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チート・クリミナルズ  作者: 犬塚 惇平
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おしえて!ナナコさん!5

そりゃまああんだけやらかせば、人間サイドの方だって認識してるさ。

「ナナコさん、ナナコさん」

「なんすかいきなり?」

「ナナコさんはサージェントウルフに詳しいんですよね?」

「そりゃあまあ。サジェウル界の自称アイドルっすからね」

「自称て、いやもういいです。突っ込んだら負けなのは分かってきました」

「アンタも成長したっすね。で、質問っすか?なんでも聞いてほしいっす!」

「じゃあ強化型サージェントウルフって実際はどんな感じの人たちでした?」

「そんなんいたの!?」

「いたの知らないの!?」

「え?いやだって、戦闘員に毛が生えた消耗品のサジェウルっすよ?安い弱い多いが合言葉のサジェウルっすよ」

「牛丼じゃないんだから」

「そんなんわざわざ強化してなんの意味があるんすか?んなのわざわざ研究する暇あるなら適当なB級でも増やせばいいじゃないっすか」

「相変わらず自虐的過ぎません?」

「これくらいじゃないとサジェウルは怪人業界では生き残れないんす。で、実際いるんすか強化型サジェウルなんて面白生物」

「大規模な作戦で結構見たって話多いですよ?」

「えー。どんなんっすか?」

「黒くて目が金色のサージェントウルフで、そいつが居ると戦闘員とか怪人の動きが違うって。

 逃げ足も早くて今までに倒せたのは『ザ・ヒーロー』でも最終作戦で1人だけ、らしいです」

「……あー。それで強化型っすか。そういう扱いだったんすか」

「あ、やっぱり知ってたじゃないですか」

「それはただの量産型っす。普通のやつ、コモンっす」

「え?でも黒で統一されてるとか、如何にも強化型っぽく無いですか?」

「いや、統一されてるも何も、同一人物っすよ?使い回しされてたんす」

「はい?」

「センパイっすわ。それ。ウルフパック入りしてからなんかぜってえ死なねえ上に、

 作戦成功率と生還率上がる幸運の黒いサージェントウルフとか言う謎の噂出てあちこちに貸し出しされたらしいっす」

「マジっすか」

「マジっす。口調変わってるじゃねえっすか」

「失礼。そんな人が居たんですか。知りませんでした……あれ?センパイさんって確かこの前の話で」

「気にしたら負けっす。まあサジェウル個々の人格ってあんまり認識されねえっすからね。

 犬顔の二足歩行なんは男も女もねえっすし、ぶっちゃけ同じ服着てたらサジェウル以外には体型と色以外で見分けつかねえっすし。ただセンパイはもうサジェウルじゃないっす。サジェウルの姿したなんかっす」

「ナナコさん並ですね」

「あれと一緒にしねえで欲しいっす! ウルフパック入りしたベスト10はスゲえ奴しか居ねえって評判だったっすけど、センパイそんなかでもおかしい人扱いだったっすわ」

「それってつまりサージェントウルフの中で一番ってことですか?」

「そうとも言うっすね。知名度だったらウルフパック率いてたラスト・ポチのサージェントウルフ88号のが上だったっすけど、自分としては断然センパイ推しっすね」

「はあ。でも普通のサージェントウルフだったんですよね?」

「まあ真正面からタイマン張って戦闘向けのB級怪人より強いってことは無かったっすね」

「それでなんで一番なんですか?」

「わかんねえっすか?

 その程度の性能なのに失敗作と4回も戦って生き延びてる上に結社でも有名な作戦には大体参加記録があるんすよ?

