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チート・クリミナルズ  作者: 犬塚 惇平
39/95

おしえて!ナナコさん!4

ナナコさんが裸足で逃げ出す案件というものも、ある。

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「……で、ナナコさん。なんで唐突に逃亡したんですか?しかも一週間も」

「……いや、自分、婦警になってもこんな扱いなんだなあと思ったら突発的に世の中クソだなって思ってランナウェイっす」

「探すの、すごく大変だったんですよ? 一課の方々や地元警察にも協力してもらってるのに全然捕まらないとか、どういうことですか?」

「そこは自分、プロっすから。人間の動き方しか知らねえ素人に捕まるほど素人じゃねえっす。つか自分捕まえるのにケンタローさん投入するとかそっちこそ何考えてんすか」

「……怪人に関するご相談ならば万事お任せください。怪人探偵『鉄人健太郎(てつひとけんたろう)』が必ず解決します! って人が本物と聞いて、藁にもすがる思いで」

「それでケンタローさんがあっさり自分の居場所特定して捕まえたせいで警察のメンツめっちゃ傷つけて大変なことになってるとか聞いたっすよ?」

「……そこは、か、怪人の考え方とか逃亡手段とか捕獲方法とか色々と分かったので収穫はあったし良い訓練にもなった、と伯父様もいってらしたので……顔、ひきつってましたけど」

「はあ。アンタ、だんだん無茶するようになってきたっすよね……」

「ナナコさんには言われたくないです!そもそも伯父様が咄嗟に有給休暇申請してた扱いにしてなかったら普通に無断欠勤扱いだったんですよ!?」

「それは反省してるっす。でも二度と被験体任せねえって確約取れたのは収穫だったっす」

「……そこまで嫌だったんですか? ドラゴンチルドレンから貸与された試作品のテスターやるの」

「サジェウル業界では超特大の地雷っすね。逃亡不可避っすわ。最近だんだんやべえ仕事回ってきて待遇悪化してるっすし」

「ちょっと試すだけじゃないですか。なんでそこまで嫌がるんですか?」

「……それ、自分以外のサジェウルに言ったらダメっすよ? トラウマ発動するか最悪自棄になって暴れだすんで」

「そんなレベル!?」

「試作品のテスターってつまり、被験体じゃないっすか。結社のサジェウルで被験体とか言われて嫌がらねえのウルフパックのベスト10くらいっす」

「……なんでまた」

「そりゃ結社のサジェウルの死因堂々の第一位が被験体っすから……あれ? 話して無かったすかね?」

「……もしかして、前に話してたA級怪人の、例のホラーな感じのあれとかみたいなことさせられると思ったんですか?」

「甘いっすね。あれは死亡率99%で済んでるから最悪よりちょっと下っす」

「……一体何をやらされてたんですか」

「結社の作った脅威の科学力の産物の実験台っす」

「結社の……確か結社って、空間転移装置とか作ってましたよね……」

「あれが出来てから建物への侵入とか街の襲撃とかテロとかかなり楽になったっすからねぇ……ものすげえ尊い犠牲でまくってるっすけど」

「確かに、アレさえなければどれだけの被害が出ずに済んだか……」

「じゃなくて、サジェウルの犠牲っす」

「……はい?」

「あれ、出来上がるまでにスゲエ犠牲でまくってるんすよ……実験台になったサジェウルの」

「……戦闘員じゃダメなんですか?」

「流石に肉体的に転移できるかは戦闘員で実験したらしいっすね……初期はミンチになったり黒焦げになったり謎のゲルになったりしてたらしいっすけど」

「……安全装置とか無いんですか?」

「結社っすよ?」

「……結社ですもんね」

「で、まあ肉体的にはどうにかこうにか問題なく転移できるようになったところで、被験体としてサジェウル投入されたんすよ」

「肉体的に安全なら、何か問題が?」

「最初の被験体サジェウルは完全に発狂してたんで自爆処理で処分されたっす」

「は?発狂って……それに、自爆処理?」

「壊れたサジェウルはさっくり自爆させられるっすねえ。治すのにかかるコスト勿体無いんで。どうも肉体転移させるときに脳みそに不具合出るとかで、問題箇所特定するまで総当たりしたらしいっす。実地試験で」

