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バイス・アームズ  作者: せりすん
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第六話:救いたい

左腕を失くしているなら、緊急用のエネルギー漏出防止バンドルをこのバイスにつけて

その後すぐに病院へと運ぶようにしないと。


少なくとも頭と胸のコアさえ無事なら最低限死んだりはしないけれど

エネルギーは止めどなく漏れ続けるからまともにうごけない。

そこを野生の生き物なんかに襲われでもしたら、一度目はエネルギー放出のショックで難を逃れたとしても

次は間違いなく…放っておく選択なんて絶対にない。


でも、なぜこんなところにバイスが?

野良のバイスなんてものはほぼ存在しないし

バイスを捨てるなんてことは法律で禁じられている。


もしバイス自身がひどい目に遭わされて逃げ出したなら

その持ち主は逮捕されて、バイスは別の生き方をすることになる。

例えば、人間のクローンボディに憑依しなおして人間としていきる、新たなアームズボディに憑依しなおす、とか。


このバイスはきっと誰かのところから、逃げてきたんだろうか。

そんな不穏な考えが浮かぶも、猛烈に急いだおかげか、家へとたどり着く


ガチャガチャ!バタン!

「ん、優理?こらっ!今何時だと思ってるの!連絡もしないで…」

「ごめん母さん!後でいくらでも怒られるから!ちょっとだけまって!!」

「えっ、あ、優理!?…まったくもう、いったいどうしたのかしら…」


ダッダッダッダッダッダバタン!!

母さんに怒られている時間すらもったいない、とにかく少しでも早く治してあげないと。

雑に靴を脱ぎ捨て、一気に二階の自分の部屋へとかけこんだ。


ガッチャ、ガサゴソ!ドタン!ガッ…

バサバサーッ!!


「えーっと、バイスの修理用道具は、えっとえっと、あったこれっ!!」


クローゼットの下にしまいこんであったバイス修理用の道具を引っ張り出し

そのセットの中にあるエネルギー漏出防止バンドルを取り出し

バイスの肩から腕、脇腹を通すように巻き付ける。


すると、赤い光は収まったがそれでもまだ大丈夫というわけじゃない。

急いで市内病院に連絡をするため、腕のガジェットから電話をかけようとした、そのとき


「まっ…て…おね……がい…」


微かな声が、バイスから聞こえた。

おそらくエネルギーの流出が止まったため、わずかに使えるようになった残りのエネルギーで喋っているのか。


「えっ…待ってって、そんな状態じゃあまり長く放っておくと危険だよ」

「い、いいの…わたし…とにかく…一晩、だけ、わたしを…このまま…おね、がい…」

「いや、でもエネルギーを補充するための精は家にない…僕、まだその、精通してなくて」


エネルギーを補充するすべがない今、病院でちゃんと修復治療を受けたあとエネルギーを補給するべきなんだ。


「だから早く、病院へいこう!」

「だめっ…!そんな、ところにいっても…結局わたし、壊されちゃう…」


何をいっているんだろう、病院へ行くと壊される?そんなことがあるか?


「おねがい…一晩だけ、わたしを…ここに、置いて…かくまって…」

そういうと、余計なエネルギー消費を押さえるためか、スリープモードへと入った。


バイスはエネルギーを自己生産することはできない。

だから外部からの精エネルギーを補給する必要があるはず。

それでも一晩だけ、誰かに知られずにいたい理由があるのか…


「これだけ頼まれたら、本人がそうしたいって言っているし…」


このまま放置していては腕の移植が難しくなるのは間違いない。

でもそれより不安なのは、病院にいくと壊されてしまうというこのバイスの一言。

そう本人がいうなら、きっと治療などできないんだろう。


…なら。

僕がやるしかない。


僕はバイスを人一倍好いている。

だからバイスが自分のもとへ来たとき、どんなことがあってもいいように

腕部、脚部の生体性素材機器を予備で組み上げられるようにしていた。


それは本来下級生の僕がやっていいようなことではない。

卒業後特別に免許をとって、初めてできるような生体性素材の取り扱い。

所持しているだけならまだしも、それを無許可でバイスにつけようものなら確実に逮捕されるだろう。


でも、このバイスも人に知られたくないなにかがある。

なら今さら、法律にビビったところで仕方がない!


覚悟を決め、棚の裏に隠しておいた鍵のついた箱を取り出そうとしたそのとき


コンコン


母さんだ…


「優理!いったいどうしたの?遅くに戻ってきたかとおもえば、手も洗わず自分の部屋に駆け込むなんて!」

「ごめん、母さん…でも今だけは、今だけは許してほしい」

「…優理。何かあったの?どうしたのか正直に話せば、私も怒らないから」

「その…明日は必ず話すから。今日だけは、お願い」

「……そう、じゃあ、お夜食には下に置いておくからね。優理、明日は必ず何があったか聞きますからね」

「ごめん、母さん。」


トッ、トッ、トッ…

母さんが階段を降りていく。

こんな僕のわがままを聞いてくれて本当にありがとう。

そう思いながら、僕は生体性素材機器の道具箱を取り出し、治療にとりかかった。


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