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それは遠い海の彼方、白く大きな雲の向こう側にあるという。
空の国。私は見つけた。
ひんやりとした風が頬を撫でる。海の匂い、海の温度。眼下の海は水平線の彼方へと、どこまでも広がっている。
私は空の中にいる。空の淡い青は、少し高くなってきた太陽を戴いて、水面のような透明度を湛えている。青黒い海とのツートンカラーを遮るものは、この洋上にはただ一つだけ。
私は大きく羽ばたいた。もっと高度を稼がなければならない。脚の翼を目一杯広げて、腕の翼で空気を撃つ。尾羽根をちょいちょいと動かして、掬い上げるような円弧を描きながら、私は上昇していった。
正面にもくもくと立ち昇り、のっしりと横たわる巨大な白雲。そして、雲に抱かれた空の国、白亜の航空都市へ向かって。
空を飛ぶための、私の翼は五枚ある。
羽ばたく翼は、腕の一対。肘の下から、ぴんと伸ばした第六指の先まで、白い羽毛が生え揃う。
第六指は腕の半分、風切羽も腕の半分ほどの長さ。肘までの羽毛も含めて、腕一本と半分の翼だ。
風を受ける大翼は、脚の一対。膝下から、前へ伸ばした第六指の先まで、大きな羽毛が密生する。
脚の第六指はとても長い。垂直に立てれば、足元から、指の先はおへそまで。羽の先は肩まで届く。これらが、前へ屈曲した巨大な主翼を構成する。
最後の翼は、尾。お尻から地面に届いて余りある長い尾は、幅広で長大な羽毛を束状に生やしている。羽毛は好きな方向に開くことができ、芯である尾そのものと合わせて、自由自在の尾翼となる。
振り向いたり、転がったり、色々な動きをするとき、この尾翼が役に立つ。
私の身長は120センチほど、体重は20キロ足らず。その辺の鳥よりは大きく、重い。そんな私でも、この五枚の翼で、空を飛ぶ。
けれども、空というのは生半な環境ではない。
高空の薄く冷たい空気。体温を奪い続ける風。照りつける太陽光線。雨に降られ、嵐に煽られ、雪に凍え、雹に打たれる。時には稲妻も走る。
そうした一切を、弱いものなら不快でないほどに、強すぎるものも致命的ではないほどにまで防いでくれるのが、私の外装だ。
そしてまた、視覚、聴覚、嗅覚といった探知能力。更には平衡感覚や速度感覚といった、飛行に不可欠な知覚をも強化してくれる、翼にも匹敵する必需品でさえある。
スクール水着だ。色は白い。
スホーイ47があまりにもかっこいいので、そういう鳥っ娘を提唱したくなりました。
飛べるかどうかは知りません。また、飛行に四肢を全て使わなければならないという構造上の欠陥があります。
でも、かっこいい。
前進翼とカナード翼に痺れる同志諸兄におかれましては、非才なる私に代わり、是非とも啓蒙を進めていただきたく思います。
また、前進翼を活かした設定に先例の心当たりがありましたら、ご教授いただければこの上ない幸いです。