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チート・クリミナルズ  作者: 犬塚 惇平
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こどもドラゴン Last

怪人はえげつないが、人間もかねがねえげつない世界

燃え盛る森の中を、俺は一人走っていた。

(クソ!あのガキ!また突っ走りやがって!)

竜造寺巴の護衛を任せていたアイツの姿が見えないことに気づいたのは、ほんの一時間前の話だ。

竜造寺巴によれば、竜造寺静が去り際にアイツに果たしあいを申し込んでいたという……間違いなく、それに乗ったんだろう。

(少なくとも、子供の説得でどうにかなる相手じゃない!)

それは、長年刑事としてヤバい『人間』を腐るほど見てきた俺の出した結論だった。


そして今、竜造寺静の指定した戦いの場は、突然の爆発のあと、案の定、炎上している。

消防が到着するまでにはまだしばらくかかる。多少の炎はものともしない俺が行くしか無かった。

(アイツなら、死んではいないはずだ!)

普通に考えれば、どう考えても助からないだろうが、アイツのしぶとさは、知っている。

かつて、1年以上も警察から逃げながら結社の怪人を殺して回っていたクソガキだ。この程度で死ぬがはずがない。

そう信じて俺は、決戦の場へと踏み込む。

「おい!大丈夫か!? 返事をしろ!」

開けている、を通り越してクレーターが出来た広場に飛び込んだ俺は、大声を張り上げる。

それに反応して、クレーター付近の土を跳ねのけるようにして、金色になったアイツが姿を見せた。

全身傷だらけで、それが既に完治している。あの爆発に巻き込まれたにも拘わらず、ほぼダメージは無さそうだ。

「無事だったか!ったく、勝手に突っ走るんじゃねえ!このクソガキが!」

心配させた罰として、一発頭をぶん殴ってやる。人間だったら頭蓋骨が割れるくらい重いのを一発。

「痛え!?」

「うるせえ! いつも言ってるだろ! 一人で行くな、もっと人を頼れと! お前はまだガキなんだぞ!」

そのまま嫌らしく、偉そうに説教を垂れてやる。コイツを見てると、どうも心がささくれちまう。


本来、こういう荒事は、大人の仕事なのだから。


結社の怪人は、人間が戦うには強すぎる。

警察や軍隊が数の力で持って結社の怪人を撃破した記録だって一応あるにはあるが、どれもたった1人を倒すために大量の死傷者を出している。

しかもそれは、結社の連中の基準では『B級』と言われる弱い連中で、そいつらより遥かに強いA級怪人を殺せた『人間』は今のところ目の前のコイツしかいない。

……だから、A級怪人とだって互角以上に渡り合える人類の希望、最強のヒーローだとか抜かして、二十どころか十八にもならないガキを戦いに駆り出すハメになっている。


そんな、どんな大人でも出来ないすごいことをやっている小僧は今、落ち込んでいる。

周囲には、他の怪人の姿は無し……つまりは、そういうことなんだろう。

「助けられ、無かった……助けられなかったよ、おやっさん……」

「諦めろ。なんでもかんでも出来ると思うのは、ガキの特権だけどな、出来ないことのが世の中には多い」

どうやら竜造寺静の『引き抜き』は失敗したらしい。政府の連中が喉から手が出るほど欲しがってる結社の怪人に生身で対抗できる『3人目』はお預けというわけだ。

その事実に、俺は苦いものと、ほんの少しの少しの安堵を感じていた。

女の子を戦いの場や、頭のネジが飛んじまってる連中の実験に付き合わせるのは、気が引ける。

「それで、竜造寺静……いや、乙姫はどうなった?」

俺は念のため確認する。相手はコイツをも一度は圧倒した強さの化け物だ。間違いなく、A級怪人だろう。

放置すれば、普通の人間にとってどれだけ脅威になるか分かったもんじゃない。

……仲間として、共に戦うという道が選べないなら、あと腐れなく吹っ飛んでもらった方が助かる。

人間としては反吐が出そうになるが、人間をゴミか何かとしか思っておらず、法律と常識って奴を守る気もない結社の怪人がどれだけ危険な存在か見てきた俺には否定できない考えだった。