 データベース漁ったら5126号ってなんかの暗号かな?ってレベルで名前出てくるんすよ?」

「それですごいと?」

「そうっすね。五桁組に『コードネームに漢字の一が入ってると生き残りやすくなるって本当ですか?』とか深刻な顔で聞かれた時は

 変な笑い出ましたもん。そのあと調べたら五桁組のコードネーム『一なんとか』だの『なんとか一』だの多すぎて真顔になったっす。

 多分、コードネーム申請書に後からこっそり書き足してるんすよね。

 同じサジェウルとして生き残るためならジンクスでも神頼みでもするのは分かるっすけど」

「でも死んだんですよね?最終作戦でウルフパックは全滅したって記録もあるし、

 ザ・ヒーローが黒いサージェントウルフをついに倒したって証言してるって」

「センパイを強化型とか言ってるボケの話なんて当てにならねえし、

 そもそも死体も見つけてねえのに死んだとか言われてもぜってえ嘘っすわ。

 なんかこう不思議なことが起こって生き延びてるっす」

「謎の信頼感ですね」

「いや実は調べてみたらなんか大昔にも居たらしいっんすよね。

 爆撃機乗りで戦車だの車だのとんでもねえ数ぶっ壊して三十回撃ち墜とされてんのに死んでねえパイロットとか、

 なんかスゲえ数の敵兵撃ち殺した上にどんだけ大量の敵送り込んでも殺せなかった元猟師とか、

 死んだの確認された後に生き返って収容所脱走して基地破壊しようとした兵士とか。センパイは多分その類っす」

「はあ。じゃあ生きてるとしてどこで何してるんですかね?」

「さあ。ただスゲえ苦労はしてそうっすね。もうそういう星の下に生まれたとしか思えねえ人っすし」

「それはそれでイヤだなあ。あ、でもそうすると女の子にもモテそうですね」

「だからテメエは男捕まえられねえんす」

「心にくるからやめて」

「超勘が良くて、頭良くて、顔そこそこ整ってて、身だしなみ気をつけてて、気配り出来て、家事できて、

 どんな作戦でも生き延びるしなにより一緒に居るだけで自分の生存率も上がるんすよ?

 基本生き延びたいと思ってる怪人相手にモテねえ道理がどこにあるんすか」

「あ、やっぱりモテたんですね」

「そりゃあまあ」

「じゃ、センパイさんはナナコさん的にどうなんですか?」

「断固拒否する」

「なんでさ!?」

「まったく、本当にアンタはサジェウルのこと、分かってねえっすね。

 そんなんで野生のサバンナよりきつい怪人業界渡って行けると思ってんすか?」

「いや私人間ですし、怪人業界なんて入ったら三日持たないのは分かってますんで」

「分かってるならいいっす。で、いいっすか? センパイは例えるならサバンナにおける水場っす」

「相変わらず分かるような分からないような」

「一緒にいるだけで楽しい。癒しになる。おまけに大事にしてくれるしカッコいいし何より冷静で的確な判断してくれるから

 死ににくくなる。最高の水場っすね」

「拒否するって割にべた褒めですね」

「ここからが本題っす。怪人業界では最高の水場ってのはつまり」

「つまり……?」

「最強の猛獣の縄張りと同義っす」

「……はい?」

「つまりっすね。センパイにはすでにもうついているんすよ。敵に回すと超こええ怪人女が」

「……なるほど。人間でも決まった人が居る既婚者に手を出したら普通に不倫で社会的に死にますもんね」

「いや、結婚どころか恋人ですらないっすけど」

「なんでやねん」

「まあ話を聞けっす。まず、怪人業界は基本弱肉強食っす。

 強い奴がえらい。偉い奴が正しい、だから強い奴が正しい。超シンプルなルールっすね」

「なんか、怖いところですね怪人業界」

「そりゃおめえ、本気で世界征服目指して失敗作とか協力者とか軍隊とか警察とかと毎日みたいにガチバトル繰り広げてたところっすよ?

 生き残れる奴、強い奴がえらいに決まってるじゃねえっすか」

「今はその警察ですけどねナナコさん」

「そこは自分なりに考えた結果っす。で、話し戻すと、仮に複数の女怪人が男怪人取り合うことになったら、基本つええ方が取るっす。

 脳改造で盗みだろうと殺しだろうと平気で出来るくらいには倫理観が吹っ飛んでて、

これから支配される予定の人間が作った法律なんざ知ったこっちゃねえってのがデフォでまかり通る怪人業界だとそれが一番になるっす」

「それは女怪人取り合う男怪人も一緒じゃないんですか?」

「そこは男怪人の中でぶっちぎりで一番つええ人が『世界統一を目指す結社にいながら色恋にうつつを抜かし、

 あまつさえ女の取り合いをするなど言語道断!真面目で健全な付き合いならばいざ知らず遊びで行うは許すまじ!

 また婦女子を守らずあまつさえ傷つけるなど結社に相応しき男児にあらず!』

 って感じの人だったんで、色恋沙汰で問題起こした男怪人は大体ろくでもねえ目にあうっすから、恋愛方面すげえ真面目だったっすね。

 まあ実際はいたんだとは思うっすけど、戦闘力最強の暴君閣下とその直下の武闘派連中に隠し通せるくらい慎重にやってるってことになるわけで、自分は殆ど聞かなかったっすね」

