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第9話 兄の嫌味


「よぉリアム、入学おめでとう」

「マット兄さん久しぶり......」


 突然話しかけられ驚いたのも束の間。すぐさま嘲笑いながら言ってきた。それを見ていたミシェルとエルは不快な顔をしていた。


「クラス代表になったんだってな」

「はい」

「よくお前みたいな無能がなれたよな。流石はFクラスだわ」

「......」


 俺が何も言い返せなかったとき、ミシェルとエルが言った。


「リアムは無能なんかじゃないわ!」

「劣等種であるエルフに言われても信憑性が無いんだよ」

「じゃあ私が言うわ。リアムは強いわ。確実にこの学園の中でも指折りの実力を持っているわ」

「だ~か~ら、Fクラスの奴が何て言おうと信憑性が無いって」


 マット兄さんが言ったのに対して、二人とも悔しそうな目をしていた。


「それにしても魔力ゼロのお前がクラス代表とか本当に笑えるわ。まあβ組であるお前たちと、俺たちα組は当たる可能性もあるから、その時は潰してやるからな」


 そう言ってこの場を去って行った。そして、マット兄さんがこの場から消え去ってから、ミシェルとエルが怒りながら俺に言う。


「リアムのお兄さんってなんなの! 本当にムカつくんだけど!」

「ね! 私たちのことをずっとバカにしてきていたし!」

「ごめん......」


 俺が謝ったところで、ミシェルがハッとした顔をしながら尋ねてくる。


「そう言えば、なんでリアムは苗字が無いの? 最初は孤児かなにかなのかなって思っていたけど、あいつがいるってことは苗字はあるよね?」

「......。俺さ、実家から勘当されてるんだ。だけど唯一血の繋がっている兄だから」

 

 そう答えると、二人は悲しそうな顔をしながら言った。


「辛いこと思い出させちゃってごめんね」

「別にもう終わったことだし、いいよ」

「うん、じゃあさ! あのクソ兄を見返してやろうよ!」

「そうよ! 私たちで見返してやりましょ!」


 ミシェルが言ったことに対して、エルも同調してきた。


(見返すって言われても)


 マット兄さんには、現代の魔力適性があるんだ。今頃、元実家で賢者になる教育を受けているに決まっている。そんな人に俺が見返せるとは到底思えなかった。俺が俯いていると、ミシェルが少ししゃがみ込んで顔を覗き込みながら聞いてくる。


「リアムは嫌なの?」

「嫌って言うか、そんなことできるのかなって思って......」

「絶対に大丈夫! だからここから三人で練習しよ?」

「でもいいの? 俺の諸事情で二人を巻き込んで」


 そう、今回見返そうという話が出てきたのは、俺個人の問題であって二人には関係ないことだ。それなのに二人を巻き込んでいいのかわからなかった。


「別にいいわ! それにリアムの兄を見返すのは、私のやらなければいけないことの通過点でもあるから」

「え?」


 エルが言ったことに対して、少し疑問を感じた。


(リアム兄さんを見返すのがエルの通過点?)


「まあリアムが言ってくれたのに私が言わないのは、フェアじゃないから言うけど、私はお金が必要なの」


 すると、ミシェルが首を傾げながら尋ねた。


「なんで?」

「私には、少し歳の離れた妹がいるの。妹は今、病気で入院しているわ。それを治すのに莫大の資金が必要だから」


 それを聞いて、俺とミシェルは驚いた。そこでふと俺とエルが戦ったことを思い出した。「私には負けられない理由がある」。その理由が妹だったとは思いもしなかった。


 ミシェルはわからないが、俺は何か負担があってここに通っているわけではない。俺なんて生活費が欲しいのと、ティアに頼まれたことをやらなければいけないからここに通っている。


 だけど、エルは妹のためにロッドリレル魔法学園に通っている。それに大きな違いを感じてしまった。少なからずミシェルもそう思っている顔をしていた。


「じゃあ一刻も早く結果を出さなくちゃだね......」

「えぇ。だからα組を倒さなくちゃいけない」

「「α組とβ組って何?」」


 ミシェルと俺は、同時にエルへ質問した。


「え? 知らないの?」

「うん。だってそんなこと言われてないし」


 ミシェルの言う通り、アリーシャ先生にそんなことは言われていないし、他のみんなもそんな話はしていなかった。すると呆れたような顔で俺たちを見ながら説明し始めた。


「α組はA~Cクラスでβ組はD~Fクラスのこと。そして模擬戦はα組とβ組が戦うの」

「へ~」

 

 初めて知った。各クラスの総当たり戦だと思っていた。


「そして、模擬戦は今年からダンジョンの攻略時間で決まっているわ」

「は? 去年まで普通に対人戦じゃなかったっけ?」


 俺の知っている情報だと、対人戦で模擬戦は行われているのを耳にしていた。てかダンジョン攻略の時間ってなんだ?


「対人戦だと、実力差が分かり切っているから、ダンジョンの攻略時間に変えたらしいわ」


 まあ、エルの言う通り対人戦だと実力差は明確だ。でもダンジョンの攻略時間で勝負なら攻略するペース配分など、頭を使う作業も多いため、公平性がある。するとミシェルはなぜか自信満々に言った。


「まあそんなのどっちでもいいじゃない! 私たちで結果を出せばいいこと! 後二週間練習して優勝しよ!」

「あぁ」

「えぇ」


 話は終わり、三人で練習に戻った。



 模擬戦開始の二週間前になって、アリーシャ先生が言った。


「模擬戦の後は、同盟学園で個人戦が行われるからみんな頑張ってね。個人戦は一、二年で計六十四人出れるからみんなにもチャンスはあるから!」


 それを聞いて、ミシェルやエルは俺に言ってくる。


「模擬戦や個人戦で実力を示したら、元実家を見返せるんじゃない?」

「......」


(見返すね......)


 その時、同じクラスメイトが俺を睨んできているのをまだ気づけなかった。

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