「……逃げられた……」

「逃げた!?」

だから、逃げられたというのはとびっきりの凶報だった。

伝手を辿って得た情報によれば、乙姫らしき怪人については、いくつかの戦闘で目撃されている。

その結果を見るに、恐らくコイツ以外に乙姫を倒せる奴は人間にはいない。警察どころか軍隊が出て来ても蹂躙されるレベルなのだ。

そんな凶悪な怪人がそのまま今後も暴れまわるというのは、悪夢だ。

「逃げられないように、脚を吹っ飛ばしたんだけど、他の怪人がきて、竜造寺さんを連れてった」

俺の言葉に、責任を感じてしまったのか、ぼそぼそと何が起きたかを言ってくる。

どうやら、他に怪人が居て、結託して乙姫を『救出』したらしい。

「……そうか。どんな怪人だ?」

「黒い、サージェントウルフ……」

「……アイツか」

そして、その怪人、サージェントウルフには俺も心当たりがあった。

俺が昨日戦った奴と恐らく同じ奴だろう。

恐ろしい相手だった。俺の能力を完全に把握して的確に攻めかかり、仲間と共にまんまと逃げきられたのだ。

普通のサージェントウルフとは違う、何か特別な強化でもされてる奴だと思う。

この身体になる前、コイツに付き合って生身で怪人とドンパチしてきたときに見た、普通のサージェントウルフとは動きも判断力もまるで別物だった。

クソっ!今回はどうにも勝った気がしねえ。それどころか、負けた気すらする。

それは、目の前の小僧も同じ気持ちなんだろう。しばらくの間、燃え盛る炎の音をBGMにした、気まずい沈黙に包まれる。


「なあ、おやっさん……なんで竜造寺さんは、あんなに人間を憎んでいるんだろう……元は、人間だったのに……」

そんな沈黙を破るように俺に向けられたのは……ひどく答えにくい質問だった。

「……人間、そういうこともあるさ」

今までに色々と伝手を辿ってわかったことをコイツに話すかどうか少し考えて、俺は黙っていることにした。

子供に話すようなことじゃあ、無い。


竜造寺静。本人曰くリュウグウゴゼン1号、乙姫は今から一年ほど前に行方不明になった、竜造寺巴の双子の妹だ。

街で不良集団と揉めていたのを目撃されたのを最後に行方が分からなくなっていた。

せめて身代金の要求でもあれば事件の進展もあったんだろうが、行方不明になった後の足取りは昨日まで謎だった。


一年前、学園の方はスキャンダルを嫌がり、竜造寺家の方も傷物にされたであろう『家の恥』をいないものと扱った。

姉の巴は半狂乱になって妹を探そうとしたらしいが、常に監視の目があり、学院から出るのすら一苦労の一介の女子高生にどうこう出来るはずもなく、結局見つからなかった。

手がかりらしい手がかりはすでに消えていて、今更探せと言われても困る案件だが、近隣の行方不明事件を調べていくうちに、一つ気になる事件を見つけた。


この街の隣の県で起きた、集団失踪事件だ。十数人の不良グループが、ある日突然行方不明になったという。

親や周囲からはとうに見放され、恐喝や集団暴行、婦女暴行事件を起こした危険人物の集まり。

彼らが『消えていた』のを、地元の大学生が発見した。

……心霊スポットとして有名だったという連中のたまり場の廃旅館に迷い込んだ際、複数の改造車やバイク、鉄パイプやナイフ、スタンガンと言った凶器、フロントガラスが割れたワゴン車が放置されているのを見つけて、何事かと思って、警察に通報してきたのだ。

