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幽霊ユウコはイイ女  作者: ボンチュー
二章 「ココロハ」
8/8

8.ココロハ

意識が戻ると二人の友人が

心配そうに寄り添っていた。



ユウコの彼氏から新が得たモノは

成仏の手がかりには一切ならない。

ただ、もっと大事なモノ。


小さな漢気と確かな友情をこの手にする。



第2章 終了です。

引き続き宜しくお願い致します。




新を抱えてる間、歩夢の頭は自責の念で溢れていた。


もっと早く気づいてやれてれば。

早くここに来てれば。


自らを責める言葉はいくらでも浮かんだ。


























「ハァハァ、、ごめん、あ、歩夢…服、ゴホッゴホッ!汚れちゃう、からっ!」


「おい!んな事気にしねーしもう汚れてっから!」


起き上がろうとする新を制止する。


「なん、なんで…来て、来てくれ…ゲホっ!俺、タツヤくんに…」


「良いって!今はあんま無理して喋んな!

あとで聞くし、話したい事俺もあっから!な!」


新はごめん。と小さい声で伝えた。












児童公園の水道は壊れていた。

しばらくしてから買って来た水で

とりあえず顔を洗い泥と血を流した。

タオルで拭うと、拭いた面はしっかり赤くなった。


「イテッ!イテッ!イテェっ!」


続いて口をゆすぐ。

透明の水は吐き出す度に真っ赤になった。

鉄の味が口を満たした。


「うわ、口も…しみるっ!」


何度ゆすいでも水の色は赤だ。


「何回もやると傷開くかもしんねーよ。そんなもんにしとけ」


歩夢の忠告を受けうがいをやめた。


「新くん…目は見えてる??」


アスカは終始不安そうだった。


「え?当たり前だろ(笑)視界はすごい狭いけどね(笑)」


「耳は?耳は変じゃない??」


「ん?ああ、気が付いたすぐは耳鳴りがしてたけど、今は大丈夫だよ。」


「他わ?他は変なとこないの?

お腹が痛いとか、頭が痛いとか!」


アスカは1つずつ不安を減らしたくて

質問責めが止まらなかった。


「ああ、頭はすげー痛いね。ズキズキする。

吐き気もある。あとは、顔が熱い。(笑)

まだグラグラしてるからもうちょい立てそうにない。あと、鼻折れてるせいか口呼吸しかできねーな(笑)ごめんね、夜なのに…あ、俺は置いて帰って良いから!」


「帰れるわけねーだろ!」


2人同時に、即答された。






とりあえず洗えた傷口には消毒をしてよく拭き取った。

顔はとにかく熱を取るタメに冷えピタを3枚貼った。

見た目のアホっぽさは酷かった。


















しばらく歩夢の膝で横になっていたら

また眠ってしまった。

2人は新を起こすことはしなかった。








「歩夢、ありがとう。もう大丈夫座れるよ」


体を起こす。最早どこが重症なのかわからない。そこら中が痛かった。


「…ほんとか?無理はすんなよ?いつでも寝て良いからな」


「うん、大丈夫。サンキューね。どうしてこうなったかは聞かないでくれ(笑)カッコわりーから(笑)」


「かっこ悪くない。」


間髪入れずにアスカが言った。


「なんでこうなったのかわかんないけど

でも聞かなくてもわかるもん。

新くんがかっこ悪くないってこと!」

アスカは大きな瞳真っ直ぐ新に向け

舌っ足らずな口調で言った。


「お前が言いたくねーなら無理には聞かねーよ。怪我もひどいしな。ただなんにせよ1ついわせてくれ…すまん。」


「え?」


「もっと早く来れなくてすまん。

俺のせいだ。俺のせいで新はやられた。

学校でも冷たい態度とった。

余計お前を悩ませた。俺が悪い本当にすまない。」


歩夢は新に何も言わせない勢いで

思いの丈を言い切った。

後に続いて同じようにアスカも謝った。


「いやいやいやいや、2人ともなんで謝る?まっったく悪くないから!とりあえず、仲直りは出来たって事だよね?(笑)なら良かった、、それだけでボコられた甲斐あるわ」


「バカっ!冗談でもそんなこと言わないでよ!」

アスカは本気で注意していた。






「タツヤとは何を話してたんだ?」


「話せば長いよ?」


「長くて結構。」



時刻は21時を回った。
























話は2時間前に遡る。

新は公園に着くと

タツヤの到着を待った。


5分過ぎ、10分過ぎ、15分過ぎ

通りの方から大きなバイクの音。



公園の外で止まった。

顔はメットで見えないがアレがゆう子の元カレ。

タツヤだろう。



新は座ってたベンチから立ち上がり

バイクの方に軽い会釈をした。



メットを置きバイクから降りて新に近づく。

体つきは新より一回り以上は厚い。

満遍なく日焼けしている。

遠目から見た時和柄の7部Tシャツを着てると思ったが

肘あたりまで刺青が入っていた。

ショートウルフヘアーで金髪。

覚悟はしていたが想像以上に威圧感があった。

タツヤが開口一番に言う。


「お前誰?ゆう子の今カレ?今更俺に用ってなんなん?」


完全にタツヤペースで会話の幕が開いた。

威圧的に問い詰めに口ごもる。


呼び出した理由はもう伝えてある。

ゆう子が亡くなったから、親しい関係だった人から寄せ書きを集めてる。

タツヤにも書いて欲しい。という程だった。

…コイツ覚えてねーのか?


