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13 恋は盲目

※流血注意


 

 セインが言った通り、娼館からの脱出は苦もなく成功した。

 監視役に残されていたのは一人だけであり、それを片付けてしまえば娼婦はあっさりと私たちを見送った。

 娼婦は彼らの仲間などではなく、むしろ店を占拠されて迷惑していた模様。「壊した備品代は請求させてもらうよ」とは言われたものの、驚くほどあっけないものだった。

 彼女達の生き方は、私が思っていたよりずっと強かみたい。

 娼館を脱出後は、街の入り口まで駆け抜けた。

 彼らが画策したとおり、待機していた逃走用の荷馬車にいた賊は二人。ごろつき程度の強さだったため、こちらもセインと一気に倒してしまえた。捕まえた賊は荷馬車にあった紐で縛り上げ、地面に転がしておく。

 あと、やることは。


「アルにケネス・ハミルトンの計画を伝えにいかないといけないけど、そっちは私が行くわ」

「さすがに危なすぎる。それは俺が……」

「賊がこっちに逃げてきたら、悔しいけど私の力じゃ敵わない。セインにここを守ってもらった方がいいわ」


 私はイースデイル領のように狭い路地を利用して一対一に持ち込めるなら戦い慣れているけど、力技で一気に来られたら対応できないみたい。万一、屋敷から引き上げてきた賊が一斉に押し寄せたら詰む。

 それに幼い頃に何度かハミルトン子爵邸を訪れたことのある私の方が、屋敷の構造をわかっている。賊の目を掻い潜ってアルの元に行くなら、私が適任。

 セインもそれは理解していたのだろう。

 苦々しい顔をしたけど、「……すまない。頼む」と口にした。


(任せてくれてよかった。セイン、しんどそうだもの)


 思ったよりずっと素直に了承されたことに安堵する。

 さすがにここまで来ると、セインには隠しきれない疲労が見えた。顔色は悪く、額には脂汗も滲んでいる。思った以上に傷が響いているのだと思う。今の内に少しでも休ませてあげたい。

 それにこんな時に自分が頼られる存在であるということが、誇らしく思えた。

 そうと決まれば、持ってきた箒は置いて、転がした賊から短剣を拝借した。遠慮なく太腿のベルトに差し込む。


(これで良し、と)


 その間に、セインが荷馬車から馬を一頭外す。

 日も落ちて街を出歩く人はいない今ならば、街中を馬で走っても問題はない。


「じゃあ、行ってくるから!」

「頼む。任せた」


 真剣な顔で私を見送るセインに頷き返す。馬の背に飛び乗ると、手綱を引いて走り出した。



 かくして月明かりを頼りにして、ハミルトン子爵邸の庭へと侵入したわけである。



 ひとまず屋敷のそばまでやってきて、木の影に馬を繋いでいたところで、表門を見張っていた監察官に声をかけられたのだ。

 相手は私がイースデイル辺境伯の娘だとわかっていた。事情を説明すれば、監査官はすぐに心得たように陽動を申し出てくれた。既に賊は屋敷に押し入っているはずだと伝えれば、監査官は表玄関から乗り込んでくれることになった。

 彼の存在がアルの救出に向かう私の存在を掻き消してくれる。その間に、私は庭側から侵入するという手筈だ。

 幼い頃にここで探検した記憶が役に立った。庭側からアルにあてがわれた客室へと向かう足取りに迷いはない。


(賊は裏門から入ったのね。表にまで人が割けなかったみたいでよかったわ)


 しかし屋敷に近づくにつれ、中の音が微かに漏れ聞こえてくる。

 何かが割れる音。誰かの悲鳴。それを恫喝する声。剣と剣が撃ち合う甲高い響き。

 ハミルトン子爵は平和ボケしているのか、衛兵の育成には力を注いでいない印象を受けた。いま賊に応戦しているのはそのなけなしの衛兵か、それともアルの護衛騎士も対応に追われているのかもしれない。


(急がないと!)


 客室は二階。

 賊が押し入って間もないなら、下に降りる方が巻き込まれる危険がある。客室は内側から鍵が掛かるため、いっそ片付くまで部屋に立て篭っている可能性はある。

 一階の窓枠に足を掛けると、雨戸を手で掴んだ。腕に力を入れて二階のテラス目指して這い上がる。

 我ながら慣れたもので、忍び込みのプロと言っていいんじゃないかしら。……辺境伯令嬢が誇れる技ではないけれど。


(門限破りをする度に、こっそり部屋に帰っていたのが役立ったわね)


 私の自室は二階である。街で遊びすぎて帰りが遅くなる度、父に叱られないよう窓から自室によく忍び込んでいた。そんな私を両親はお転婆すぎると嘆いたものよ。

 それがこうして役に立つのだから、人生はわからない。

 しかしテラスへと這い上がると、即座に私の気配にアルの護衛騎士は気づいた。こちらが声を掛けるよりはやく、窓から飛び出してきたラッセルに剣を突きつけられる。


「何者だ! ……イースデイル辺境伯令嬢?」

「はい。レイチェル・イースデイルです」


 思わず両手を上げて名乗ってしまった。だって首ギリギリのところに剣が迫っていたのよ!

