第二話:メロンパン争奪バトル
メイシーは試合開始と同時に高く飛び上がった。
そして飛び上がると同時にスタッカートバブルアームを発射する。
ポコポコポコポコポコ!
ブワワワと飛散する泡状の弾は収束しながら相手へと向かっていくが
中距離から余裕をもって見ていたため少し後ろへ走り引き付けつつ、飛んでくることで弾を回避された。
「いまだパーク!スティングレイアーム!」
ヴィシッ!ヴィシッ!
ボフッ
空中でゆっくりと落ちてきているレイシーに向け、右腕から高速の細いレーザーを発射した。
あまりの弾速に回避できないものと思われたが、バイワイヤー・ブースターが反応し
メイシーがクルンッと回転してそれを回避した。
「なっ、あのぽっちゃりボディーでスティングレイを回避した!?」
「そんな、ありえない、どうやってそんな回避できるって言うのよ!」
驚くのはわかる。スティングレイの弾速は10段階評価中、8の超高速弾だ。
しかし弱点はある。ホーミング性能が低く弾速が早いタイプの兵装。
それは銃口の向きで発射方向さえ認識していればその方向にしか飛ばないといっていい。
メイシー本人は多分気づいていないが、バイワイヤー・ブースターに相手の銃口を確認する機能をついており、
発射体制になると同時に、左右どちらかに強制的にブーストをふかせる。
このタイプ相手であれば利点となるが、猛烈な弱点にもなりうる諸刃の剣だ。
「な、なんですか!さっきからぁ私のことぽっちゃりぽっちゃりって!もう、ゆるしませんよ!」
相手はこちらに向かってジャンプしてきているため、そこへ再度スタッカートバブルアームを撃ち込む。
こうなるとパークは空中機動をする他なく、無理にブーストをし、右へと回避した。
しかし、ここで後ろに避けなかったのは失敗だっただろう。
「いまだメイシー、ハーフムーンボム!」
「えいやっ!」
泡を左右に避けたところでまた泡がホーミングしてくるため、結局さらにブーストで回避せざるを得なくなる。
ここにハーフムーンボムを撃ち込まれた場合、なすすべがないのだ。
「ぐっ、避けきれない…シールド展開!」
「キャァァ!」
ズドグォォ!!
二度も空中ブーストを吹かせていたため、エネルギー残量が不足している。
その状態でシールドを展開してもあまりダメージを軽減できないし、さらに言えばハーフムーンボムは実弾兵装。
エネルギーシールドでは爆風を防ぐことはできても、実弾が直撃
するダメージまでは軽減できない。
パークにハーフムーンボムが直撃し、さらに追尾してくる泡が襲いかかった。
「あぶぶっ!」
「ああっ、パーク!しまった…今回は高速高火力タイプのカスタムだから耐久がない!」
なんと、このボムとアームの一撃で試合は決着してしまった。
「盛田&メイシー!win!」
腕のガジェットからそう声が聞こえた。
それと同時に力場は解放され、パークはふらふらとしながら相手のもとへ戻った。
「やったなぁメイシー!ゴールデンメロンパンゲットだぁ」
「わぁい、メロンパン~メロンパン~♪」
「あーん、食べたかったわ、ゴールデンメロンパン…」
「くぅーー…悔しいけど負けた…そんなパーツ一体どうやったら手に入れられるんだ?」
「そら秘密だぁ」
そうして盛田は無事ゴールデンメロンパンをゲットしたのだった。
「いやー優理ありがとよぉ、これ約束のスペェシーベェコンパスタサンド」
「無事勝ててよかったよ、相手のカスタムとの相性がよかったなね。」
「優理さん、わたしさっき空で飛んでたら、ぐるんっ!てなったんです、不思議です~」
「それが腰部パーツの機能だったんだよ。まぁ仮に相手のスティングレイが当たっていたとしても、ピークギアと重量安定のおかげで硬直しづらいから、反撃の泡を撃てたと思うよ」
「???」
メイシーは理由を聞いてもよくわかってないようで、首をかしげながらメロンパンをもぐもぐしている。
「ははは、メイシーにはちとむずかしなぁ」
「盛田は理解してるのか?」
「してねぇ」
そんな下らない話で笑いあいながら昼食を済ませて、午後授業も
保健室でサボった。
そして放課後、キャン吉と約束していたパーツの買い物に向かうため
学校から少しはなれた、いつもキャン吉や盛田と遊んでいる公園で待つことにした。
公園でも、回りのみんなはバイス・アームズをしている。
ベンチで座っているのなんか僕くらいのものだ。
バイス・アームズで発散されるエネルギーは力場を通して地区毎のタンクに貯蔵される。
そしてそのエネルギーが、僕たちの生活を支えている。
つまりバイス・アームズをすること自体が税を払っているようなもので
それができていない僕は、回りのみんなと比べて何の役にも立てていない。
回りのみんなが楽しそうにバイスとふれあい、戦っている姿を見ると
こんな考えがうかんでしまって、それから逃げたくなる。
だから僕は保健室登校をしているし、
バイスが来たときのために、たくさんの準備をしている。
どんなバイスが僕のもとに来たって、最善のカスタマイズをして
たくさん勝って、バカにしていた人たちをみんな見返してやりたい。
「優理おまたせ」
「はぁ、今日も退屈な授業ばかりだったわ~」
そんなことを考えていると、キャン吉とウィトスがやって来た。
「おつかれさま、じゃあ東谷書店に行こうか」
東谷書店は本屋だけど、バイス・アームズ用のスペースや
中古の兵装を売っていたりして、僕たちにはとても便利なお店。
(Boo○offとか、Har○offみたいなものって誰かいってたけど、もう詳しくは記憶にないな)
店長の東谷さんは、とっても優しい人で本の立ち読みもさせてくれるし、パーツも試させてくれる。
「でも優理、今日は新発売のパーツが欲しいっていってたよな?東谷書店に新パーツってあるかなぁ?」
「うん、別に今日ほしい訳じゃないから、確実に手に入れるために取り寄せをお願いするんだ。」
「なるほどねえ、そのパーツ愛には感服するよ」
「ねぇマスター、私も新パーツほしいー!」
「この前ショックウェイブアーム奮発して買ったじゃないか…」
「わかってるもん、言ってみただけ…」
いつも元気なウィトスもちょっと元気がなさそう
しかもショックウェイブアームって、衝撃波を波状に打ち出して
壁や地面を通り抜ける攻撃が可能になる強力なパーツなはず…
それを買ったばかりで新しいなにかを欲しがるなんて
「なにかあったのか?」
「いや、それが今日のバイストレーニングでさ、クラスの鐘尾が未発売のパーツを使ってて」
「未発売の?それって大丈夫だったのか?」
「あぁ、あいつの家、インテグラルマーシャル社の偉い人がいるから…」
「なるほど、試用許可を得て、実地試験を学校で行う…」
「そういう体で、あまりに強いパーツでみんなを圧倒してたのよ!ずるいじゃない!」
「まぁ、金持ち相手にはどうしようもないよ。奮発して買ったショックウェイブアームも、まるで通じなかった。」
「なんか、やだな…そういうの」
そういえば鐘尾は僕のことをバイスも持たない虫みたいな奴!
といってくるようなやつで、僕も嫌いなんだ、正直。
「そうだろ、だからせめて中古でもあいつの未発売パーツに善戦できるようなものがないか、探したいんだ。」
「なるほど、それじゃあ一緒に、相性がのいいパーツを探そう!」
そんな話をしながら、東谷書店にたどり着いた。