6.クルシミ
ゆう子の過去が少し見え始める。
ゆう子と過ごす不思議だけど笑えるな日々で生じる感じた事ない気持ちの変化に戸惑い始める。
そして、お通夜の夜。
ゆう子のこぼした涙に新は小さく誓う。
新登場人物
ゆう子のお母さん
ゆう子のお父さん
赤城光司
新なバンドメンバー ベース担当
今朝、母親にゆう子の声が聞こえた事が
ずっと新は気がかりだった。
理由が全く見当つかなかったからだ。
とは言え、
そもそもゆう子が自分の側に出てきた理由も
謎な訳で考え出したらキリがなかった。
学校についていつも通り時間が流れた。
特にゆう子の気配を察知する生徒はおらず
下校の時間になった。
歩夢が新曲を作ったらしく
相当手応えがあるのか
早くスタジオに行きたがっていた。
相変わらず元気のないアスカちゃんと
アスカちゃんに同調して
元気のなくなっている2人を慰めながら
歩夢が言った。
歩夢「新、今日ピック集めるから2枚持ってきてな!」
新は頷いて、
隣で落ち込んでいる友人を
悲しげに見つめているゆう子に目配せし
学校を後にした。
一度帰宅してギターを背負い、
再びスタジオをに向かう。
ゆう子「…もやし、なんかさーウチすごい申し訳ない気持ちになってきた。」
新「急にどした。」
ゆう子「皆可哀想に見えるの。」
切なさと悲しさの狭間の様な不思議な表情でゆう子は言った。
新「うーん、お前が一番可哀想なはずだけど」
ゆう子「う〜ん、そう、そーなんだけど!いや寂しがってくれるのはさ、大事に思ってくれてたんだなーって思うよ!ありがとって思う!」
新「うん」
ゆう子「でもね、ずーっとあーして落ち込んでるの見るとさー、、、」
新「じゃあなに?別にゆう子死んだけど悲しくないしー!笑おー!の方がいい?」
ゆう子「いやそうじゃなくって!!そうじゃないけど!」
新「ありがとって思う、それで良いじゃん。充分だろ」
ゆう子「う〜ん。」
携帯越しの会話にも慣れてきた2人。
気づけば行きつけのスタジオについていた。
3年前にオープンしたこのスタジオは
大きなロビーがある綺麗なスタジオで
黒、白、茶色のモダンな作りになっていた。
ロビーには5〜6人がけのソファ席が4つと
カウンターが10数席、テーブル席が3つ
待合には充分なスペースで
喫煙スペースも設けられているため
新やロッシ(非喫煙者)にも
歩夢や光司(喫煙者)にも居心地は良かった。
ゆう子「え!スタジオってこんな綺麗なんだ!オシャレ〜!」
いつものソファ席にもう3人が来ていた。
一目でわかる。不穏な空気。
新「おつかれー…、どったの?」
歩夢がすごく不機嫌だ。
光司「あ、新くん!お疲れっす。いやー、ちょっと…」
歩夢「ロッシ、お前こないだ俺が貸した3000円もまだ返してねーよな?んで今日も2000円貸してって、いつ返すんだよ!」
ロッシ「今月!明後日給料日だから!ほんとごめん!」
歩夢「ごめんじゃねーよ!俺のは別に良いけど、なに?光司に借りるってどーゆうこと?年下だぞ!」
光司「歩夢さん!いいんすよ!俺稼いで…」
歩夢「よくねーよ!!」
ロッシ「ごめん。」
歩夢「俺だとキレるからって後輩に金借りようとした根性が気に入らねーわ。今日は俺が出す。良いか?返せる時に必ず返せ!わかったな」
ロッシ「…ありがとう」
ゆう子「…うわぁ、なんか、空気悪いね。」
新「割と日常」
ゆう子「え!そうなの?皆仲良しかと思ってたよ…。てか、歩夢くんってあんな風に怒るんだね…」
新「歩夢は普段はあんな怒んないよ。こういう事に関しては厳しい…。」
ゆう子「そっかぁ…。」
光司「あ、そろそろ時間ですよ!俺マイク借りてきます!」
光司は気まずい空気が苦手な奴だった。
新「俺、別に余裕ないけど光司に金借りるくらいなら俺に言ってもいーから。」
ロッシ「ごめん。」
光司は幼い頃に母を亡くし父子家庭で
弟が2人いるためアルバイト代のうち
1万を家に入れているのだった。
歩夢は乱暴にタバコに火をつけて喫煙所に行った。
こりゃあ今日の3時間は曲作りの進行具合によっては気まずいなぁ。
新は気が重くなった。
光司「Bスタジオ!もう入って良いそうです!」
3人は先にスタジオに向かった。
ゆう子は入るなり、
ウキウキが止まらない様子だった。
今、オリジナル曲が2曲ありライブのセトリをとりあえず全部オリジナルにする事を目標に曲作りをしていた。
新「練習って凄い地味だからね。」
