第五話「街を出よう!」
どうもアーサー・アルバトロスです。今日の朝はにぎやかであります。
ガッシャーンと部屋の窓ガラスを割って入ってきたのは清々しい朝に似つかわしくない黒ずくのやつ。
「せい!」
とりあえず退場!顔面にワンパンくれてやったぜ。
ドアノブが回る音・・・。
「《雷よ》。」
パンと軽くなにかが弾ける音がして廊下で二人ほど人が倒れる音がした。
「ん~、まだ本調子じゃないが問題ないか。んで?おたくはどなた?」
「アルディーネです。この姿でお会いするのははじめてですね。」
ふむ、白髪のゴスロリ少女がいる。
刺客が乱入してきたが動じた様子はない。
「とりあえず朝飯にしようかと思うんだか一緒にどうだ?」
「ご相伴に預かります。」
「カタイカタイ、気楽に行こうぜ。」
「地ですのでお気になさらず。」
ふむ、なかなか育ちがいいらしい。それとも馴れ馴れしすぎたかな?まぁいつも俺はこんな感じだな。
「おっと、追加か!」
扉を蹴破って入ってこようとしたやつがいたので扉のピッタリ反対側から蹴る。
「ぎゃああああああああ!!」
扉の反対側から悲鳴。他の客に迷惑だろうが!
朝だぞまったく。
「手加減なさっているのですか?誰も死んでませんよ?私の子となら気にせず・・・。」
「ああ、チガウチガウいつもこの手の類いはこうやって追い返してるんだ。不殺って訳じゃないが手加減の練習みたいなものかな。」
よし着替え完了。防具はダンジョン攻略で潰しちまったから麻の服の上下だけ。ブーツはいいやつだ。基本旅暮らしだからな。丈夫なものが好みだ。
「よしここを離れよう。こうバタバタしてたんじゃ飯も食えない。」
「わかりました。剣に戻ってますね。」
「ん?別に大丈夫だぞ?久しぶりの外だろ?誰も殺さないから安心してついてこいよ。」
そういって俺は歩き出した。うしろから子どもの足音がする。
おっクロスボウか?森人じゃないな?
身体の内側で練った気を手の平に集中させる。
飛来した矢を掴む。
「ふむ、面倒だな。《スパーク》」
向かいの建物から狙撃してきた射手を雷の魔法で焼いた。
もちろん手加減する。
そのあと廊下の曲がり角、階段の踊り場で待ち伏せを受けたが適当に流した。
もちろんみんな気絶している。
おっとフード、フード。宿屋の主人は無事な様子だ。良かった。
「すまんな、騒がせた。取っておいてくれ。」
「あ、ああ。」
耳ながの森人は俺がほおった小さい皮袋を受けとるとひきつった笑みで俺達を見送ってくれた。
「災難でしたね。」
「よくあることさ。」
「いえ、あなたではなく宿屋の主人です。」
「ああ、うん、悪かったとは思ってる。」
「これからどうなさるので?」
「てきとうに屋台で買い物かな。ある程度いるものを揃えたらそのまま街を出る。」
このあとはダイジェストで、
朝食!屋台ごとドカン!弁償弁償!
買い物!店ごと方位!突発突発!
昼食!毒物混入!かまわず完食!
おやつ!刺客とおいかけっこ!逃走逃走!
「ああ!私のアイスクリームが!」
また買ってあげるからこの世の終わりみたいな顔しないで~。
街から退散!門の閉鎖だと!ちょこざいな!
「とう!」
流石に壊すと困る人が多そうなので飛び越えてみた。アルディーネ?肩車してみた。
「ふう。なんとかなったな。」
「すさまじい力業でしたけどね。」
「鍛えてるからな!」
サムズアップ!からのないすジト目!
うん。今日はいつもよりひどかった。ごめん巻き込んだね。
「はぁ、まぁいいですけどね。流石に今度からは剣に戻ります。」
「悪かったよ。はい、アイスクリーム。」
「っ!!いつの間に!」
甘いものが好きらしい。戦いが嫌いだといったり可愛い服を着ていたりなかなか女の子な感じだな。
「それにしてもあきれる資金力ですね。自分で壊したものや戦闘の捲き込み被害の負担を全ておっていましたが大丈夫なのですか?」
「普段は滅多に金を使わないからな。食べる時と武器とか防具を新調するときだけさ。それにみんな頑張って生きてるんだ。横からぶち壊しにするのはやっぱり気が重いよ。せめて弁償だけはするようにしてる。」
「・・・・。」
まぁ師匠からの受け売りなんだけどな。
さてと、まだ街から近い。距離を稼ぐとしよう。
「アルディーネ、悪いが食べ終わったら剣に戻ってくれ今日中にはあの山の麓に向かう。」
「あんな遠くまで?」
おう、ダッシュだ!