13・再戦
「美味しかったな……料理」
アドルフに振る舞われた料理はそれはそれは絶品であった。
肉料理は一噛みするだけで肉汁が飛び出す。デザートは甘くて頬が溶けてしまいそうだった。
「本当だねー。でもエリク、本当によかったの?」
「なにがだ?」
帰りの馬車の中で。
リネットにそう問いかけられた。
「いや……本当にモーリュック家の専属魔法使いにならなくてもよかったのかなって」
「言っただろ。俺まだ冒険者としてやっていきたいって」
まだまだ冒険者として成り上がっていきたい。
限界突破した俺の氷魔法ならそれが可能だと思うから、アドルフの誘いを断ったのだ。
「うん……っ! ありがと! これからも頑張っていこうねー」
むぎゅ。
リネットが抱きついてくる。
「お、おい。だから止めろって!」
そんなことをされたら、どう反応していいか分からないではないか。
彼女に触れられると、胸の鼓動が早くなりすぎて今にも爆発してしまいそうだ。
「仲がいいんだな、君達は」
それを少し離れたところから、羨ましそうにカーティスが見ていた。
「それでどうだろう。僕をパーティーに入れてくれる、という話をもう少し考えてみては……」
「絶対に嫌だ」
何度言われようと、これも曲げるつもりはない。
さて。
今日は街に着いたら宿に直行させてもらうが、また明日から頑張ろう。
◆ ◆
翌日。
俺達は依頼を受けて、街近くの森までやってきた。
今回の依頼も森にいる凶悪な魔物を討伐することである。
「リネット、そっちを頼む!」
「うん!」
俺が氷魔法を放ち相手の動きを止める。
そしてその間にリネットがトドメを刺す。
リネットとの息も合うようになってきて、さらに戦闘をスムーズに進められた。
「リネット、疲れてないか?」
「全然!」
リネットが力拳を見せる。
彼女は体力もある。俺も魔力を温存しながら戦っているので、まだ問題ないだろう。
「じゃあもう少し奥まで進んでみようか」
「うん」
森の奥へ奥へ進んでいく。
前回、例の魔法陣を無効化したおかげか、そこまで強い魔物は出てこなかった。
低ランクのスライムやウルフといったくらいだ。
そのことに少し物足りなさを感じるが……まあ無用な危険などなくても十分だろう。
それに戦いに余裕が出てきたことによって、リネットとの連携を試すことも出来るしな。
「スライム!」
リネットが叫ぶ。
そうこうしている間に、前方にスライムが姿を現したのだ。
俺達はすぐさま戦闘態勢を取る。
だが……。
「一匹……二匹……わっ、十匹以上も!」
スライムは一匹だけではなく、次から次へと現れて俺達を囲んだのだった。
「丁度いい」
しかしそれを見ても、俺は慌てなかった。
そりゃそうだ。
ボイスベアとかベヒモスに比べたら、スライムは低ランクのさらに低ランク。
それが十匹以上で徒党を組んで襲いかかってきても……動揺する理由はなかった。
「どうしてそんなに冷静なの!?」
「リネットとなら、これくらい簡単に狩れると思うからな」
「え……」
動きが止まるリネット。
「信頼しているぞ。さっさと狩るぞ」
「う、うん……! そうだね。足を引っ張らないように頑張るよ!」
元気よくリネットは返事をした。
−10000℃。
氷魔法を発動し、周囲のスライムを一気に凍らせる。
「今だ、リネット」
「うん!」
それを見て、リネットはスライムに剣を振るっていった。
スライムを全て狩るにはそこまで時間はかからなかった。
「やったね!」
全滅したスライムを前に、リネットは飛び跳ねて喜んだ。
「最初に思っていたよりも、随分早く倒せたな」
それもれこれもリネットとの連携が上手くいきはじめたからだ。
−100000000℃を使うならまだしも……俺だけではこんなに早く倒せなかっただろう。
「エリク、ありがとう!」
「ん……」
興奮しているのか、リネットが俺に抱きついてきた。
それはいいんだがな。
何度も言うようであるが、主に胸とか胸とか……柔らかいところが体に当たってしまっているのだ。
いい加減慣れなければ!
そう思うが、こればっかりは仕方がない。
「じゃ、じゃあスライムの核でも拾ってさっさと帰るか……ん?」
踵を返そうとすると、人の気配を感じた。
身構えていると、一人の男がゆっくりと俺達に歩み寄ってきたのだ。
「お前は……ベンノだったか?」
忘れもしない。
彼はモーリュック家で出会った専属魔法使いとやらだ。
問題は大して強くなかったことだが……どうして彼がここに?
出会った時より随分雰囲気が違うようだが。
「……い」
「は?」
「憎い」
様子を見ていると、ベンノが暗い顔をしてそう一言だけ呟いた。
「一体なにを……」
「お前を——」
俺が問いかけようとすると、ベンノは手をかざしこう続けた。
「——殺す!」
この魔力は……召喚魔法か?
その瞬間。
彼を中心に魔力が奔流し、とあるものが召喚されたのだ。
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