「あの〜、、急に呼び出してすみません、寄せ書き、書いて欲しくて」


新は形式的に用意した真っ白な色紙を出す。


「あー、マジでこれだったんだ(笑)ダリィわ。書かなくてい?大体元カレだし俺(笑)しかも1人目??」


「あ、コレ三枚目です!ゆう子ちゃんは相当好きだったって話聞いてて…思い出もある人だと思ったんで…」


「は?俺振られてんだけど(笑)思い出って…あーあいつの処女奪ったとかそーいうこと?(笑)いやーあいつヤリマンだったかんなー!クソビッチとか書きゃいーの?」


「いや、別にそーゆー話聞いてないんで」


新はカッとなってぶっきらぼうに言った。


「あ?」


すかさずタツヤの眉間にシワがよる。


「あの、別れた後ゆう子ちゃんにメールしたって聞いてたんで、やっぱり好きだったから寄りを戻…」


ガッ!胸ぐらを掴まれてボタンが取れる。

顔を上げるとキスできるくらいの距離にタツヤが。オエ…。


ちゃんと見れず気付かなかったが、

タツヤは相当デカイ。

新ですら目線が上がる。185、6はありそうだ。


慌てて両手でタツヤの手首を掴むが

解くことが出来なかった。



タツヤは勝ち誇ったニヤつきを見せて言う。


「なに?お前ゆう子に惚れてたの?(笑)俺が忘れられないって振られちった?ダサ。メール?あーしたね。そんとき超暇で、あいつも暇だろうから抱いてやろーと思っただけ。お前ムカつくから、俺は寄せ書きなんて書かねーし、お前に何か伝えてやる気もねーよ。あいつはセックス大好きのヤリマンだった!以上!」


そう言うと新を思い切り突き飛ばし

バイクの方へ歩き出した。


しょうもない男だ。なんで付き合ってた?

その疑問と同時に怒りが湧く。












体は勝手に動いた。

と言いたい所だが実は勇気を出して動かした。

恐れはしっかりあって勝てる気もしなかった。

でもそうせずにはいられなかった。






「おい、待てよ」

タツヤの肩を掴む


「あ?」


振り向いた顔面に一発。

渾身の力を込めて、とまでは出来なかったが

タツヤをぶん殴った。


「ゆう子ちゃんは、お前との半年間は、幸せだったって言って…


ボゴオッ!!!


自分の身からでた音とは思えなかった。

言い切る前に新の顔面は吹き飛んだ。













右拳が左のコメカミにクリーンヒット。

一瞬片目がブラックアウトを起こす。

拳がヒットした箇所から「ブチ」っと

何かが切れた音がしてフラつく。


が、倒れたらどうなるもんかわからない。

必死に持ちこたえる。


なんとか踏ん張った直後、

ノーガードの顔面に続いてアッパーが入る。

景色が夜空へ"傾いた"。赤い血が散っている。

鼻は瞬間で折れた。血が噴き出す。

同時に目に涙がたまり視界はボヤけた。


倒れそうになったがタツヤの両手がそうはさせない。

しっかり新の体を掴んで倒れさせてはくれなかった。


イヤに冷静な声でタツヤは言う。


「お前、俺の顔面殴ったろ?

突然呼び出して、喧嘩売ったのお前だからな?タダじゃおかねーよ?死ね?」


手のひらで軽く小突けば倒れる状態の新を

わざわざ足をかけしっかり投げ飛ばした。




たった二発だが思いっきり殴られると

人間はこんなにも脆いものだったのか。


なんの抵抗も出来ないし力が入らない。


まだ思考回路が停止してないことが

新は不思議だった。


自分の打たれ弱さにも驚いた。



ろくな受身も取れず地面に倒れこむ。

背中から綺麗に落ちたせいか、

一気に息が苦しくなり吐き気が込み上げ嗚咽した。




このまま倒れたらマウントを取られて殺される。



なけなしの体力で上体を起こそうとした。

が、同時にタツヤがヒップリフトで新の腹をしっかり潰した。





「オゥエェッッ!!」

胃液と血と唾液が混じった何かが

新の口から吐き出た。







「きったねぇなぁっ!!」


ボゴオッ!


マウントを取られ、

片手で両手首を抑えられ、

抵抗できない状態でもう一発、

がっつりストレートを食らう。





「あぁ?クソガキ。聞いてんのかおいコラ。ゆうこちゃんわぁ〜…じゃねーよ。

いつの話持ち出してんだコラ。

どんな思い出?は?(笑)手錠かけて犯した記憶しかねーよボケェッ!!(笑)」


ボゴオッ!

