第三話:新パーツ!ステルスブレイドアーム
テロン♪テロン♪
「いらっしゃい、おお優理くんとキャン吉くんじゃないか」
「こんにちは、店長さん今日発売の新パーツ取り寄せをお願いしに来ました」
「はいはい、今日発売の新パーツ…ステルスブレイドアームね」
「なあ優理、その新パーツ、どんな兵装なんだ?」
「不可視の実弾兵装だよ、相手に発射タイミングを悟らせないから回避が難しいんだ」
「不可視…そいつはすごい技術だね」
「うん、ただデメリットもあって、光学機器を保護しつつ搭載しているから重量が大きく、実弾兵装だけどエネルギーも消費する。」
「なるほど、実弾のメリットをほぼ丸潰れにしちゃうのか…かわりに、尖った攻撃性能があると」
「あー、優理くん実はね、今回の新パーツ、絶対君が欲しがると思ってなんとか1つだけ入荷してたんだ」
「え、ほんとう?店長さん!ありがとう!」
喜んだのもつかの間、後から店に入ってきた上級生にこの話が聞こえたようで
「お、新パーツこんなところで売ってたのか!ラッキー!」
と詰め寄ってきた。
「えっ、あの、これは僕が今先に…」
「あん?なんだ?下級生じゃねーか。こういうのは先輩に譲るもんだぜ」
「ちょっと!こんなのに先輩後輩関係ないじゃない!」
ウィトスも反論するが、どうしようもない一言で片付けられる
「そんな文句あんなら、俺とバイス・アームズしろよ!」
「そ、それは…」
「なんだぁ?お前もしかしてバイス連れてねえのか?俺みたいにスリープ状態で運べば世話ねえのによ」
その上級生は鞄から意思のないバイスの体を取り出してぶらぶらと見せつけてきた
「あ!スリープ状態でのバイスを物のように扱って外に持ち出すのは禁止されてるじゃないか!」
「ケッ、こいつは今日7回のバイス・アームズをしてエネルギー残量が不足してるだけだ」
「ひ、ひどい…エネルギーパックはどうしたのさ」
「んなもん持ち歩かねぇなぁ、俺自身がだるくなるだけだっつの」
エネルギーパックとは、夜間自動吸精だけではエネルギーが足りないときのために
緊急用に作られる予備の精エネルギータンクで、外でもバイスにエネルギーを補充できるものだ。
だけどその分当然本人の精エネルギーは余分に消費されてしまう。
「いや、キャン吉、いいよ…僕元々今日買えなくても良かったから…」
「…だからって、バイスをこんな扱いする人に言われっぱなしでいいのか?」
「私、こういうのキライよ。ねぇ優理。わたしに力を貸しなさいよ!」
「あ?お前もしかしてバイス持ってねぇのか?ハーッハッハ!そりゃおもしれーや!バイスもねぇのにパーツを買いにきてんのか?ハッ、そらおかしいだろぉ」
「上級生だかなんだか知らないけど、俺は友達バカにするのは許せない。頼む優理、上級生相手ではエネルギー不足といえ勝てるかわからない。優理のパーツを貸してほしい。」
「キャン吉、ウィトス…」
上級生の言うとおりではある。僕はバイスを持ってないのに、パーツを買うのは普通に考えておかしい。
でも、バイスは相棒じゃないか。そんな扱いをする上級生だって、おかしい!
「ありがとう。君たち二人にお願いするよ!」
「優理、わかった。俺が代わりにあんたとバイス・アームズしよう!」
「あん?まぁどっちでもいいけどなぁ…じゃあ専用のスペースに行くぜ」
そういうと上級生は先に専用のスペースへ向かった。
その間に僕は鞄からパーツボックスを取り出し、ウィトスにあう装備を選ぶ。
今日パンの争奪戦に勝ったメイシーはファンティール型で、性能の10段階評価では
地上機動:1、空中制御:7、防御:8、対衝撃:8、といったところ。
スラスターはフライ型で空中での追加機動はできないけど、滞空時間がすごい。
ウィトスはランスプライト型で、性能は地上機動:10、空中制御:5、防御:1、対衝撃:1だ。
スラスターはバースト型Ⅱ…つまり、空中で高速方向転換が二回まで行うことができる。
エネルギー効率がよくて、ブーストのチャージやエネルギー兵装のリロードが早いのも特徴。
地上戦を強みにしつつ、いざとなれば空中でも戦えるカスタムなら…
ヘッドギアはハロウギア
これは高速での移動中でも相手への銃口補正を維持してくれる機能がついている。
右腕にはライトフリックアーム
これは一旦右側真横に弾を撃ち出し、その後90度曲がって相手へ飛んでいくエネルギー兵装。
左腕にはショックウェイブアーム
壁や地面を通り抜けて衝撃を相手に伝えることができるエネルギー兵装。
腰部パーツは、マロースマイン
一度に二つまでステージに設置できて、相手が近寄ると爆発する実弾兵装。敵を一時的に鈍らせる効果もある。一試合に使える個数は12個
脚部パーツはジャイロホイールレッグス
急旋回は難しくなって加速も遅くなるけど、最高速度はどの脚部パーツよりも速い。
「よし、このパーツの組み合わせなら、東谷書店のステージでは有利に戦えるはず。頑張ってね、キャン吉。ウィトス」
「まかせて!今日の授業の鬱憤をはらすわよ!」
「絶対に勝つよ、そしたらステルスブレイドアームもためさせてくれよな」
「おいっ!まだかよ!それともやっぱりビビったのかぁ!?」
上級生はしびれを切らしてこちらを煽ってくる。
それに対して僕たちはバイス・アームズのスペースへ向かった。
「おいおい、あくまで上級生の俺とやりあう気かよ。後悔させてやるぜ」
そして上級生はエネルギー不足のバイスを無理矢理起動させ、ステージへ置いた。
エネルギー不足とはいえ上級生の持つエネルギー量はやはり元がすごく、ウィトスと比べて同じくらいだ。
上級生は僕たち下級生の4000ではなく、6000のエネルギーを割り振ることができるから
普段のスペック同士で戦ったなら、1.5倍のスペック差に圧倒されていただろう。
「いくら上級生だからって許せないことはある!」
「生意気言いやがる!その自信ぶち折ってやるぜ!!」
「「バイス!アームズ!」」