 私だと気づいたラッセルが咄嗟に止まらなかったら、今頃私は床に転がっていたかもしれない。

 そんな私の姿を認めて、アルがラッセルの後ろから飛び出してきた。


「レイ、良かった! 大丈夫!? 怪我は!」


 慌ただしく私を上から下まで確認するアルの顔色は青い。「帰ってこないから、いまフレディに頼んで探してもらいに行っていたのだけど」と泣きそうな目をして言われる。

 当たり前だけど、かなり心配させてしまっていたみたい。


「大丈夫よ。それより、報告することがたくさんあるの」


 本当はまだ蹴られた腹は鈍く痛んでいたけど、こんな顔をしたアルを更に心配させるわけにはいかない。

 一旦部屋に入り、ラッセルは屋敷内の様子を伺って扉脇に控える。私は厳しい表情のアルに向き直った。


「まず、昼に街でハミルトン子爵令息のケネス・ハミルトンの姿を見かけたの。見るからに怪しかったから、セインと追いかけたのよ。ケネスは娼館を訪れて、そこに今回不法入国者を手引きした賊が潜んでいたの」

「賊は父親ではなく、ハミルトン子爵令息と繋がっていたということ?」

「いいえ、賊と取引していたのはハミルトン子爵みたい。ケネスは父親を売って家の財産を引き換えに、自分だけ隣国に逃げる手配を頼んでいたわ」

「家族で仲間割れをした、と……それで屋敷がいま賊に押し入られている?」


 説明を受けてアルは渋い顔をした。状況判断がはやくて助かる。


「そう。賊はケネスが手引きして財産を奪いに来てる。不法入国者はもうどうでもよくて、ただの財産狙いだから使用人の無事は保証できない」

「!」

「ここに来る前に賊の逃げる足はセインと潰してきて、セインにはそっちを見張ってもらってるけど。それとケネスは、アルの正体を見破っていたの。アルを人質にして隣国に逃げるつもりよ。だからアルには今すぐここから脱出してほしいの。馬を屋敷の外に繋いでるから」

「待ってほしい。私が誰だかわかっているのに、私を人質に?」


 アルが怪訝な顔をした。


「私を連れて逃げれば追手は厳しくなるから、普通に考えて邪魔になるだけだと思うけれど」


 冷静に考えれば、それもそうだ。ランス伯爵子息を人質にする、と言われた方がまだ理解できる。

 だが、確かにケネスは『アルフェンルート皇女』と告げていた。

 アルは降嫁したとはいえ王の娘。連れ去って、ただで済むわけがない。イースデイルの港から逃げるつもりなら、イースデイル辺境伯家が総力を上げて逃走を妨害するだろう。

 この場合、ケネスはこのまま財産だけ持って単身で逃げた方がまだ逃げ切れる可能性がある。

 それをなんでわざわざ、アルを人質に?

 お互いに顔を見合わせたものの、ケネスの胸の内などわかるわけがない。


「ケネス・ハミルトンがどういうつもりかわからないけど、ひとまず逃げた方がいいことはわかった」


 アルは考えるのを早々に切り上げたようだ。「ラッセル」と鋭い声で呼ぶ。

 即座に反応したラッセルは主の命を聞く体勢だ。


「私はレイと先にここから離脱して、監査官の仮宿に身を潜めます。ラッセルは賊に応戦しているニコラスと監査官に合流。使用人と不法入国者の保護に当たってください」

「ですが、アルフェンルート様お一人では!」

「賊が集結しているならば、この場で取り押さえることを優先すべきです。ニコラス達だけでは苦戦を強いられると思いますし、巻き込まれた使用人の身も心配です。私は外にいるフレディと合流しますから。逃げるなら、人数は少ない方が目立ちません」


