第二話「聖剣式移動方法」
「着いた!」
≪嘘だ~。≫
最後の転移触媒でたどり着くことができたのは帝都を何とか視界に納めることができる高い山の上だった。
くそっ!あと一本あれば最後まで行けたんだが!
まぁなくなっちまったもんはしょうがない。
「急ごう!ヤバイ気配がする!」
≪戦闘以外はなにかとサポートできるかと思います!あと覚えておいてください!今日のは貸しです。≫
うん、何かちょっと恨まれてるね。怖いぞこの剣。
「一様できることを聞いておこう。」
≪切れ味は抜群です!≫
ああ、そういう使い方はしていいんだ。
「ちょっと使うぜ!」
山を降りながら手近な木を一本切ってみる。
聖剣ではじめて切ったものが山の木って・・・。
んでもってスパッと切れた。断面とかヤバイ、ツルツルだ。
「んじゃショートカット!《水よ!吹き出せ!激流となって押し流せ!リバーランス!》」
斬り倒した木に乗る。それとほぼ同時に地面から大量の水が吹き出してきた。
《すごいですね。地脈から水を引っ張り出すなんて。》
「このまま麓の河まで降りる。」
水はあっという間に満ち、新しい川のように斜面を流れ始めた。切った木を押し流す程の水量だ。
麓まで一気に流されていく。
「次の準備だ。《一続きの空間を否定し、『そこ』と『ここ』を繋ぐ、彼方よ、遠く、遠く扉をひらく、永く、しかし刹那に・・・・》」
魔力を操作し、同時に体内の気を練り、さらに聖剣に聖力を込める。
《・・・・また、ですか。》
聖剣が聖力を循環させ維持してくれるのでとてもやりやすい!
「・・・・・っ!」
詠唱中はたの言葉を発すると魔法が途切れてしまうので返事はできないがアルディーネ察してくれたようだ。容赦なく気で強化した豪腕で聖剣をぶん投げた!
「《ディメンションゲート!!》」
空間の連続性を無視しマーカーになっている呪符布を目印に転移魔法を発動する。
聖剣はもうずいぶんと遠くに飛んでいった。
今、モルゲンロート帝国の領内はおそらく世界改変の影響下にある。空間が独特の不安定感に満たされているのを感じる。
だが聖力を満たした空間は本来の安定した姿を取り戻す!だから聖力を込めた聖剣の軌跡は浄化されそこを転移魔法で行き来できるのだ。
ちなみに魔法の効果も聖力の影響でかき消されてしまうのだがそこは出力で強引に突破している。
この方法での移動が連発できればいいのだがあの高級触媒でもないと魔力の消費がとてつもないのだ。今の魔法発動だけで自分の魔力の半分も持っていかれた。
あと転移までのためが長いためタイミングを合わせるのが難しいというのも連発できない理由ではある。
一瞬で視界が切り替わる。
聖剣の力を使いかなり広い範囲に聖力での浄化を施したので飛んでくる剣のかなり手前に転移できる。
自分で投げた剣をキャッチするのは奇妙な感覚だがさっき八回もやったんでいい加減なれた。
パシッ!うんナイスキャッチ。
《曲芸みたいな魔力操作ですね。気力、魔力、聖力をここまで巧みに使い分ける使い手はちょっと記憶にないです。》
「そのぶん容量が少な目でね。瞬間的な戦闘能力は自信あるんだけど長期戦は苦手なんだ。」
かなり距離を稼いだ。しかしこれ以上は足で距離を稼ぐしかない。