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チート・クリミナルズ  作者: 犬塚 惇平
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season1 Welcome to Sword World 13

C級怪人は、警察が頑張ればなんとか殺せなくはないくらい強い

B級怪人でも戦闘向けの奴は、街を焦土にするの覚悟しないといけないレベルで強い


BとCには圧倒的な性能差が存在する。

A?あれはもう基本的に核かアレじゃないと倒せないよ

わたしが着たことに対して、狩人の魔人は明らかに動揺していました。

「……新手の合成獣(キメラ)だと!? 次から次へと!」

わたしとコーイチローさんが並び立ったことで狩人の魔人はわたしたちを仲間と見なしたようです。

わたしがギルド職員のアリシア・ドノヴァンだとは気づいていないようですが、今の姿なら仕方がないでしょう。

と言うか、わたし自身想像もしていないことだったわけですし。

「ならばまとめて薙ぎ払ってあげよう!」

魔人がそう言いながら腕を上に掲げた瞬間、コーイチローさんが叫びます。

―――アリシアさん! 目を閉じて、両手で鼻と口を塞げ!

唐突に言われた言葉に何事かと思いながらわたしはコーイチローさんを信じて目を閉じて両手で鼻と口を塞ぎました。


あつっ!?


その直後、わたしの表面を何か熱いものが通り過ぎていきます。

なんというか、お風呂で体を流すためにお湯を浴びてみたら思ったより熱かったときくらい。

ちょっと肌が赤くなるくらいの熱さを感じました……一体何が起きたのでしょう?

「おいおい《火炎球(ファイアーボール)》が直撃してそれかい? ……魔人だってもうちょっとは痛がるものなのだがね」

そう思った瞬間、答えが他ならぬ狩人の魔人から返って……火炎球?

それは普通の冒険者さんが下手に直撃すると即死する攻撃魔法じゃなかったでしょうか?

そう思い恐る恐る目を開いて確認すると、服の端っこが黒焦げになっているのと……

治癒(ヒール)》の魔法をかけられたかのように火傷が消えていくわたしの身体が目に入りました。

―――バーサークタウロスの耐久力と再生能力はサージェントウルフとは比べ物にならん。

   それに怪人の痛覚は戦闘で痛くて動けませんとかならないよう、かなり鈍い。

   バーサークタウロスなら無理にかわすくらいなら急所を守って食らっちまうのも手だって覚えておいてくれ。

その直後、コーイチローさんの『声』が聞こえました……既にコーイチローさんは狩人の魔人に向かって行ってしまったというのに、

何故か耳元を通り越して頭の中に直接響くように聞こえました。

……それはつい先日、魔犬を前にしゃがめと言ったのとおなじ声でした。

―――オレは今《沈黙の命令(サイレント・オーダー)》っつうサージェントウルフの特殊能力(アビリティ)で話しかけている。

   こいつはな、相手の脳内に直接、オレの『声』を送ることが出来る。

   射程はざっと2000m。その範囲内にいる相手になら声に出さずに、確実に伝えたい奴に伝えられる。

   ちなみにそっちが考えてることを読んだりは出来ないから、聞きたいことは声に出して聞いてくれ。

その言葉に、思わずわたしは無言で頷きます。

―――じゃあ早速だけど、右を見てくれ。そこに、馬車があるだろ。

その言葉に従い、右を見ますと、確かにありました。車軸が折れて走れなくなっている馬車が。

元からここで待っていたところで車軸を折られたのか、外して逃げたのか馬の姿はなく、馬車だけが放置されていました。

―――そいつを持ち上げて、ぶん投げてくれ。狙わなくていい。オレは勝手に避けるから、気にしなくていいぞ。

投げる?

コーイチローさんの伝えてきた馬車は、二頭立てで引くような大型の馬車です。

こんなもの、巨人でも無いと投げられないのではないでしょうか? 

―――大丈夫。バーサークタウロスのパワーは怪人の中でもトップクラスだ。持ち上げてみろ。簡単に持ち上がるから。

……本当にコーイチローさんは心が読めてないんでしょうか?

かなり的確にわたしの心を読んだとしか思えない声に従い、わたしはそっと持ち上げてみます。


……ものすごく簡単に上がりました。


人間だったら浮かせることすら不可能であろう重さにも関わらず、怪人化したわたしは軽々と馬車を持ち上げてしまいました。

多少はたくましくなったと言っても、普通の女性の範疇に収まっているわたしの体つきでこれを持ち上げられるのは、

正直冗談としか思えないのですが、わたしが持ち上げてる馬車に気づいたらしい狩人の魔人も驚いたのか、

一瞬動きを止めたのが分かったので、どうやら本当に持ち上がっているようです。


―――後は適当に、レラジェの方に、ぶん投げろ!


その言葉に従い、わたしは馬車を振りかぶって投げました!

まるで投石機でも使ったかのように弓なりに飛んだ馬車が地面に落ちて……石畳を砕きながら砕け散ります!