 護衛であるラッセルから見れば、不特定多数よりもアルの方が大事だ。しかしアルはそれを許さない強い眼差しで訴えた。


「ラッセルが出て行ったら、扉に鍵を掛けてから窓から逃げます。レイ、危険な中を申し訳ありませんが、案内をお願いできますか」


 迷いなく凛と伸ばされた背。真っ直ぐに私を見つめる深い青い瞳には強い意志。願い出る形でありながら、それは命じる声でもあった。

 しかし今はそれが頼もしく響いた。考えるより先に強く頷いた。


「お任せください」


 そもそも私は、この方を守るために来たのだった。

 イースデイル領まで新婚旅行に来て、嫌な思い出ばかりだった、なんて絶対に思わせたくはない。

 アルは一瞬申し訳なさそうに眉尻を下げたけど、安堵も滲ませた。躊躇いを見せるラッセルを送り出して、すぐに扉に鍵を掛ける。

 これで少しは時間が稼げる。


「飛び降りるのは無理よね?」

「残念ながら良くて捻挫、悪くて骨折かな」


 アルは二階のテラスから下を見て渋い表情だ。慣れている私から見ても、思ったより高さがあるのだ。

 腕に力があればテラスの柵を乗り越え、柵を掴んだ状態でぶら下がって飛び降りる。しかし力持ちらしいとはいえ、アルの細腕では不安が残る。


「無理して足を挫いてもいけないから、シーツでロープを作りましょう」

「わかった」


 素直に応じたアルがベッドシーツを引き剥がしている間に、スカートをたくし上げて短剣を取り出した。

 短剣でシーツを割いて、端を固結びにして繋げていく。簡易のロープだけど、少なくともアルさえ無事に降りられるだけ保てばいい。

 その間も扉の向こうからは争う音が漏れ聞こえてくる。焦る気持ちに押されつつ、なんとか完成したロープをベッドの足に括り付けて地面に垂らした。

 よし、なんとかなりそう!


「アル、先に……」

「アルフェンルート皇女殿下。ケネス・ハミルトンです」


 その時だった。

 不意に扉がノックされて、ケネスの声が聞こえてきたのは。


「あなたを助けに来ました。どうか扉を開けてください」


 扉の向こうからは聞こえてくる声は、階下の喧騒からは考えられないほど静かに響いて聞こえた。それはいっそ不気味なほどに。

 心臓が緊張でバクバクと跳ね上がる。

 もしここに何も知らないアルとラッセルだけだったら、ハミルトン子爵の手から逃すために子息が駆けつけたのだと思ったかもしれない。

 しかし、既にケネスは敵だとわかっている。

 幸い、扉の鍵は閉まっている。まだ時間は稼げるはず。このまま黙ってここから降りるべきだ。厳しい顔で扉を見据えるアルは、「先に行って」と私に小声で囁く。

 確かに不慣れなアルより、まず私が先に降りて馬を連れてきた方が……

 しかしそんな思考は、ガチャリ、と鍵が開く無慈悲な音で掻き消された。


「どうして、鍵がっ」


 思わず呻いてしまったけど、どうもこうもない。スペアキーを持っていたんだろう。家主ならば持っていて当然だった。

 咄嗟にアルを背に庇う。


「先に行って、アル!」

「レイチェル嬢もいましたか。あの状況で逃げ出してくるとは、予想もしていませんでしたが」


 アルに脱出を促したけど、部屋に踏み行ったケネスとの距離は数歩の距離。逃げるまでに捕まるのは必至。

 アルもじりじりと距離を測って後ずさるだけで精一杯。

 そんな私たちを見て、ケネスが目を細めた。なぜか哀願するような表情になる。

 そして口にした言葉は、まったく想像もしていないものだった。


「レイチェル嬢、あなたに危害を加えたことは申し訳なく思ってる。だけど仕方なかったんだ。どうか俺達を見逃してください。俺とアルフェンルート皇女殿下は、一緒に逃げたいのです」


 ケネスの口から語られた言葉に耳を疑ったのは、私だけではなかった。

 アルまで言葉を忘れて絶句している。

 それはそうよね。なんでこの状況で、アルがケネスと一緒に逃げることが当然みたいな話になっているの?

 呆然とする私達の前で、ケネスが苦渋に満ちた表情を見せる。


「俺が不甲斐ないばかりに、申し訳ありませんでした皇女殿下。新年の舞踏会であなたは俺を見て、あの場から連れ去ってほしいとばかりに困った顔をして願っておられたのに……っ」


 寝耳に水の話だった。ギョッとしてアルを振り返れば、アルまで目を瞠って息を呑んでいる。

 これはどう見ても、アルには身に覚えのない話のようだ。


「私が、ハミルトン卿に、ですか?」


 アルは絶句しつつも、なんとか声を絞り出した。


「ええ。あの夜、あなたはずっと人形のように感情のない顔をされていた。だけど俺と目が合った時だけ、助けを求めるように困った顔をなさったでしょう。俺はそれに気づきながらも、あの場では怖気付いて何も出来なかった……!」


 言われたアルは、あきらかに盛大に引いている。

 しかしケネスは自分に酔っているのか、そんなアルの様子には気づきもしない。更に言葉を重ねる。


「ずっと後悔していたのです。ですが子爵家の自分なんかでは、陛下が決められた相手から連れ去ってさしあげることは出来ないと思っていました。しかし、あなたはこうして夫を振り切って、俺の元までやってきてくれた! 最初は驚きのあまり何も声が出ませんでしたが、今なら胸を張ってあなたの手を取る!」


