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チート・クリミナルズ  作者: 犬塚 惇平
7/95

Season1 Welcome to Sword World 05.5

OPとかで数分だけ入る、黒幕シーン的、あれ。

―――一体、あの男は何なんだろうね。


明かりも無く、漆黒の闇に染まった部屋の中で《肉体変化》を解除した上級魔人(グレーターデーモン)は、苛立っていた。


―――まさか、行方を見失うとはね。


闇を見通す眼に移るのは、意識を共有する使い魔たる魔犬の見ている光景。

瘴毒の悪魔の毒にやられて倒れたロバの死骸と、無様に敗北して灰と化した下級悪魔の残骸であった。

そこにはあるはずの光景である、恐怖と絶望にゆがんだ顔の男と女の死体の姿は、どこにもなかった。


―――一体どこへ逃げたんだろうね? 一緒に連れていたはずの女もどこへ行ったのやら……


思い通りにいかないという事実に、怒りを覚える。

単独で大魔蟲を倒すほどの実力を持つ、腕の良い武闘家であるという調べはついていた。

だからこそ、わざわざ魔界から呼び寄せた下級悪魔に、己が手足でもある魔犬を二十も預けた。

実際その連携は、わずかな情報を頼りに自分を探して辺境まできた忌まわしき聖騎士を恙なく仕留め、その装備を奪うことで不意を討つ準備まで整えたのだ。

……それで結果が、これだ。


―――厄介な相手だな。


事の起こりは、上級魔人の正体に近づこうとした愚かなギルド職員を屠ったときだ。

あのとき、己が眷属とした魔犬を町に潜ませ、首尾よく仕留めたことに大いに満足してついでとばかりに問題のギルド職員と同道していた処女の女を嬲り殺し、

その悲鳴と絶望、血の味でも楽しもうとしていたところで……魔犬は殺された。

感覚を共有していた上級魔人が感じ取ったのは、太い脚に首を的確に踏み砕かれるおぞましい感覚。

非情に不快なその感覚は、数百年の時を生きた、邪悪にして狡猾な魔人である上級魔人を怒らせるに十分であった。

その怒りのままに、別の個所に潜ませていた眷属の目で持って、上級魔人はその正体を確認した。

漆黒の毛皮に金色の瞳を持つ、人狼らしき男。それを次に狩るべき獲物と見定めたのだ。


幸い、人狼と思しき男は簡単に判明した。

数か月前、突如現れて活躍している、新進気鋭の冒険者にして、黒髪に金色の瞳の武闘家。

それが人狼の正体であることはまず間違いなかった。


―――あの娘の護衛として名指しで雇うのは、良い判断だと思ったんだけどねえ。


相手は大魔蟲を相手に単独で戦い、勝利するほどの腕前を持つ武闘家でもあるというので、策を弄した。

何の役にも立たない足手まといの護衛対象に、人狼の最大の強みである月の加護が得られぬ昼間。

油断させるべく聖騎士のフリをして近づく、悪魔。

負ける要素はない。無いはずであった。

だが、それでも失敗した。悪魔も魔犬も殺されたのだ。いらだちが募る。


―――あれは、本当に人狼なのかね?


ふと、そんな疑問が頭をよぎる。


下ごしらえとばかりに魔犬に襲わせたとき、あの男は人間の姿のまま戦っていた。

月の無い昼間であるから、当然のことだ。

その結果として魔犬は全滅し、一時的に『目』を失いはしたが、相応に疲労を与えることは出来たはず。

にも拘らず瘴毒の悪魔と単独で戦って勝ち、あまつさえこの辺り一帯に潜ませている眷属たちの目を掻い潜り姿を消す。

それは、ただの人狼に可能な芸当であろうか?


―――まあいい。いつまでも姿を消し続けるわけにもいかないさ。


そんな疑問を打ち消し、上級魔人は一人笑う。

どこに姿を消したにせよ、いずれ必ず姿を現すだろうという確信はある。

既に『目』は町中に張り巡らされている。姿を現せば、すぐに見つけられるだろう。


―――その時こそ、狩人の名に懸けて、しっかりと狩りとってくれよう。

その思いと共に、上級魔人は再び《肉体変化》の魔術でこの屋敷の主だった人間の姿へと戻った。

その正体はまあそのうち

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