―――車とか岩とか引っこ抜いた木とか、重くてでかいものぶん投げるのはパワー系怪人の基本だ。

   適当に投げても飛び散った破片で結構な被害が出るからな。

確かに、被害は甚大でした。破片が周囲に居た魔犬に突き刺さり、吹き飛ばし、魔犬が多数倒れたのですから。

「くそが! なんなんだその合成獣は!? でたらめじゃないか!」

心なしか、狩人の魔人にも少しはダメージを与えられたようです。魔人が悪態をつくのを始めてみました。

―――よし、じゃあ逃げるか。

え? 

返ってきた言葉に、わたしは耳を疑います。

わたしたち2人、ここで一気に畳みかけて倒すのではないのでしょうか?

―――有利に見えてもアリシアさんはまだ戦力として数えられないからな。確実に殺るために態勢を立て直す。

   今なら犬どもも追ってこれない。逃げ時だ。

……どうやらコーイチローさん的にはまだわたしは戦いの『仲間』とは言えないようです。

少しだけむっとしますが、考えてみれば怪人になってまもなく、戦い方も良く知らないわたしがあまり役に立たないのも道理です。

でも、逃げるって、どこへ行けばいいんでしょう。

―――こっちだ。

その言葉と共に、空から馬車が落ちてきた混乱に乗じて戻ってきたコーイチローさんに右の手首を掴まれます。

「あの、手首じゃなくてこういう時は手をつないでも良いと思うのですが」

まるで騎士物語に出てくるような状況に、わたしは少しだけ勇気と乙女心を出して口にしてみます。


―――この状況で、手をうっかりで握りつぶされるのはちょっと。


それに対し、目をそらしたコーイチローさんから返ってきたのは乙女心を粉砕するようなひどい回答でした。


……もうちょっと色々、信用してくれてもいいじゃないですかあ!?

と言う言葉はつい先ほど、うっかりでコーイチローさんを殺しかけたのを思い出したので頑張って飲み込みました。


そしてわたしはコーイチローさんに手首を、はい、非情に不本意ではありますが手じゃくて手首です。

とにかく手首を引かれながらわたしたちはギルドの建物に飛び込みました。


―――よし、とりあえずは安全を確保できたな。


元から目をつけていたのでしょうか。受付のある食事処と酒場を兼ねたギルドの集会所を駆け抜けて飛び込んだギルドの厨房で、

閂を下ろしたコーイチローさんがほっ、と息を吐いて言いました。

「安全、なんですか?」

「ああ、稼げる時間はそう長くはないだろうが、あの犬の力じゃここの扉はしばらくは破れんだろうし、数匹程度なら問題ない」

外からは逃げたわたしたちを探して魔犬が徘徊する音と、唸り声が聞こえています。その音は徐々に増えているようです。

「今のうちに準備をすませちまおう」

そんな状況にも拘わらず、コーイチローさんは落ち着き払って厨房の中を見渡します。

「厨房ってのは結構使い勝手がいい道具が多い……コイツが使えそうだ」

そう言ってコーイチローさんが目をつけたのは、わたしの胸くらいまでの大きさがある大きな水がめでした。

毎日たくさんのお客さんを相手にすることもある厨房の水がめなだけに、普通のものとは大きさが違います。

「アリシアさんはこの水がめにモノをぶち込んでくれ。食器に包丁、鍋に食材、薪に椅子とテーブル。とりあえず目に付くもの入るだけありったけだ。

 割ったり握りつぶしたりして密度上げると更によし、だ」

「は、はあ。分かりました……」

どうやらわたしの怪人としての最初のお仕事は、水がめにモノを詰め込むことのようです。

恐らくは、投げるのでしょう。わたしは今や大きな馬車でも軽く投げ飛ばせる怪人、バーサークタウロスですから。

ガラクタでいっぱいになった水がめくらいは簡単に投げられるでしょうし。

そう思いながら準備に取り掛かります。目に付く端から詰め込めるものを見つけて放り込んでいきます。

わたしがちょっと力を込めるだけで陶器の食器は割れ、金属製のナイフやフォーク、お玉や包丁が丸められ、お鍋はつぶれ、薪が折れて入れやすい大きさに変わります。

……わたしの今の力、一体どれだけあるんでしょうか?

「その間にオレは、と……お、壺と酒瓶か。割れやすそうでいい感じだな。運がいい……油はコイツだな……」

コーイチローさんはコーイチローさんで、何やら準備をしているようです。

既に服と呼んでいいのか分からないくらいボロボロになった上着を脱ぎ捨てているのが見えます。

そしてわたしたちは魔犬が音や匂いで察したのか徐々に扉の前に集まってくる音を聞きながら黙々と手を動かし……


「あ、あの……コーイチローさん」

作業は続けながら、意を決してコーイチローさんに尋ねることにしました。

「なんだ?」

「作業の間、色々教えてもらっていいですか? コーイチローさんのこと」

きっと、狩人の魔人と戦う前にちゃんと落ち着いてお話が出来るのは、今が最後のはずです。

……戦いがどうなるか分からない以上は、悔いは残しておきたくないのです。

「……まあ、ある程度ならな」

そんなわたしの心情を察したのか、コーイチローさんは手を止めることなく、わたしの言葉に同意してくれました。

次回、過去話。謎にみちた過去を色々と

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