プロローグ1
目の前に広がる狂気的な光景
私とお姉ちゃんは、リビングに併設されているクローゼットの中で身を隠していた。
昨日まで皆と楽しく過ごしていたリビング
今では黒装束を身にまとった人たちの死体と血で、まるで地獄絵図
そして満身創痍で戦う父と母
「パパ……ママ……」
恐怖に耐えかね、私は声を出してしまった。
「大丈夫だよ、リンネ。目を隠し耳を塞いでればこんな喧騒すぐ終わるよ。」
そう言いながらお姉ちゃんが、バンダナで目隠しをしてくれた。
(暗くてよく分からない……黒色なのかな?)
「ありがとう、お姉ちゃん」
「耳は、自分で塞いでて」
「……うん。分かった。」と言って耳を塞いだ。
──暗い……。怖いよ……。
私の中で不安が大きくなる。
その直後、一際大きな爆発音と爆風が巻き起こった。
「キャッ!」
クローゼット越しに吹き飛ばされたが、服がクッションになったおかげでダメージは無かった。
状況確認のためにバンダナを外す。
──目の前でお姉ちゃんが倒れている。いや、お姉ちゃんだけじゃない、ママも倒れていた。
あまりの恐怖に声が出ず、声にならない声で泣いた。と、同時に何もできない己の無力さを呪った。
「ママ……お姉ちゃん……大丈夫……?」
「──ッ!……私は大丈夫よ。ミクは気絶しているだけだわ。」
苦痛と笑顔の入り混じった顔でママが言う。
「イチカァァァ!俺がこいつらを食い止めてる間に、リンネをワープさせろぉ!」
「──分かったわ、でも、もう力が殆ど残っていない……。上手くいく確証はないわよ!」
「大丈夫だ!イチカならやれる!」
(あいつがいてくれればよかったんだが……)
「──リンネ、こっちにおいで。私の手を握って。」
ママの笑顔はどの状況でも勇気をくれる。
私は恐怖を押し殺しながら、ママの手を握った。
「リンネ、貴女だけでも、生きて。」
「──え?」
──須臾の虚無
──これは、この物語は、少女の復讐
ただ、それだけの物語なのかもしれない。