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第一章 「壊れたキカイ」 10

「それじゃあ、気を付けてイッテらっしゃい」

 にやりと笑うオヤジに、俺は、「うるせー」と軽口を叩く。と、オヤジはこちらを指さし、

「無事、家に帰るまでが旅行よ」と念を押し、「じゃ~、よろしくねん♪」

 バイクをすっ飛ばして行った。

「結局、武蔵が一緒に行くのか?」

 気が付くと、ナナコが隣に立ち、オヤジを見送っていた。

「そう言えば、お前、『待機任務中』って言ってたな? もしかして……」

「むな志に聞いていた。旅行の任務があると」

 そういうのは教えてくれよと思いはすれど、こいつも富田とベクトルが違う無口キャラだし、無理な相談だったな。富田が純粋な語り下手、不器用な無口とすれば、ナナコは常識がずれているコミュニケーションが下手な無口だ。

「しかし、泊りがけの任務なんて、良かったのかよ? お前、どちらかと言うと、インドアなタイプじゃないのか?」

「わたしは、インド生まれではないわ」

「インドアだ。インドア。要するに、部屋にいる方が好きなんじゃないかってことだ」

「そんなことはないわ。色々、経験したいもの」

「そうか~?」と白い肌を見つめる。

「そうだ……」

 たしかについこの間まで、あまり外の世界に触れる機会もなかったんだ。色んなことに興味を持つのもうなずける。

「途中、海に寄ると言っていたぞ。海は初めてだ。海にはカメがいると聞いた。見るのが楽しみだ……」

 なら、もっと楽しそうな顔をしろよな。

「なんだ? お前でも楽しみなことなんてあるんだな」

 その言葉に、気持ち、頬を膨らませて、ジト目でこちらを見上げるナナコ。

 もしかして、怒ったか? 相変わらず無表情なので、何を考えているのか分からん……。しかし、カメって……。

「むな志はカメが好きらしい。だから、会ってみたい……。『カメはいいわよ? 固い甲羅。ぬめった皮膚。凛々しくそそり立つ、あの頭。あのフォルム。まさに男性自身そのものだわ』と言っていた。言葉の意味は分からないが、すごく興味をそそられる」

 あの野郎、またこいつに変なことを吹き込みやがって。

「それに、カメの恩返しも体験してみたいぞ。タイやヒラメの舞い踊りも見てみたいと思っていた。玉手箱の煙を浴びたら、わたしも少しは大人になれるだろうか?」

 今度は、分かりやすく目を輝かせる。

 子供かよ……。まあ、子供だけど……。

「いや、それはさすがに無理だろ。作り話、というか、昔話だろ」

「でも、『火のない所に煙は立たぬ』と言うわ。可能性はゼロではないはずだ」

 なんか、言葉の使い方を間違っている気もするが……。


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