表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異酒屋  作者: 達磨堂
1/5

「人」と「なにか」と「俺」


「今日もありがとねぇ~」


今日も一日おつかれさま 俺


昼呑みも出来て

皆和気あいあい

泣いたり笑ったり騒いだり

深夜1:00に店じまいのごくごく普通の居酒屋


だったのにねぇ、、、



   * * *


いつも通りの日常が終わり

しみじみ飲む人もいれば

いつも通りの愚痴を漏らす人もいる


居酒屋なんてそんなもん


しかしながら

そんなもんでも「人」によっては人生に無くてはならない居場所

そうなれるように、様々な「人」が集まる場所を作り

その輪の中で俺もにこやかに人生を送っていた


でも日々の皆様の疲れを少しでも笑顔にしていたら

深夜1:00なんてあっちゅうま


片付けも終わり深夜2:00

いつも通りの一人打ち上げである


四人掛けの店のテーブルで

瓶ビール片手に手酌酒


慣れたもんだね

もう十年だもんね


今日も一日お疲れ様 俺


*お疲れ様です...*


...えっ?

...なに?


なんか聞こえたんですけど!?

辺りを見回しても誰もいない...


なになになに??


あっ駄目だ...

最近休みなく働いてたもんな...

疲れ溜まってんだわ...

これ呑んだらさっさと帰ろう...


グラスに残ったビールを飲み干し

溜息混じりで残りのビールをグラスに注ぐ


そのグラスを口元に運んだらね

勢いよくビールを噴射したんだわ


まるでとあるプロレスラーの「毒霧」のように豪快にね


噴射したビールが見事に俺の目の前の壁でシュワシュワしてる

でも驚いたのは綺麗に出た「毒霧」でもなく

おいしそうにビールを呑む壁でもない


ビールを呑む壁と俺との間にいる「なにか」にである


「人」っておもしろいよね

理解不能の限界に至ると言葉をなくして思考を止めようとする


そんな止まりかけている俺の思考にとどめを刺すように

「なにか」はみるみるうちに形を変え

その「なにか」は女性であることを俺に認識させるのである


「ちょっと待て!誰だよ!」

「あっ!てかごめんなさい!ビールかかってない?大丈夫?」

言ってることもやってることも大混乱の極みである


急いでおしぼりを取りに行こうとすると


「大丈夫です。何もかかっていません」

「いや...でも」

「お気になさらずに。大丈夫ですので」


いやいやいや


んなこと言われても「お気にします」よ

この状況いろんな意味で「お気にします」よ

お気にしない人呼んで来いよ...


しかしながら

大混乱の極みの俺を気に掛ける様子もなく


「あの、まだ大丈夫ですか?」

「えっ...?何がです?」

「お店...居ても大丈夫ですか?」


いやいやいや


心配するとこ!!!

おかしいよこの人!!!

ほかに大丈夫じゃないとこいっぱいあるでしょうよ!!!


あっ初めて知ったよ

人って大混乱の極みを超えると無になるんだね

気付かせてくれてありがとう


でも彼女は

そんな無に近い俺を気に留める様子もなく

「まだ居てもいいですか?」

「いや...まぁ...でもちょっとまって」

「ありがとうございます」

にこりと微笑みそういうと彼女は黙ってしまった


いやいやいや

俺のちょっとまっては何処へ?


この沈黙も気まずいし

それ以前に突っ込みどころしかないけどこの子なんなん?


でもこのままでもなんだし

って...

職業病出てんなぁ...


「あのぉ...なんか呑みます?」

「いえ、すいません。私呑めないので」

「あぁじゃお茶かコーラか持ってきますね」

「いえ、すいません。それも吞めないんです」

「あっじゃお水持ってきますね」

「いえ、この世にあるものすべて口に出来ないので...」


そうゆうと彼女は俺の呑んでいた瓶ビールのグラスをつかむ素振りをし始めた

何度もグラスをつかもうとする彼女を見るなり俺は失神しそうになる


なぜなら

俺のグラスをつかもうとする彼女の手は

何度も何度もグラスをすり抜けるのである


彼女は照れ笑いを浮かべながら

「ね、どうしても無理なんです」


ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!

いくら感情が無に成ってるとはいえ

流石にこれぐらいのリアクションはしてしまう

てか

そもそも何照れとんねん!!!!


「えっ!ちょっと!!」


慌てて俺は

自分のグラスを手に取ってみる

もちろんそこに存在するのかを確認する為に


「ええぇぇぇ?なになになに??なんで?」

つかめるのだ

俺は俺のグラスを

当然のことながら

当たり前のように


「驚かせてすいません...実は私...」

「ちょっと待った!!」


もう皆まで言うな

頭が追い付かん

自分のペースで自分の脳内フル活用して

理解不能はもう置いといて

自分の知識内で片付ける


「おばけ??」

自分の語彙力の無さに驚きながらも

口をついて出た言葉はそれだった


「...その言い方は傷つきます」

「...実態はないのですが感情はあります。しいていうなら幽霊?」


一緒や!!!!!!

あほう!!!!!!

なんやねんその区別は!!!!

そんな事アゴに指さしてかわいく言うなや!!!!


ムリムリムリ

「あのすんません怖すぎるんで出てってください」


「ですよね...でも...」

驚きながらも悲しそうな顔で彼女は続けた

「ちょっと相談があって...」


知らんし!!!

なんやねんマジで!!!

はよ出てけや!!!


「実は...」


続けるんかーい...!!


   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