「……ああ、確かにタイラント・オブ・タイラントってそんなイメージですね」

「ベースの動物が白亜紀出身っすからね。古くせえのも当然と」

「ティラノサウルスでしたっけ」

「そうっす。なんか化石から遺伝子取り出して大戦の頃の英雄にナノマシンもろともぶち込んだら、最強の怪人が出来ちゃったとか言うネタの塊みてえな人っすね」

「本当に、冗談みたいな人ですね。ザ・ヒーロー相手に正々堂々戦って2回勝ってるとも聞きますし」

「まあそういうことはよくあることっす。で、話し戻すと、女の方はその辺ゆるかったんすよ。

 女怪人で一番つええ人がそう言うの一切興味示さねえ人だったんで」

「はあ」

「恋愛は自由! 世は恋愛戦国時代! 欲しい男がいるならぶん殴りあって奪い取れってのが女怪人のルールだったわけっす」

「ちなみに奪われる男の方の意見は?」

「告ってきた女よりよええ怪人だったらはいかイエスか死以外の選択肢がそもそも出ねえっすねー。

 基本最弱のサジェウルが振るの許されるのはサジェウルだけっす」

「それだとセンパイさんは一番強い怪人が持っていくのでは?」

「……センパイについてる中で一番強い怪人が1人だったらそうだったんじゃねえっすかねえ」

「……つまり、その、2人いた?」

「弱肉強食の縄張り争いだと、同じくらいつええのが2人いると、本気の殴り合いでも決着つかないんすよねー。

 同じタイプだったらそれでも時間かければ決着つくんすけど、タイプ全く違うから余計ややこしい話になってたっす。

 かたや戦闘は専門外のB級だけど長生きしてて謎人脈持ちまくり、敵に回した奴は絶対破滅するし、

 そもそも居場所特定すんのが超難易度たけえ絡め手に特化した陰謀タイプ。

 かたやA級かつ失敗作とガチンコタイマンしたこともある超脳筋の正面突破力ぶっちぎり、上層部の武闘派にも人気な武人タイプ。

 そりゃ決着つかねえっすわ。まんま鉄火場で生き残ってきたB級の生え抜きと生まれついての戦闘兵器なA級の対立構造の代理戦争みたいになってたっすし」

「はあ……そりゃややこしいですね」

「下手に色目使った日にはどっちかに潰されるっす。

 サジェウルなんか翌日にはなんか知らんうちに死神案件の被験体に決まってるか、ご本人に斬り殺されてるっす。

 センパイもどっちか選んだ瞬間もう片方に殺されるって分かってるから、すげえ慎重に恋愛沙汰避けてたっす。

とは言えそこで二股とかハーレムとかお前たちが僕の翼だ!とか抜かしたらそれはそれで暴君閣下に殺されてたっす」

「怪人業界こえー」

「そのせいでこじれにこじれてあの2人未だに超仲悪いっすからね。結社も無くなったし、センパイも行方不明だってのに」

「はあ……でも生き残ったんなら普通の人になってるのでは?」

「それが、結社無くなったら余計に強くなったんすよね。あの2人」

「何それ怖い」

「陰謀タイプの方は怪人時代の人脈生かして結社の元怪人をあっちこっちに密かに送り込む警備会社起こして超稼いでるし、

 武人タイプの方は前世がどっかの名家のお嬢様だったとかで、今その家の権力と財力普通に使える上に政府の上層部にがっつり食い込んでるっす。

 両方が協力者の支援に目ん玉飛び出るほど金出してるっつう話っすし。

 しがない一婦警なんて逆らったら速攻で首かアバ〇リ辺りに左遷っすね。最悪港で簀巻きにされてドボン」

「……うん?それって」

「あ、ちなみに今二人とも協力者に登録してるっす。大ヒントっすねえ」

「……それ『砂漠の海月』の樹里さんと『ドラゴンチルドレン』の乙姫様じゃあ?」

「怪人時代のコードネームそのまんまなんすよねあの人らのキックネーム」

「……確かにその2人は敵に回せませんね。普通に死ぬ未来しか見えません」

「ちなみに自分、配属決まった日にセンパイんとこにお礼の挨拶行ったせいで両方にばっちり顔と名前覚えられてるっす!

 死ぬかと思ったっす!で、うっかりセンパイと恋愛沙汰になったら死ぬんで面白獣人枠演じてたら戻れなくなったっす!

 でもなんかいまだに時々連絡来て無茶ぶりされるっす!この前、樹里さんからも連絡あったっす!

 いつの間にかガチで自分に謎の異次元の偵察行ってこいとか言う話になりかけてるっす!

 基地が自爆する前に『大首領の娘』がそこに逃げたっぽいとか、結社のデータベースに載ってない異次元怪人が大量に発生してる可能性があるとかタダの婦警に言うなっす!

 異次元怪人だらけの未知の世界でも生き延びられるの失敗作かアンタくらいだからとか言うなっす!助けてポリスメン!」

「……強く生きて下さい」

サジェウル業界の恋愛は、ノーセーブでやると〇めきメモリ〇ル並にきつい上に爆弾処理に失敗すると実際に死ぬデスゲーム。

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