再び顔面に一発。




余りにも弱い相手でタツヤは楽しくって仕方がない。

饒舌モードに切り替わり

新にもちゃんとわかるように大きな声で話す。



「あいつ俺を満足させるためになぁ、安全日とかわかる本まで買ってたよ!(笑)今日は生でしてもヘーキな日だよっ♡とか言ってな!!マジウケるよなぁ!健気だよなぁ!!」


タツヤは新から立ち上がると

面白くって笑いが止まらなくなっていた。



正直もう動けない。それに動けたとしても、

これ以上殴られたくないという弱細心が

新を満たしていた。

が、まだ終わらなかった。



タツヤは新の足を脇に抱え込み

ジャイアントスイングの体制をとる。


さすがに無知な新でもわかった。この技で遊具とかに投げつけられたら死ぬと察して、足をバタつかせ最後の抵抗を図る。



「じゃかましぃわぁっ!!」


ボゴオッ!


腹に一発蹴りをくらう。

くの字に折れた新に、なす術は無かった。



バイト上がりで何も食ってない腹からは

胃液しか出てこない。

体は自然と涙を流した。

同時に ゆう子、お前、男を見る目無さすぎじゃね?クリビツだぜ…。と思った。




グルグルと勢いよく回転し、それっ!と投げ飛ばす。

反動で見事に3mは飛んだだろうか。

新の意識は間も無く終結を迎えそうだった。





「おい、クソガキィ。」


タツヤは新の頭を掴み満足げな笑みを浮かべて告げる。



「よくわかったか?俺はあいつになんの未練もねーし、思い出もクソしかねーよ。付き合った理由なんてねーしな!あいつが中学ん時俺の地元の奴に絡まれた。そいつを俺が今日のオメーみてーにボコったら、アイツは俺に惚れた!(笑)俺は女の犯し方をあいつで学んだ!(笑)あいつもきっと俺でいろいろ勉強しただろうなぁ!そんだけだ!」




最後に新を地面に叩きつけると

立ち上がってタバコに火をつけた。



「健気なバカビッチ(笑)以上」


うっすら聞こえた、タツヤの最後の言葉。















新の自転車の方へ向かうタツヤの後ろ姿が

少しずつボヤけていく。


人をバカにした高笑いの声がして

ゆっくり音が遠のいていく。


真上の空、星の光が徐々に霞んで

意識を失った。


夜の公園に大の字で沈む。

なんだかどこかで見た景色な気がした。

























タツヤは新の財布をあさる。


「3000円て、もっと働けやボケェッ!!」





一通りサンドバックして気持ちよくなり

その上3千円もゴチになる。

わりかし悪くねーや。

なんて思いながらバイクに跨った。



どっかから叫び声がしたが

近所のめんどくせー連中かなんかだろう。

無視をして走り去った。





















そして目が覚めたら歩夢とアスカちゃんがいた。話し終えて時刻は21:30前。


歩夢の顔は最初に新の胸ぐらを掴んだタツヤの顔と似た形相になっていた。



今にも走り出しそうな歩夢の手を

アスカちゃんは涙目で握り

新を抱きしめそうな勢いで身を乗り出している。




「ちょっと、アスカ送ってくる。15分くらいで戻るから、新待てるか?」


「え、あ、いや、自転車で帰るからい…」


「いや!新くんの自転車はアスカが乗って帰る!歩夢は新くんを送り届けなさい!」


「え、二人ともちょま、」


「お前は黙って言うこと聞け。誰が助けてやったと思ってる」



二人を止めることは出来ず、

3人で帰り支度を始めた。




言葉を交わさずとも以心伝心してるのか

アスカと歩夢は目配せをし

新の自転車に跨ったアスカを見送った。







「今日お前ん家泊まっていーか?」


「え?別にいーけど…」


「よし。ぜってー俺の背中離すなよ。バイクの後ろしんどい時は3回背中叩け。すぐ止める」


歩夢の言葉にコクっと頷いた。


「にしてもひでーやられ方だな」


あらためて傷を見て歩夢が言った。


「…歩夢。死んだ女が見えて、ソイツに頼まれて、成仏させる為になぜか元カレに特攻してボコられて、友達カップルに救われてる俺って…」


「新、それ以上言うな。相当ぶっ飛んだ話だけど、後で聞く。ちゃんと聞く。(笑)」



ビッグスクーターのエンジンが公園に響く。







正直ダメージが半端じゃなくて

バイクの後ろに乗って姿勢を保てるか不安だった。



生ぬるい風は傷にしみた。



















トモダチと見上げる夜空の色は

ハイボクが映す綺麗な色。








第2章 ココロハ 終


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cont_access.php?citi_cont_id=171123131&s こちらからも是非!
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