第三話「秘密の報告会」
「んで、その綺麗な剣がしゃべる聖剣様なのかい?」
場所はとある街の酒場だ。
俺のとなりに座っているのは初老の女だ。ローブ姿の魔法使いで年齢を感じさせない体つきをしていて今でも十分美人に見える。
御歳102歳、人属、名前はディアナ・ディモンズ、特技は魔法全般、備考、好色家。いい年なんだがバイな上にいくつでもいける口らしい。俺も危なかった。
あの後は簡単だった。脱出用の転移陣で外まで送ってもらえたのでディアナ婆さんと合流。そのまま転移魔法で拠点にしていた街までいって現在に至る。
「俺の頭を経由したら多分しゃべれるぞ。」
「面白そうだね、どれ《ブレインジャック》!」
「《ぎゃああああああああ!!》」
頭に衝撃が走る。うう、まだ全く回復してないのにこれは酷い。
《ブレインジャック》は思考を操る魔法だが応用技があり、同時行使して操る人間が他者の思考を仲介することで複数人で思考のみの秘密の会話が出きるのだ。
ちなみに低魔力症で酒も飲んでいないのに頭が痛い、俺の隣の婆さんが犯人だ。
(婆さん!行きなりやるな!)
(かっかっかっ油断大敵さね。)
(え?え?なになに?声が聞こえる?)
頭の中に声が響く。最初の接続は乱暴だが後はスムーズに会話できた。これもテクニックがいる難しい魔法技術だ。
(さて、無事に聖剣様をてにいれたわけだがお前さんの言うところの問題ってのはなんなんだい?まさかしゃべるから使いたくないとは言わんよな?)
(ああ、その事なんだ。どうも使われたくないらしい。)
(ほうほう、悠久の時を生きる聖剣様言うことが違うね~。んで?どうやって連れ出したんだい?)
(契約です!戦闘には使用しないこと!これを条件に契約書を書いていただきました!)
そう、実は聖剣のあった広間で契約書を書いたのだ。物証がほしいと強く要望されたのでダメになってしまった皮鎧を四角く切って契約書に仕立てたのだ。アイテム持ち込み不可なので他に書くものがなかった。
婆さん、腹を抱えて笑うのはやめて、俺も何やってんだろうな~とは思ってるから。
あと、ちょっと視線集めてるから。ここに俺がいるのばれるとちょっとヤバイから。
(んで、これからどうするんだい?)
(とりあえず『雷帝の剣』の修理を依頼しにあいつのところへ。)
(護衛に誰かつけようか?)
(今はみんな忙しいだろ?いいよ。適当な剣を買ってくから。)
(まぁ気を付けとくれ。それとこれは耳にいれておきたいんだが、あんたを探そうて動きが帝国内で持ち上がってる。教会と中のいい貴族が騒ぎ出してるみたいだ。近々捜索隊が組まれるとさ。人気者は辛いね~。)
(・・・思ったより早かったですね?)
ちょっと活動しにくくなりそうだ。はぁ面倒くさい。
俺は席をたった。二人ぶんの金を払う。
「無理に相席させてもらって悪かったな。」
「おごってもらったんだ。文句は言わんさ。」
あくまでも他人。そんな演技を交えつつ酒場をあとにした。
外は雪が降っていた。俺は被っていたフードを深くかぶりなおす。
辺りは耳の尖った森人属が行き交っている。
ここは北の魔法王国ゲシュテーバ、聖剣の奉納されていた厳罰の迷宮に一番近い街だ。
森人族はかなりの長寿だが絶対数がたの種族より少なく国の規模もそこまででかくない。国というよりは街と表現した方がしっくり来る。
そして地元民ですらここを街と呼んでいたりする。
《これからどうされるんですか?》
「もう遅いし宿屋で一休みだ。流石に魔力も気力もこの短時間じゃたいして回復しないしな。」
約一週間のダンジョン攻略、アイテムが持ち込めないので水は魔法で確保し食料は途中でなんとか食べられそうな魔物を食べて食い繋いだ。
さっきの酒場で食べたのは久しぶりのまともな食事だ。あとは休息をとればそこそこ回復するだろう。出発はその後だ。