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異臭姫

作者: もりもり

生暖かい目で見てください。お願いします。

あるところに異臭を放つ娘がおりました。彼女は決して不潔なわけではありませんでした。しかし、何故か鼻が曲がりそうなほどの臭いを体から放つのです。


娘は臭い臭いと周りに言われ続けました。それは実の両親からもです。両親は強烈なにおいを放つ娘に戸惑いうまく愛すことができませんでした。


娘は裕福な家に生まれ、とても美しい容姿をしていました。そのため人々は彼女を「異臭姫」と呼びました。美しい姫君のようだが、匂いがすべてを台無しにしているという意味を込めてこの名がつけられました。


異臭姫は心優しい娘でした。どんなに心無いことを言われても、静かに受け止めました。彼女は人間の友人はいませんでしたが、鳥や猫、動物が彼女のそばにいつもいたので寂しくありませんでした。彼らは彼女の匂いを気にしていませんでした。しかも安心するようにすり寄ってきました。




ある日、異臭姫の国の王子が原因不明の深い眠りに着いてしまいました。国中の名医が彼を診ましたが、原因が分からず匙を上げました。終いには怪しい自称魔術師を呼んだりもしました。しかし、王子は目覚めませんでした。

女王様は、遂にこんなお触れを国中に出しました。


「王子を目覚めさせた者には、褒美を授ける」



国中の民が、王子を目覚めさせようと城へやってきました。

ある者は、耳が痛くなるほどの大声を上げました。しかし王子は目覚めません。

またある者は、王子の体を大きく揺すりました。しかし王子は目覚めません。

またまたある者は、部屋を我慢出来ないほど暑くしました。しかし王子は目覚めません。


誰がどんな事をしても、一向に王子は目覚めませんでした。




異臭姫の家に仕えている下男は、ある日彼女のハンカチを拾いました。それはそれは耐え難い匂いを発していました。彼が捨てようと思ったその時、王子の事を思い出しました。そして、これは使えるかもしれないと思いました。


下男はハンカチを持って、城へ向かいました。



城の者は皆、半分諦めていました。もう王子は目覚めないだろうと。まったく下男に期待をせず、部屋へと案内しました。

下男は部屋に着くと、異臭姫のハンカチを取り出しました。ものすごい匂いが部屋中に充満しました。使用人の一人は気絶してしまいました。


下男はあろうことか、それを王子の顔に被せました。



「ぐがっ・・・・・!」


王子はうめき声を上げました。



王子が目覚めたという知らせは瞬く間に国中に広まって行きました。




皆がどう王子を目覚めさせたのか下男に聞いてきました。下男はハンカチを取り出し、匂いを嗅がせました。


ある男は言いました。


「俺はこの匂いを知っている! 異臭姫のものだ! 」


この話は女王の耳にも届きました。女王はなんと不潔な物を王子に嗅がせたのだとカンカンに怒りました。下男は捕らえられました。



下男は国外追放されました。それでも女王の怒りは治らず、ついには異臭姫にまでもを追放してしまいました。

旅立ちの日、彼女を見送る者は居ませんでした。

しかし、異臭姫の馬車が通る度に匂いを残して行くので、民衆は彼女が自分の家の前を通った事を認識出来ました。



目覚めた王子は異臭姫のハンカチを毎日スーハースーハーしてました。なんと! 王子は目覚めてしまったのです!


遂にハンカチだけでは我慢出来なくなった王子は、持ち主を探す事に決めました。

これは一体誰の物かと臣下に聞くと、彼は異臭姫の物だと素直に言いました。そして彼女は女王によって国を追放されたとも。


王子は女王の理不尽さに怒りを覚えました。たとえ自分を愛するが故の行動だとしても、罪のない彼女を国から追い出したのですから。王子は異臭姫の匂いを嗅いでるうちに恋情を持つようになっていったのです。


王子は異臭姫を探す旅に出る事にしました。女王は酷く反対しました。しかし王子の意思は変わりませんし、遂には継承権を放棄しました。彼は第三王子だったのであまり問題にはなりませんでしたが、王子を溺愛していた女王は酷く悲しみました。



異臭姫の手掛かりはハンカチだけです。探すのは困難だろうと王子は思っていましたが、思いの外、サクサクと目撃情報が入ってきました。なんでも、彼女の匂いは一度嗅いだら忘れられないと皆一様に言うのです。


王子は情報を元に旅を続けました。

ある時は熱い砂漠の中を。

ある時は寒い氷山の中を。

ある時は酷い嵐の中を。

ある時は露出狂ばかりの国の中を。



そして遂に異臭姫に出会う事が出来ました。

彼女は遠い異国の深い森の中で静かに暮らしていました。

王子は彼女から発せられる匂いで直ぐに分かりました。そして喜びで泣いてしまいました。


「大丈夫ですか? すみません、私臭いですよね。」


直ぐに消えますから。と悲しげに言う異臭姫を王子は抱きしめました。


「私は君の香りが大好きだ。ずっと探していた。もう絶対離さない」


異臭姫は誰かに抱きしめられたのは初めてでした。嬉しくて嬉しくて涙がこぼれ落ちました。




森の奥深く、そこで王子と異臭姫は末永く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。


お読み頂きありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 童話でありそうなパターンですが、テンポよく楽しく読ませていただきました。 「なんと! 王子は目覚めてしまったのです!」には、大爆笑でした。ちゃんとダブルミーニングですね。
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