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異酒屋  作者: 達磨堂
3/5

「人」と「なにか」と「俺」


酒を飲みながら

神棚を掃除する

本来失礼だろ


でも二~三年掃除もしてなかった事のほうが

よっぽど罰当たりか


でも向こうから見ているという彼女が

やってというならば

罰はあたらんのか?


でも彼女は何者?


でもばっか


そりゃそうか

こちとら大混乱の真っ最中なんだから

でもが付こうが

考えられてるだけまだましか


なんて思いながら

俺は神棚を掃除し始めた


作業をしながら

ふと振り返ってみると

彼女はニコニコと

何とも言えぬ愛らしさで

こちらを眺めている


「あの~お名前はないってことだけど」

「はい」

彼女はキョトンとしている


「あなたって呼ぶのもなんだしなんて呼んだらいいです?」

「好きに呼んでもらっていいですよ?」

ニコッと微笑み彼女はそう言った


好きに呼んでいいって言われても

そもそも初対面だし

引き出しが無さすぎる


「ちなみに...神様ですか?」

まだパニックが収まっていないらしい

唐突にとんでもないことを聞いてしまった


「神様かぁ...神様って何だろうね?」

彼女は何とも言えぬ表情で言い

こう言い足した

「神様って「人」が言ってるだけで、元は神様も「人」だったりしてね」

そう言うと

またにっこりと微笑んで見せた


煙に巻かれた

確実に煙に巻かれた

でも不思議と彼女の笑顔への恐怖心は無くなっていた


「でもさっき幽霊?的なこと言ってたよね?」

彼女はうーんと唸りながらも

「神様も仏様も幽霊も全部「人」が創ったものだからなぁ...」

そういうと彼女はまた唸りながらも

こう続けた

「やっぱり言えることは感情を持った「なにか」かな...でもおばけはイヤ!怖いもの!」

と言うと彼女は少しむくれて見せた


「えっ!?」

意識せず無反応に声が出てしまった。


いやいやいや

俺からしたら一緒ですよ


そりゃ神様も仏様も神聖な存在ですよ

俺的には


でも幽霊もおばけも

信じる者もいれば信じないものもいる

神様だって仏様だって

信じる者もいれば信じないものもいるよ


ただ共通して言えるのは「人」ではないってこと

でもおばけだけ怖いって


って考えてたらなんだか笑えてきた

「なんか面白いこと言うね。おばけだけ怖いって」

「だって怖いんだもん!...でも明日楽しみだなぁみんなが一番幸せそうに吞む日だもんね」

そう言った彼女の顔は

無邪気な少女その物だった


「なんかその顔ノンちゃんに似てるな」

ボソッと心の声が漏れていた


彼女のその無邪気な表情を見て

幼稚園の時好きだった女の子

ノンちゃんを思い出していた


すごく活発で

みんなにやさしく愛嬌のある子だった

同じ小学校に行くはずだったけど

親の都合で引っ越してしまったのだ


「あっごめんごめんいきなりノンちゃんって言われても困るよね」

「昔幼稚園で一緒だったんだその子。君に笑顔が似ていてさ」


彼女はにっこりと微笑みながら

ただ俺の作業を見ていた


「そうだ!名前無いみたいだしすごく似てるからノンちゃんって呼んでいいかな?」

「あっやっぱり調子に乗りすぎだね。いくら似てるからってイヤだよね!ごめんごめん」


いけないけない

俺のデリカシーの無さが

あふれ出てしまった


反省しつつ振り返ると

彼女はまんざらでもない表情で

むしろどこか嬉しそうに

またにっこりと微笑んで

こちらを見ていた


その表情に胸を撫でおろし

作業を再開する


ただ面白い程に

初めて彼女が現れてからの

恐怖や混乱やらいろんな感情はもう無く

ただお客さんが来て楽しく話してる感覚になっていた


ましてやノンちゃんに久しぶりに会えたって思える

そんな懐かしささえ感じていた


まもなくして

掃除も終わりそうになり

振り返りながら


「もうすぐ終わるから埃かぶっててごめんね」

ってなんで謝ってるんだろう

と思いつつも

彼女の顔に目を向けると

ニコニコと笑ってこっちを見ている



「ふーっ終わった」



「やっと終わったよ。よっしゃ呑むか!」


そう言いながら振り返ると

そこに彼女の姿はなかった


「えっ?どこいった?あれ?」

戸惑っていると


薄れゆく声で


**  ありがとう。...;:;。::・  **


そう聞こえて来たんだ


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