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第5話 入学


「あの......」


 試験官が無言でこちらを見てきたので、つい話しかけてしまった。すると血相を変えて言われる。


「お前、今何をした?」

「え? 火玉ファイアーボールですけど」

「魔力ゼロのお前が使えるはずないだろ! 何をした!」


 怒った表情で、徐々に近づいてきた。


(なんて説明しよう......)


 ティアとの約束で、精霊と契約していることは言えない。でも、理由が思い浮かばなかった。そう思っていた時、一人のおばさんがこちらに俺と試験官に近づいてきて言った。


「別になんでもいいでしょう。この子は試験をクリアした。それまでです。さぁ、戻っていいですよ」

「あ、ありがとうございます」


 助けてくれたおばさんにお礼を言って、この場を去った。すると、受験者がこちらを異様な目で見てきながら小さな声で言ってきた。


「いかさま使うなよ」

「なぁ。まあ入学できたとしても地獄を味わうのはこいつだけどな」

「そうだな。その時は楽しみだ」


 聞こえる声を無視して、ミシェルのもとに戻ると笑顔で祝福される。


「すごい! 私も続くから見ててよ!」

「あぁ!」


 そしてミシェルの番になって水晶に手を当てると案の定、白色であった。試験官は「またか」といいながらも試験が開始された。


 ミシェルは風切エア・カッターを使って的である正方形の岩を斬り落とした。


(すごい!)


 今まで試験を受けた人は、岩に届くのですらやっとであり、壊す人なんていなかった。俺の時と同様、陰口を言われながら俺のもとに戻ってきて、ピースサインをしてきた。


「どう!」

「すごかったよ!」

「えへへ~~~」


 その後も、続々と試験が続いたが、岩を壊すほどの魔法を使った人は数名しかいなかった。


 ついに試験が終わって、宿に戻ろうとした時、ミシェルが言ってくる。


「お互い合格したら、正門で集合ね!」

「あぁ。合格したらよろしくな!」

「うん!」


 そう言ってこの場を去った。宿に戻ると、ティアが出てきた。


「試験を見る限り、リアムもミシェルちゃんも合格できるから安心ね!」

「そうだといいけどね」


 ティアが言う通り、合格できているなら嬉しいが、合否が出るまでまだわからない。それに俺だけ受かってもあまり嬉しくない。それはミシェルも同様だと思う。その後、ティアと雑談をして就寝した。


 合否が出るまで、ティアに精霊魔法の基礎を教わりながら、魔法の練習をした。そしてついに、合否当日になった。


 学園の入り口付近に受験番号が張り出されていていた。


(awt18201......)


 ドキドキしながら自分の番号を探して、ついに自分の番号を見つけた。そしてその下にはミシェルの番号も見つけた。


(やった!)


 ミシェルも合格してる! すぐにミシェルと待ち合わせしている正門に向かった。すると少し怒った雰囲気でミシェルが立っていた。


(どうしたんだろう?)


 合格して怒るようなことでもあったかな? 少し小走り気味に歩いて、ミシェルの名前を呼んだ。


「ミシェル!」


 ミシェルが俺に気付くと、先ほどとは一変して満面の笑みでこちらを見てきて言った。


「リアム! 合格おめでとう!」

「ミシェルもね!」


 すると少し怒りながら言ってきた。


「なんで私たちがFクラスなのよ!」

「そんなの書いてあった?」

「え? 見てないの? 受験番号の上にクラスも書いてあったじゃない!」

「あ、そうなんだ」


 自分の番号及びミシェルの番号を見つけのが嬉しすぎて、クラスなんて見ていなかった。それにしてもFクラスってもしかして。


「実技であんなにいい結果を出したのに一番下のクラスって言うのが納得いかない!」

「ま、まあ入学できただけよかったよ」

「そうだけどさ」


 やっぱり一番下のクラスなんだね。でも俺にとってはどうでもよかった。ロッドリレル魔法学園に入学できたら、資金援助をしてもらえる。だからこそ、クラスなんてあまり興味がなかった。逆に、合格できなかったらと考えるとゾッとしてしまった。


「じゃあクラスに行こう!」

「うん!」


 二人で雑談しながらクラスに向かった。クラスに入ると、俺たちのことを奇妙な目で見てきた。


(やっぱりな)


 魔力ゼロと適性が出た俺と、劣等種であるミシェルが入学できて、この場にいるのだからそんな目で見られてもしょうがないって言えばしょうがない。


 そして続々とクラスに合格した生徒が入ってきて、最後に担任と思われる教師が入ってきた。クラスに居る全員が教師を見たところで話し始めた。


「皆さん合格おめでとうございます。クラス担任のアリーシャと言います。今後よろしくお願いしますね」


 するとクラスメイトである男子が言った。


「なんでエルフが居るんですか! それも魔力ゼロの適性が出た奴もいます! 理由を教えてください!」

「簡単ですよ。試験に合格したからです。それよりもこれからあなた方は、ロッドリレル魔法学園の一生徒として自覚をもって行動してください」


 すると先程言ったクラスメイトはしぶしぶ座った。そして、アリーシャ先生に言われたことに対して、クラスメイト全員が頷いた。


「皆さん今から試験を受けてもらいます」

「え?」


 その言葉に全員が驚いた。


「この試験で、来月行われるクラス対抗模擬戦の人を決めますので、しっかり受けてくださいね」

「試験は何ですか?」

「入学試験とは違い、実技試験のみです。今から外に出るので、皆さんついてきてください」


 アリーシャ先生に言われた通り、外に出たところで試験内容を発表された。


「では今から私が指定した人同士で戦ってもらいます。まずは、リアムくんとワーシくん。お願いします」


 突然言われたことに驚いた。それに試験相手が先程アリーシャ先生に質問した生徒であった。するとバカにする目でこちらを向きながら言ってくる。


「雑魚のお前たちは、この学園に入学しちゃいけないんだよ! だから俺に負けたら退学しろ!」

「え?」

「雑魚は耳も悪いのかよ。これだから無能は。まあいい、実力の差を見せつけてやるよ」


 お互い一旦距離を取ったところで、試験開始の合図が聞こえた。



読んでいただきありがとうございました

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