「……そんなことが」

「転移成功と言うか、完全な発狂しなくなったの三十人目くらいからとか聞いたっすね」

「完全なって」

「ちょっとは発狂するんすよ。まあこれも自爆処分っす。他の怪人が使えるくらい安全に転移出来るようになるまでに三桁行ってたとか聞いたっす。いやあ、自分、そこに回されなくて幸運だったっす」

「そんなに犠牲が……」

「サジェウルをゴミみたいに使いつぶせるからこその結社驚異の科学力でもあったんすよねー、安全とかそう言うの無視していいんで」

「……尊い犠牲だったんですね。本当に」

「そういうことっす。ちなみに、公平性期すために実験はどこのどなた様がやろうとしたのものなのかは被験体のサジェウルには秘密なんすけど、ヤベえかどうかはある程度聞いただけで分かるっす」

「そうなんですか?」

「他のが新開発の武器とか、今ある装備の改良とか、そう言うのは安全っす。比較的。たまに爆発したり謎挙動起こして死ぬっすけど。

 あとは、新開発のお薬系は大体ヤベえ副作用あるっす。人間が飲んだら死ぬ薬でも耐久力再生力ダンチの怪人なら副作用抑え込んで使えるはず!ってノリっすね」

「……まさに人体実験ですね」

「でもまあ流石に即死する薬はたまにしかないっすから」

「たまにはあるんですか!?」

「結社っすから。あ、でも毒ガス系は大体死ぬっすねー。むしろどれくらい怪人相手に効くかの実験っすねー」

「それこそ戦闘員使いましょうよ!?」

「棒立ちで吸い込んでバタバタ倒れるだけの戦闘員じゃ、何とか毒ガスから逃げようとしたり何とか防ごうとする人間の動きシミュレート出来ないんすよねー。残念ながら」

「……それで、本気で逃げるサージェントウルフを……?」

「そういうことっす。自分が今回、全力逃亡した理由、そこっすよ? 試作品としか書いてないなんて代物出されたら、逃げるしかないっす」

「……すみませんでした。二度とやらせないように手配します」

「分かればよろしいっす。で、次は怪人の最終性能試験、これもヤバいっす」

「……怪人がどれくらい強いか調べるためのものでしたっけ?」

「そうっす。向こうもこの結果で将来決まるんで、本気で潰しに来るっす。A級のくせにサジェウルに負けたとかなると2号以降までずっと馬鹿にされるのが怪人社会っす。

 まあ、そこで生き残ったり健闘したりすると珍しい個体だからっつってわざわざ副官にしたがるA級とかB級とかが結構いるから、出世できる可能性はあるんすけどね」

「ナナコさんもそのタイプですね」

「まああっちこっちでトラブル起こしまくるクソガキだったっすけどね。しかも何かというと尻とか指とか溶かしてくるっす。ノリで」

「……ノーコメントで」

「で、それよりやべえ最悪の案件、これはもう聞いただけで分かるっす」

「どうしてですか?」

「だってこう、ぶっ飛んでるっすから。

 さっきの『空間転移装置』とか、超小型だけど半径数㎞焼け野原に出来る『超小型戦術核』とかあらゆる有機物を取り込んで完全に栄養に変えるから、

 管理と処理ミスると普通にサジェウルも消化吸収する『無限に増殖する食糧』とか、ナノマシン意図的に暴走させて瀕死の重傷無理やり再生させる『再生剤』とか、その進化系で全長50mになるけど3時間後に体が崩壊して死ぬ『巨大化剤』とか、マジもんのサイボーグとか、明らかにお前25世紀辺りから着ただろ見たいな案件になるっす」