車やバイク、現場に残されていた遺留品から、警察は十数人の不良グループが忽然と行方不明になったという結論を出した。

現場には、連中のやらかした犯罪の証拠が腐るほど残されていたが、いまだに誰一人見つかっていない。

監禁場所と思しき奥の部屋には、監禁され、暴行を受けた女性のものらしき血痕のほかに、無理やり抜いたとおぼしき爪や歯が落ちてたという。

地元では不良グループは殺した女の怨霊に祟り殺されたともっぱらの評判らしい。


恐らくだが、そこに竜造寺静が居たのだろうと、俺は睨んでいる。そして、不良グループごと結社に捕まり、怪人となって生き延びていた。

……凶悪な犯罪に巻き込まれて壊れてしまった被害者を、俺は何人も見てきた。

乙姫を名乗る怪人が、かつての品行方正で大人しくて誰にでも優しいお嬢様だったという竜造寺静とは別物になっている可能性は、高い。


(人間が見捨てた人間を、怪人が救ったなんて、冗談にもならねえ)


ただでさえ、胸糞悪い話が続いている。というか、つい先ほども、そんな話を聞かされたばかりだ。


改造人間1号、つまりは小僧の血は、人間を怪人に変えられる。俺はそのお陰で命拾いした。

人間をやめて怪人、いやお偉いさんに言わせれば『改造人間2号』に変異することになったが。

そのことが、政府のお偉いさんにはひどく重要なことだったらしい。

人間と同等の知性を持ちながらも人間の限界を遥かに越える怪人。それも結社の支配下に無く、人間に好意的な怪人を人為的に作れる可能性が出てきた。

あの、何を考えているか分からない結社に対等に対抗できるようになり、何より人間より遥かに強靭な怪人にはいくらでも『使い道』がある。

例の事件で俺が怪人化した後、俺とアイツについて再調査が行われた。

特に俺を助けた時に初めて変身できるようになった金色の形態については詳しく調べて、改造人間製造計画が行われることなった。

金色の姿になったアイツから血液を拝借して、実験動物に注入実験が行われたのだ。


そして分かったことは、俺が上手い事怪人に『なれた』のは奇跡のようなものだったらしいということだ。


アイツの血液中に流れる人間を怪人に変えるウィルスのようなものは人間以外に注射すると体内で増殖して怪物に変える……

正確には、人間でも上手く行かないと怪物になる可能性が高い。


犬や猿、モルモットなど様々な動物に金色になったアイツの血液を注射したら全部が訳の分からない怪物に変異して暴走し檻を破壊、研究員3人が食い殺されて、俺が全部殺害する羽目になったという結果から考えると、狂気の沙汰としか思えない。

そのときの結果から、恐らくは人間だけがアイツの血で改造人間へと変異しうると結論が出た。

しかも、サージェントウルフ以外の怪人の出現数から考えるに、サージェントウルフ以外の怪人は実験動物と同じように失敗して変異暴走する可能性が高いだろうという推測もある。


だから、改造人間3号計画は凍結……そう思ってたが、怪人と言う夢を目の前に吊るされた政府の出した結論は、斜め上だった。

現代医学ではすでに治る見込みのない、そう遠くない未来に来る死を待つしかない重病人を集め、同意を得て改造人間1号の血液移植を行うことが決まったとか言い出しやがった。

研究所がどこにあるのかとかも不明だし、内実は分からないが既に何度か失敗して……そのうち成功する奴が出るんだろう。

失敗したやつがどうなったかなんて、考えたくもない。

だが、それでも人間はやり遂げるだろう。結社を、人類を越える力を持つ怪人と戦うために。


怪人と、結社と戦える人間はどう考えても二人じゃ足りないという、当たり前の事実を変えるために。

……政府からは、不適切な情報をアイツに与えるな。そう言われている。

アイツは、死にかけた人間を救うために動いたのだし、今だって死にかけた人間を救う夢の治療薬になりうると言われて自分の血を定期的に提供している。その結果何倍もの人間が化け物と化している。なんてことは一切教えられずに。


