴重な体験の横で、しばらく呆然としていたラピスの母親(マリー)だったが、話がひと段落したことで我に返った。


「それで、お話は一旦よろしいかしら先生?その、デンシン?さんはウチの子と離れられないというのであれば、私たちの家に連れて行って良いということで良いかしら?」


「そういえばそうでしたな。はい、ラピス嬢と一緒に連れて行ってください。個人的には少々……いやかなり……惜しいですが、契約で繋がってしまったのであれば仕方ありません」


「デンシンをつれていっていいの!?ありがとうおじさん!」


「こら、ラピス、先生に向かって失礼よ」


 ある意味、デンシンの本来の所有者とも言えるであろうレオナルドは若干悔しそうに、諦め交じりに答えた。デンシンもこれから厄介になる先の家族を放って話し込んでしまったことを反省し、丸っこい身体ながら背筋を伸ばしてマリーの方を向いた。


「奥様。ラピスお嬢様と勝手に契約してしまった身で申し訳ないが、私も家に連れて行ってはもらえないだろうか?できる限りお役に立てるように努力いたします」


「あら、ご丁寧ね。もちろんよろしいですわ。私もおしゃべりができる妖精は初めてなの。改めてよろしくね」


「ありがとうママ!よかったねデンシン!」


 こうして、デンシンはラピスの家が預かることになった。



---------------------------------------------------------



「しかし、賑やかな街だな。学園があるとはいえ、店も多い」


 レオナルド教授と別れて魔法学園を後にしたラピス達は、活気あふれる繁華街を歩いていた。デンシンは当初は自力で歩いてラピス達についていこうとしたものの、全長が三歳児(ラピス)の頭にも満たない自らの身体では常に走らなければ追いつけず、あまりにも負担が大きかったため、今はラピスの頭の上に乗って揺られていた。(幸いにもデンシンの重さは軽い帽子並みだったため、ラピスの首の負担になることはなかった)


「安いよ安いよー!ワイルドボアの肉串が今だけ100タンクル!銅貨1枚ポッキリ!買うなら今だよー!」

「どうだい、これは冒険者ご用達、投げナイフだ!よく刺さるナイフ一本2000タンクルでご提供だ!」

「焼きたてのパンだよー!一個200タンクル!カリカリでおいしいよー!」

「おっと奥様、この最新のドレスはいかがでしょう?今なら98000タンクルと少々値は張るが、流行りのデザインで機能性もバッチリだ!」

「うふふ、今は結構ですわ、また今度見させてもらいますわ」

「えー、ママににあいそうなのに、かわなくていいのー?」

「こらこらラピス、マリーお母さんが断ったのにややこしくしない方が良いぞ……」


 露店の店主たちがそれぞれの商品の呼び込みをして、客の目を引こうとする光景。どこか前世での商店街の雰囲気を思い出しながら、デンシンはふと耳なじみのない単位が気になった。


「タンクル?マリー奥様、タンクルとはお金の単位のことか?」

「マリーでいいわよデンシンさん。そうよ、タンクルはここファスタロット王国でのお金の単位よ。王族のタルケルト家の刻印が入った硬貨がタンクル硬貨って呼ばれているの」

「なるほどね……呼び込みが100タンクルで1銅貨と言っていたが、材質によって価値が変わるのか?」

「そのとおりよ。すごいわね、デンシンさんは妖精なのに、人間のお金の概念がしっかりわかるのね」

「あっ……ま、まぁ物の名前と数字があったからなんとなく、交換するのかなって……ハハハ」


 そういえば今の自分は人間ではなかったと、自分が精霊であることを忘れてつい喋り過ぎてしまったデンシンだったが、ともかくこの国の通貨については以下の通りであることがわかった。


         鉄貨1枚:1タンクル

        大鉄貨1枚:10タンクル

         銅貨1枚:100タンクル

        大銅貨1枚:1000タンクル

         銀貨1枚:10000タンクル

        大銀貨1枚:100000タンクル

         金貨1枚:1000000タンクル

        大金貨1枚:10000000タンクル


 とはいえ一般的に出回っている硬貨はせいぜい大銀貨まで。金貨以上は商人同士のやり取りや不動産、国家資金など、非常に限られた場面でしかやり取りされない上、場合によっては署名付きの小切手や特別な素材の貨幣、宝石などでやり取りすることが多い。

 そうしてファスタロット王国の貨幣事情を話し、路面店の呼び込みを適当にあしらいながら移動していると、周りの建物より少し綺麗に整備された住居の前でラピス達の足が止まった。


「やっと着いたわねぇ。デンシンさん、ここが私たちの目的地よ」


そう、この建物こそ、ラピス達が王都で活動するときの拠点だったのである。

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