ゆう子「承知!」
新はバンドなんて文化祭のお遊びのつもりだった。
高1の時に流行っていた
前略プロフィールの趣味項目に
ギターと書いていたのを歩夢が見つけて
2人でスタジオに入ったのがキッカケに
歩夢のゴリ押しでなんとなくバンドに入った。
ドラムが決まらず新が顔が男前だから
という理由でロッシに声をかけ
新の仲良しグループの今岡に
当時はベースを弾かせた。
高校の先輩がライブハウスで後夜祭をやろうと言い出して文化祭に出た10バンドで
本八幡スリーバケッツに出た際に、
ブッキングスタッフのリュージさんに
後日10代バンド限定のライブに出ないかと誘われたのをキッカケに数ヶ月に一度スリーバケッツでライブに出るようになった。
10バンド中
その後ライブに誘われたのは3バンドで
継続して誘われたのは新達だけだった。
それを実力が認められたと勘違いした4人は
良い気になり誘われるがままライブをした。
高額なノルマも歩夢の人徳で
しばらくは毎回4.50人高校の友人や
歩夢の地元の友達をライブに呼べていて
問題なく活動していた。
ノルマというのはいわゆる出演料みたいなもので
ライブハウス側から出される出演条件だ。
1000円のチケット×20枚とかが
ティーンズイベントのノルマで、
お客さんを呼べないとバンドの自己負担だ。
そんなノルマをこなしてくうちに
リュージさんから
「そろそろお前らに本気のバンドを当ててやる」
と言われて出たブッキングの日に
10代コピーバンドの中で
良い気になっていた鼻をへし折られた。
なぜこんなにも上手い人達が
なぜ1人もお客さんを呼べずに
なぜ売れていないのか疑問で仕方なくて
一番高いノルマを払っていて
一番お客さんを呼んでるから。
という理由でトリを任された新達はその日、
コピーにも関わらずまともな演奏が出来なかった。
その日からオリジナルを作ろうと
歩夢に火がついた。
同じく火をつけられたのはロッシと新で
今岡はこのタイミングで抜けた。
リュージさんに相談すると
光司と対バンの日を作ってくれて
口説き倒して引き抜いた。
メンバー全員好きなジャンルはバラバラだった。
洋楽、邦楽。
V系、ポップス。
パンクロック。
コピーは皆がやりたいもの全部に手をつけた。
歩夢の作ってきた曲は
対バンで見た先輩バンドに影響を受けていて
歌モノなのかJロックなのか青春パンクなのかどれもしっくりこないオリジナルだった。
歩夢「バンプみたいな歌詞を
ミスチルみたいなメロディで
エルレの細見さんみたいに歌う」
といういいとこ取りな無理難題を掲げていた。
2曲目はギャグ要素が強く
曲名も「ハゲと日常」という不真面目なタイトルだったがコレがリュージさんに大ウケし
本格的な活動の入り口に立った。
本数が増える度にチケットノルマは安くなり
30枚から15枚15枚から10枚10枚から5枚
最近ではスリーバケッツが力を入れた日に
集客枠として呼んでもらい、
諸先輩方と交流の機会を得ていた。
突然明日出てよ!と連絡が来ることもあり
OKを、だすとノルマはタダだった。
ライブはライブでしか上手くならない。
この言葉の意味がわかり始めた今日、
ライブをさせてもらえる喜びがあった。
歩夢がスタジオに入って来る。
歩夢「さ!切り替えて練習しよか!」
光司「そっすね!歩夢さん!新曲聴きたいっす!」
歩夢「いーよ!その前にオリジナル2曲通そうか!」
2曲をとりあえず通して練習した。
ゆう子はハゲの歌だ!と喜んでいたが
ギターアンプの真横に居たため
出音に驚き耳を塞いで居た。
しばらく既存の曲やコピーを練習して
新曲に取りかかる。
まず歩夢が曲を弾き語りで聞かせる。
その間に光司は歩夢の抑えているコードに
ザックリとベースを合わせる。
次にホワイトボードに
Aメロ-Bメロ-サビ-Cメロとコード進行を書く
それを見て新は曲の大まかな進行を覚える。
次にワンコーラス(一番)だけ
ザックリと合わせてみる。
この段階では毎回、光司以外全く合わせる事はできず、弾き語りで聞いた時よりだいぶお粗末な曲に聞こえる。
いつものことだ。
ゆう子は、え、ダサい…という表情を隠しきれない。
新は皆に見えてなくて良かったとすら思う顔だった。
次に歩夢が「大体こうゆう曲にしたい」
とイメージを伝える。
レスポンスが早いのは光司だ。