なんとも、胸糞悪くなる話だった。



私は、平穏が欲しかった。


生活には困らないくらいのお金と、好きなことを好きなだけ出来るくらいの暇と時間。

そして冒されることのない縄張りに、代わり映えしないけれど大きな事件も無い、安定した日常。

それさえあれば怪人による人間社会の支配とか世界征服なんてどうでもよかった。

もしかしたら私は、怪人としては失格なのかもしれないが『偉大なる大首領様』は何も言わないのだから、問題ない。


大首領様に忠誠を誓い、それを裏切らなければ『結社』に対しては多少『裏切り』と言えるような行為をしても問題ないと気づいたのは、私が怪人として何年か生きた後だった。


きっかけは些細なことだ。怪人が、気に入らない他の怪人を作戦にかこつけて殺したのを見た。結社ではよくあること。

……だが結社と言う組織全体で見れば、それは無駄に戦力と作戦の成功率を下げる、裏切りと言ってもいい行為だ。

そして、それを防ぐのは実に容易なことでもある。怪人は大首領様に逆らえない。大首領様がただ一言『やめろ』と命令さえすれば、絶対に従うだろう。

……大首領様は、むしろ怪人がいがみ合い、殺しあうのを望んでいるのではないかと気づいた時、私は自分の生きる道を見出した。

大首領様が望むような、殺し合いやいがみ合いを用意しよう。そしてその争いから利益を得て、自分は平穏を手に入れるのだ。

そう気づいて辺りを見渡せば、結社には同じような考えの外道がいくらでもいた。

そいつらは強かったり弱かったりしたが、恐ろしく狡猾で、下衆で、残忍だった。

そいつらは上手く立ち回り、危険を他のものに押し付け、結社の更に深い闇の中で蠢いていた。


そんな文字通りの魑魅魍魎があふれる世界で、私は生きている。

例え戦闘能力の低いB級怪人であっても欲しいものは全部手に入れるし、要らないものは排除する。

そして、私のものを奪おうとする輩は決して許さない。強いだけのガキなど、全自動処刑装置に爆発四散させればいいのだ。



「……ったく、取り戻すのにどれだけ苦労したと思ってんだか」

食べて、飲んで、騒いで、いたした後、疲れて眠ってしまった光一郎の頭を撫でながら、私は久方ぶりの平穏を満喫していた。


ここまで来るのに、3か月かかった。まあ相手が暴君閣下のお気に入りのガキだったので、仕方がないと思おう。


まあ、光一郎から語られる3か月の間ずっと生き延びるために『頼れる大人の男』を演じきったという話はなかなか面白かった。

目指したのは『オカマじゃないジャック・ローズ』だったらしい。

やりすぎだから死ぬまで狙われると爆笑してやったらちょっと不満そうだったが。

情報を流したことで全自動処刑装置の信頼も得られた。これで今後は人間連中も、もうちょっと私の思い通りに動かせるはずだ。

そしてなにより、奪われた私の大切なものを取り戻せた。勝利、と言ってもいい。

あとやらなくてはいけないのは『最後の仕上げ』だ。


クラゲは海をさ迷い、漂う生き物。近寄らなければ何もしない……けれど、縄張りを荒らすものには容赦しない。毒を叩き込んで海の底に沈めるのだ。


それはたとえA級怪人が相手でもやり遂げなければならない。

強いものにこびへつらうだけの生き方をしていては、結社では長生きできない。たとえ弱くても、隙を見て食い破れないとならない。

それが弱肉強食の原理で動く怪人の世界で、私が学んだことだった。

「あとはアイツらがちゃんと仕留めてくれれば良いんだけど」

予定ではあのガキは全自動処刑装置の手で爆発四散していたはずだった。

だが、間一髪のところで光一郎が助け出したらしい。本当に光一郎は良くも悪くも番狂わせばかりする。

光一郎がずっとジャック・ローズを助けられなかったことを悔やんでいたのは知っていたけど、あの全自動処刑装置と真っ向から対峙して救出しようなんて、正気とは思えない。一年前には一緒に震えていたくせに。