「……確かに結社の科学力は人類の限界超越してるとか言われてましたけど」

「で、そう言う案件は、大体結社クオリティで安全性とかすっ飛んでるんで『死神案件』って呼ばれてたっすね」

「死神……」

「選ばれた時点でほぼ死ぬ。選ばれたら生き残れるかどうかは、祈れ。

 なお、成功しても口封じで消される可能性はあるから注意は怠るな……そんな案件っす」

「まさに選ばれた時点で死ぬ案件だったわけですか……」

「そういうことっすね。サジェウル業界では失敗作と戦うのと死神案件の被験体は完全に死ぬと思えとか言われてたっすね……」

「……そんなもの作れる科学者って、一体何者だったんでしょう?」

「そりゃあ決まってるじゃないっすか」

「ご存じなんですか?」

「って言うか一択っすよ……大首領っす」

「……大首領?」

「そうっすよ。結社の創始者で、今の怪人作り出した人っす。まあ、具体的にどんな怪人だったのかは失敗作と一部幹部しか知らないっすけど。

 けどまあ、人類史上最高の知性があるとかどうとか言う話だったすし、普段は研究部門のトップ兼任して色々研究してたらしいっす。

 そんな芸当出来る科学者な上に、最初に自分自身を最強の怪人に改造したわけで、まさに反則の塊みたいな人だったらしいっすね。

 結社の研究部門が大体自分自身を怪人に改造してたのも研究にどんだけ打ち込んでも疲れない強靭な身体欲しがったのと大首領の意向だったからって言われてるっす」

「……確かに、他に考えにくいと言えばそうですけど」

「まあ、まさか大首領直々の開発とか言えないっすから隠語として死神案件作り出す『死神』とか呼んでたっす。超安直に」

「安直すぎません?」


R……


「はい。こちらは、ハウンドコップナナコです。どちら様ですか?」

(やっぱり電話とるの早すぎて見えなかった……)

「は!?お、乙姫様!ご、ご無沙汰であります!」

(え!? 伯父様相手でも普通にため口聞いたとか言うナナコさんの口調が変わってる!?)

「……いえ、そんなことはありません!乙姫様のお役に立てるのでしたら、不詳ナナコ!粉骨砕身の覚悟で挑む所存であります!」

(……あれ、もしかして乙姫様ってドラゴンチルドレンの長官の?)

「は?……爆破された本部跡から発掘された謎の装置でありますか?申し訳ないであります。非常に心苦しく思うのでありますが、自分ではお役に立てぬと思うであります」

(発掘って、なんでわざわざ……)

「……安全性は確認されてるし、試用テストは別の怪人を使う。なるほど」

(なんでそんな情報、わざわざナナコさんに流しているんでしょう?)

「放置しておくと最悪この地球が滅びかねない危険な代物、と……安全性は確保されているのではなかったのでありますか?」

(ち、地球が滅ぶって、もしかして、冗談ですかね?)

「なるほど、使い方次第ではとても危険と……なんともわかりかねる話でありますが」

(一体、何が……)

「いえ!無論ドラゴンチルドレンからの依頼で、正式に本庁に依頼為されるのであれば不詳ナナコ!最後まで付き合う所存であります!」

(確かに、断れせんよね。ドラゴンチルドレンって結社の強力な怪人の生き残りを集めた政府の誇る最強の対怪人用特殊部隊とか聞きますし)

「……は? わざと逃亡させて有給休暇使い切らせた甲斐があった……?」

(え!?じゃああの騒動ってわざと……?)

「……電話、切れたっすね……嫌な予感しかしねえ……」

「だ、大丈夫ですよ。今はドラゴンチルドレンは普通に人間の味方だと聞きますし」

「いや、あのこどもドラゴンが率いてる部隊って時点でぜってえそんなタマじゃねえっすわ。

 センパイは昔は純真無垢な女の子だったとかいうけど、今は超性格悪いっすから。

 ……樹里さんと組織規模で殴り合えるの今じゃあの人くらいっすし」

「お、お知り合いなんですか……?」

「そりゃあ、まあ。今でも連絡たまに来るくらいには……大体ロクでもねえ任務付きなんすよね、あの人の電話って」

「……あ、何故かわたしにメールが来ました。えっと『異次元空間への転移装置(仮)』についての、現時点で判明した情報を送付します。それと聞こえてないと思って『コモドドラゴン』の怪人リュウグウゴゼン1号であるわたくしを『こどもドラゴン』などと不埒な言い間違いを行い、あまつさえ罵詈雑言の限りを尽くす不届き者がいる件について、後でご相談に乗って頂けると幸いですと……い、意外とお茶目な方ですね、うん」


「本庁普通に情報漏れてるし、そもそもそれ絶対死神案件じゃないっすかやだあああああああああ!!!!!」

誤解されているが、死神案件の半分くらいは大首領が開発したものじゃなかったので普通に濡れ衣である。

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