15・エピローグ
それからの話。
あの後、俺達はベンノを連れて、街のギルドに戻った。
えっ? どうしてベンノが生きてるんだって?
そうなのだ。
当初ヤツは死んだように思われていたが、魂を魔族に吸い取られ養分にされていただけで生きていたのだ。
俺が魔族の魂を凍らせることによって、ベンノは生きてる状態で摘出された。
とはいえ、魔力をほとんど吸収されカラカラの状態だがな。
後数分でも遅れていれば……いくら俺でもベンノを救出することが出来なかっただろう。
「どうしてそんなヤツ助けるの!」
ギルドまで戻る道中、リネットは怒りの声を上げていた。
当然だ。
いくら失敗したとはいえ、ベンノは魔族を召喚した。
たまたま俺がいたからいいものの、本来なら今頃世界は混乱に陥っていただろう。
リネットの言うことにも一理ある。
しかし。
「リネット。こいつは魔族を召喚する魔法なんか発動しやがった。こんな魔法、普通なら存在しないんだよ」
「どういうこと?」
「他にも余罪があると考えられるわけだ。それらを全て暴き、適切な罪を受ける。その方が俺は大事だと思うし、ベンノも苦しむと思うわけだ」
あのままベンノが魔族に殺されたのではあっては、真実も究明出来ない。
それならちゃんとギルドに連れて行って、罪を受けてもらわなければならない。
俺は神じゃない。独断で人を裁くことは出来ない。
そこは勘違いしてはいけない。
「そんなことまで考えていたなんて……さすがエリクだね。わたし、そこまで考えていなかったよ」
リネットはとろけた瞳で俺を見ていたが、なんとか許してもらえたみたいだ。
よかった。
ベンノをギルドに連れて行くと、やがて彼は意識を取り戻した。
『エ、エリクが憎かったから……』
今回の犯行に及んだ理由を、ベンノはそう口にした。
どうやらモーリュック家で俺にやられたことが気に障ったらしい。
それだけでこんなことをやるとは……しかも完全な逆恨みだし。
さらにというかやはりベンノには余罪があった。
なんとあの森に凶悪な魔物を誘き寄せる魔法陣を書いたのは——彼だというのだ。
『魔法の実験をしてみたかったから』
その凶行に対しても、ベンノはそんな自分勝手なことを述べた。
呆れたヤツだ。
ベンノは前々から魔族を召喚し、自分の思うがままに操りたかったらしい。
だが、そんな魔法は元々存在しない。
ならば作ってみよう……そう考え、何度か実験を繰り返していたということだ。
実験は難航していたみたいだが、なんとか形になることまできた。
もう少し実験を施し、魔法を完成させたかったが……その前に俺への憎悪が爆発し、堪えきれなくなったという。
それが今回の事件の顛末だ。
ベンノは結局王都に送還され、そこできついきつい強制労働をさせられるらしい。
噂では常人では三日で死んでしまうということであったが……ベンノは魔導騎士団にいたほどの人物だ。そうそう簡単には死なないだろう。
「当たり前だよねっ! だってエリクにあんな酷いことをやったんだから!」
そうリネットはプンプン怒っていたのであった。
◆ ◆
あれからしばらく経って、
「エリクー! 今日もクエスト頑張ろー!」
リネットが片手を上げて、気合の一声を放った。
「うむ、そうだな」
「行こう行こーう!」
むにゅ。
リネットが俺の腕を抱いてくる。
だ、だから止めろって!
今だに彼女の「むにゅ」は慣れない俺であった。
「エリク」
「なんだ?」
リネットに名を呼ばれたので、心臓がバクバクしているのを隠しつつ、俺は顔を向けた。
「これからもわたしと冒険してくれるかな?」
彼女が首をかしげる。
それは不安げな表情であった。
しかし——愚問だな。
「当たり前だ。今はお前以外と組む気はない」
そう返す。
一瞬カーティスの顔も思い浮かんできたが……あいつになんと言われようと、俺達のパーティーに加えるつもりはない。
リネットは花が咲いたような笑顔になり、
「……うんっ! 変なこと聞いてごめんね。エリク大好き!」
むにゅむにゅ。
「むにゅ」が二重だと!?
胸の柔らかい感触に、ついつい口元が緩んでしまいそうになった。
「と、とにかくギルドへ急ぐぞ」
「うん!」
そして俺達は今日も冒険する。
ちょっと短いですが、これにて完結です。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。