お陰で余計な手間をかける必要が出てきてしまった。


乙姫は、竜の子からは嫌われていた。あの暴君閣下のお気に入りだけれど新参者で、若い小娘で……何より恐ろしい勢いで強くなったから。

何年も閣下の下で鍛え抜かれたA級怪人様のエリート部隊、竜の子。彼らはプライドの塊だ。

才能も経験もずば抜けていて結社最強とまで謡われる暴君閣下に負けるならともかく、新参者の小娘に追い抜かれ、負けているという事実は、彼らには耐えがたいものらしい。

ちょっと誘導する程度で、任務に失敗し、無様に逃げ帰った乙姫を、怪人に相応しからぬ心根の持ち主だとか言って、三人がかりで闇討ちにしようと思うくらいには。

「ま、さっさと排除しないと、面倒そうだしね」

誰に言うでもなく、ポツリと呟く。女の勘って奴で分かった。子供の心と竜の強さを持ち合わせた『こどもドラゴン』乙姫は危険だ。

すぐにでも排除したいと思う程度には。

だからこそ、万全を期して三人ものA級怪人の刺客を用意した。番狂わせのジョーカーだって取り上げた。勝てるもんなら、やってみろ。


RRRRR……


なんて考えていると、私の携帯の一つが鳴った。

今回の闇討ちを考えた奴に教えている携帯だ。私は慎重に電話に出て、答える。

「はぁい。連絡ありがとう。樹里よ。一体どんな」

「初めまして。アサシンジェリー6号」

……どうやら暴君閣下のお気に入りは、本当に強かったらしい。

BGM代わりに聞こえるうめき声と、3人を戦闘不能に追い込んでなお涼し気な乙姫の声に、私は顔をしかめた。

光一郎が寝落ちしていてよかった。ちょっと乙女らしからぬ顔になっていたから。

「……どんな用事かしら?」

「単刀直入に言いますね。奪ったものを返しなさい」

どうやらコイツには、私がどういう存在か分かっているらしい。

説得も交渉も一切しないという強い意志が籠った声が返ってくる。

「奪った?返してもらっただけよ。元々、私のものだもの」

「光一郎さんは、ロクな力もない貴方ごときには相応しくありません」

……ああ、コイツは思った通りの『怪人』だ。

強さこそ正義で、人間の道徳なんてくそくらえだと思ってて、敵対したら容赦しない奴だ。

嫌になる。私と同じタイプじゃないか。

「嫌だと言ったら?」

「竜の宝に手を出したものの末路はご存じありませんか?」

いっそ傲慢なほどに乙姫は……私の『敵』は言い切る。

「ええ知ってるわ。怒って突っ込んできて、勇者様に殺されるのよね?」

「……つまり、返すつもりは無いと」

そう、これは戦いで、相手は敵だ。ならば、私は引くことは出来ない。

だからこそ、私は宣戦布告する。


「当然。なんで私が、こどもドラゴンの言うことを聞く必要があるの」


べきりと、握りつぶす音がして電話が切れる。多分向こうの血管も切れてるだろう。

戦いのゴングが鳴り響いた瞬間だった。

(さて、どうやって潰そうかしら)

さしあたり、いつもどおり拠点を移す必要があるだろう。

私にとっては、アイツは全自動処刑装置と戦うのとあんまり変わらない。出会ったら、死ぬ。

むしろ積極的に私の居場所を探そうとするだろうことを考えると、全自動処刑装置より厄介かもしれない。

「んっ……」

私の隣で安眠する光一郎を撫でながら、私は『砂漠の海月』として、必ずあのガキを殺すことを決意する。

どんなえげつない手を使ってでも。


私は、平穏が欲しかった。


結社の怪人がそれを手に入れようと思うなら、命くらいは賭けないと届かない。

後の不倶戴天の敵である

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 怪人はえげつないが、人間もかねがねえげつない世界 この回に限らず「かねがね」という言葉をよく使われますが、 「かねがね」の辞書的な意味は『(時間的に)前々から。かねてより』といっ…
[良い点] 異なるタイプの美女二人なのに、ちっとも羨ましくない。 [一言] これで過去編は一区切り。次の展開が楽しみです。
[一言] そして現在、組織崩壊後、精子バンクを見つけ樹里さん、子供が出来たと勝利宣言とw 過去が彼を追いかけて来ませんように。南無南無。
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