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バイス・アームズ  作者: せりすん
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第五話:お金は大事

「よし!俺たちの勝ちだ!」

「危なかったけど、なんとか勝てたわね」


「っぐ…てめー!覚えとけよな!」


上級生は捨て台詞をはきながら、東谷書店をあとにした。


「キャン吉、まさか本当に上級生に勝っちゃうなんて、すごいじゃんか」

「優理のパーツカスタムと、ウィトスの頑張りのお陰さ」

「たしかにそうかもしれないけど?パーツが2、私の頑張りが8ってところね!」

「おいおい…素直に誉めてるのに、そういうとこだぞ。でも、ありがとう。二人とも」


二人が勝ったので、パーツを買える。そんな喜びは確かにあるんだけど

それよりも、僕をバカにした人を友達がやっつけてくれた、そんなことの方が嬉しかったりする。


「優理くんたち、もめごとは大丈夫だったかい?」

「はい、バイス・アームズで勝った方がパーツを買うって条件で、無事勝ったので」

「そうかいそうかい、この辺の悪ガキに勝てるようなら、もういっぱしのコンビだね。それじゃあ優理くん、ほら。新パーツのステルスブレイドアームだよ」

「ありがとう!それで、いくらだったっけ…」

「4,980エインだよ、アームパーツにしては高いねぇ」


「あっ」

「どうした優理」

「その…買えると思ってなくて…それほどの持ち合わせが…」

「えーーーっ!!?何よバカゆーり!何のために私たちが勝ったのよ~!!」


完全に想定外だったんだ、そもそも新パーツがすぐに買えるってことが。

普通の、例えばベーシックレーザーアームみたいなものなら700エインで買えるし

キャン吉たちが奮発したというショックウェイブアームでも2,800エインだ。


まだ下級生でおこづかいの少ない僕は財布には2,000エインしか入っていなかった。

しかもお昼でスパイシーベーコンパスタサンドに350エイン払っちゃったし…


「ご、ごめん…一旦家に帰るから、お金もってすぐにまたくるよ、ごめん店長さん、それまでとっておいてくれますか?」

「はっはっは、まぁ仕方ないね、ずっととっておいてあげるから。明日にでもおいで」

「はは、優理やっちまったなぁ。ま、明日に買えるんなら今日は遅いし、そろそろ帰った方がいいだろう」

「うん…ごめん二人とも、店長さんも、すみませんでした」

「まぁ優理のためにパーツとっておいてくれるっていうし、仕方ないわね」

「大丈夫大丈夫。優理くんはお得意様だからね。それじゃ、また明日」


テロン♪テロン♪


「そんじゃ優理、また明日」

「バイバイ優理ー」

「うん、また明日ね」


夕日もかなり落ちて橙と濃紺が混ざりあうような空が見えるなか、僕は帰路につく。

東谷書店から家までは精動自転車で20分くらいでつくから

家につく頃にはもう暗くなっているだろうな…

そしたら母さんが怒ることは目に見えているから、僕は近道をすることにした。


雑木林を抜けると速いんだけど街頭がなくてちょっと危ない道。

とはいえガタガタの道でも精動自転車は地面からの衝撃を和らげてくれるから、わりとどんな道でも安全に走れる。


(でもやっぱり、薄気味悪いよな…)


前は手入れされていたけれど、もう最近は誰もてをつけてないから雑草も高く生え、かろうじて砂利をしいた道が見えているくらい。


でも怒られるよりはましだから、なんとかこの道を通り抜けて早く帰らなくては。

と、走っていると林の奥からすこし、何か赤い光がちかっと光ったように見えた。


(なんの光だ?こんな林でなにか光るなんてこと…あるか?)


今光を出しているのは精動自転車のランプと、微かな夕日と反対側からわずかに光る星程度のもの。


(ちょっと、ちょっと気になったから見るだけ、1分だけなら大丈夫、多分…)


その光はなんなのか、なぜだか気になり

精動自転車を降り、草を掻き分けてその赤く光った方へと向かった。

今でも少しチカチカと光っているようで、その光のもとへと近寄るのはたやすかった。


「うわっ!これ…バイスか!?」


光の発生源は、片腕がもげ、全身がボロボロに傷んでいるバイスだった。

そのバイスの回りだけ草が焦げ付き、身を守るためにエネルギーを無理に放出したんだろう、ということが予想できた。


「大丈夫か!?しっかりして!」

「…」


返事はない。しかし最低限のエネルギー循環活動をしていることを示す呼吸のような動きをしている上

このチカチカと点滅する赤い光。まだ生きていることから発せられる救援信号なのかもしれない。


「…野良バイス…でも、放っておけないな。」


そのバイスを鞄の中の衝撃の少なそうな場所にしまいこみ、急いで家へ帰る。

これはもう、母さんにしかられるどころの話じゃないだろうけど

でもそんなことより大事なことはある。


バイスだって一つの意思ある命、人間と何らかわりないはず。

それを見捨ててこのまま帰るなんてしたら一生後悔する。


「家まで持ってくれ…」


ギアを最大にあげ、精動サポートを全開にして家へと急いだ。









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