 ここまで来ると、アルの顔には「何言ってるんだ、この人」と言わんばかりの困惑が浮かんでいる。

 じり、と足が下がったのは恐怖からだろう。


(これは……)


 たぶん状況から判断すると。

 ケネスは新年の舞踏会で出会ったアルに、一目惚れをしたに違いない。

 それなら、男装したアルの正体を見抜いたことも理解できる。顔そのものは変わっていないのだから。

 そしてケネスはきっと一目惚れした際、不躾なまでに食い入るように見つめ続けたのだろう。それに対してアルが非難の目が向けたものの、いつまでも視線が逸らされなくて困った顔をする羽目になったのではないだろうか。

 そんな様子が手に取るように想像できる。


(確かに、着飾ったアルは綺麗そうだから……皇女様が自分だけに困り顔を見せた、と思われたら勘違いされちゃうものなのかしら)


 恋は盲目というぐらいだ。少なくとも、ケネスにとってはそうだったのだろう。

 当のアルにとっては、迷惑な話だ。


「こんな何もないハミルトン領にまで足を伸ばされる予定を組み込まれたのは、俺に助けを求めにこられたからでしょう。そこまでされたら、応えないわけにはいきません」


 熱に浮かされた眼差しをして、ケネスは一歩踏み込んでくる。


「さあ、アルフェンルート皇女殿下! 俺と一緒に逃げましょう!」


 今更だけどそれは、常軌を逸して見えた。


 思い返せば、ケネスはこれまで父親がしでかしたことに触れなかった。その時点で、頭の中は歪に歪んでしまっていて、見るべきものも見えていない状態なのだと感じ取れた。

 アルに対する恋心の暴走も、現実逃避の成れの果てなのではないかとも思えてくる。

 今もケネスの視線は私の背後のアルにだけ向けられていて、他には何も見たくないと叫んでいるかのよう。きっと私なんてまったく目に入っていない。

 ならば。


「アル、逃げて」


 囁くと同時に、ケネスに向かって短剣を構えて踏み込んだ。

 数歩の距離を詰めて、胸を目がけて剣を薙ぎ払う。しかしケネスはやっぱり強くて、後ろに退き様に腰から剣を引き抜いて構える。すぐにこちらに踏み込んできた。

 だがそれも想定内。


「きゃ……っ」

「レイッ!」


 わざと上げた悲鳴に、背後から切羽詰まったアルの呼び声が聞こえる。

 咄嗟に避けた際によろけたフリで足元を崩した。さすがに辺境伯の娘を傷つけるのは気が引けたのか、ケネスが躊躇いを見せる。

 狙うのは、その僅かな隙。

 くるりと短剣を持ち直し、ケネスの足の甲を目掛けて短剣を突き立てた。


「っぐ……!」


 しかし、革靴は思ったより硬かった。刃は僅かにケネスの足を掠めて血を滲ませただけ。

 浅かった、と思った時には突き飛ばされて体が床に投げ出される。


「っ!」

「邪魔をするなッ!」


 ケネスは鬼気迫る顔で叫び、足に血を滲ませながらもアルへと駆け寄ろうとする。


 まるでこの時だけ、時間がゆっくり動いているかのように見えた。


 私に駆け寄ろうとしたけど、ケネスの反応に固まるアル。

 這いつくばりながらも手を伸ばして、ケネスのズボンの裾を掴んだ私。

 そしてテラスを乗り越えて新たに現れた、黒い人影。


(え……?)


 その人影は即座にアルの肩を掴んで、背に庇った。その勢いのままケネスの懐に飛び込んで、腹に剣を叩き込む。


「──ッ!」


 ケネスは声もなく、私の前で吹っ飛ぶ形で倒れた。

 ただ血飛沫は上がらなかったから、どうやら剣は鞘ごとの状態で叩き込まれたみたい。

 しかし、思い切り強く薙ぎ払われた風圧と速さはとんでもなかった。恐る恐る見たケネスは動かないので、気を失っているのだと思う。


「無事ですか、アルト!」


 その間に、いきなり現れた救いの主は鬼気迫る表情でアルに詰め寄っていた。

 焦茶の短めに整えられた髪は乱れていて、緑の瞳はアルだけしか見えていないみたい。

 固まっているアルの全身を手早く調べる。何もないのを確認してから、力強く腕の中に抱き竦めた。


「間に合ってよかった……っ」


 腹の底から搾り出された低い声には、切実さが滲んでいる。

 もしかして。この人は。


「……クライブ」


 アルが呆然と呼びかける声で、私はその人物が誰なのかを理解したのだった。




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