第四話「宿屋の夜」
私は聖剣エクスかリバーの化身アルディーネと申します。一身上の都合によりダンジョンを作成し引きこもっていました。ええ引きこもりです。
300年位ダンジョンにいたので世界の情勢とかなんにもわかりません。
お姉さまたちは元気でやっているのでしょうか?
「すー、すー、」
横でぐっすり眠っているのは私のは新しい所有者候補のアーサー・アルバトロスさんです。
私を手にいれるために馬鹿みたいな難易度のダンジョンを突破してきた凄腕です。
あのダンジョンは私の戦いの記憶をもとに造られていて私の所有者がいままで倒してきたモノたちが出現します。
それこそ私抜きではクリアできないような難易度なのですがこの人は突破してきました。
《馬鹿な人ですね。》
私のわがままを聞いて契約書まで造ってくれた人です。悪い人ではないのでしょう。彼の使っていた『雷帝の剣』を見ればどんな風に私達を扱う人なのかわかります。半壊状態でしたがとてもよく手入れがされていました。
《私にはそこまでして手にいれる価値はありませんよ?》
自分の髪をいじりながら考える。彼は何者なのか?
名前は聞いたけど所属は名乗らなかった。
フリーの剣士?傭兵?冒険者?どれもしっくり来ない。
《勇者?》
何人かの勇者に使われた事がある。
必ずしも適合する訳ではないが。
《それにしてもすごい回復力ね。》
大気中の魔力を吸い込み取り込んだ食物が気を充実させていくのが分かる。いままでの所有者の中でも一二を争う力を感じる。
この姿で活動できることはまだ話していない。たださっきみたいに≪ブレインジャック≫の魔法とかで無理矢理会話させられるのはできれば避けたい。
《早めに話しちゃった方がいいわよね。》
「ん~。」
とりあえず彼が起きるまで待とう。
この姿でいるときに出来ないことが二つある。
一つは聖剣から離れすぎること。身体を維持できなくなり聖剣に戻ってしまう。
二つ目は聖剣を持ち運ぶこと。モノに触れたり飲食すらできるが聖剣を持つことが出来ないのだ。私だけでは移動できないのだ。
そろそろ夜が開ける。彼が目を覚ます。この姿のことを話そうと思う。