光司「うん、良い曲っすね!夏っぽいし!ドラムはワンコーラス目はシンプルに8ビートだけでオカズもそんな要らないっすよね!」
歩夢「そーだね!」
光司「サビだけテンアゲしても面白いかも!」
ロッシ「…出来るかな」
光司「徐々にで良いんすよ!」
毎度ドラムで立ち止まる。
4人の中でもロッシは一番成長が遅く
大体曲作りはロッシ待ちな感じだった。
ワンコーラスだけ枠組みが出来上がり
それを各々携帯に録音して今日のところは終わった。
一発目の合わせでワンコーラスまでたどり着くのは稀なことだった。
歩夢「次のスタジオで2番まで、手つけたいね!」
光司「理想っすね!とりあえずワンコーラスを完璧にして来る感じで行きましょ!」
一同「了解!」
大概このパターンだが次のスタジオでは
ロッシが全然出来ておらず歩夢が怒るのだろうなぁ。と新が悟っていると、
光司「ロッシくん、来週個人練入りません?」
ロッシ「お願いしたい」
光司「うす!…あ!」
光司が財布から200円を取り出して
光司「コレ、ゆう子さんの…ピック代っす!」
新に渡す。
思い出した様にロッシも200円を渡す。
時刻は20時。
次のスタジオの日を決めてそれぞれ帰路に着いた。
帰り道は雨が降り始めていた。
ゆう子「お疲れ様。」
新「ど?つまんなかったっしょ?(笑)」
ゆう子「うーん、意外だったかも(笑)でも、コウちゃん、かっこよかったなぁ♡」
新「お?どの辺が?」
ゆう子「え?わかんないの!?あの、空気の読み方。あゆむんとロッシーニの間取り持って皆に上手に指示出してさ!」
新「あー。」
ゆう子「凄いね!なんか上手い下手ってウチよくわかんないし、ベース?って楽器もよくわかんなかったけど」
新「うん」
ゆう子「今日でわかったよ!」
新「なにが?」
ゆう子「え?ベースの音とか!あ、こーゆー音はベースが出してるんだ!って!」
新「おお。」
段々めんどくさくなる。
ゆう子「アレンジって大事なんだねー。弾き語りであゆむんが歌ったのも好きだけど、ワンコーラス?バンドでやったのも悪くないよね!」
お前に良し悪しのなにがわかる?と新は思いつつ
新「そうだねー。ま、これからなんだけど」
ゆう子「それにさ、コウちゃんてドラムも出来るんだね!」
新「ああ。出来るつってもロッシの方が出来るよ」
ゆう子「え?そうなの?コウちゃんのほが上手に聞こえた」
新「ロッシの方が出来る。」
ゆう子「ふーん。で、ギターも!ソロとか、もやしに、こうしましょう!って教えてたよね。凄いね!何でも屋さん!」
ここでなんだかイライラし始める。
新「ギターは俺の方が上手いし、相談してただけで別に教わってねーよ」
ゆう子「ん?わかってるよ!でも上手だよね!」
新「もっと上手い人居るし!」
ゆう子「え、なんか怒ってる?」
新「いや、別に!」
イライラして声に出ていた。
傘越しにゆう子を見ると
なんで怒ってるのか不思議そうな顔をしていて
さらにイライラした。
ゆう子「コウちゃんってなんかの大会で優勝したんだっけ?」
新「してねーし、知らねーよ。光司に直接聞けよ!」
ゆう子「ほら!やっぱ怒ってんじゃん!」
新「めんどくせーだけだよ!ベースが好きになったことは、良いこと!だから光司に聞けって!」
ゆう子「もういい!」
その後は無言のまま家に着いた。
新自身も不思議だった。
ゆう子が憧れの眼差しで光司の話をすることが
なんだか気持ちいい時間ではなかった。
それ以上にコイツが成仏するために頑張ってるのは俺なのに!と、無関係の方向から恩を着せようとしていた。
なんの会話もなくその日は眠りに着いた。
夜の公園に1人。
青年が寝っ転がって居る。
遠くからバイクの音
なんだかバカにした笑い声が聞こえる。
シーンが朝になる。
青年は笑って居る、、
辺りが眩しくなり次第に視界が真っ白に…
リリリリリリッ!
朝だ。また夢を見てた。
題名のないノートはゆう子が現れてから
良いペースでページを消費していた。
スタジオの日からゆう子とほとんど口を聞いていない。
そのままお通夜の朝を迎えた。
会場には18:00過ぎにつけば良くて
学校をサボる必要はなかった。
ゆう子は学校には来なかった。
歩夢とアスカちゃん
はすみん、みーな
そしてバンドメンバーは
学校からそのまま式場へ向かった。
新はなんとなくゆう子が気がかりで
御霊前を忘れたといい一度家へ帰った。
ゆう子「はぁ…。」
新「…どした。」
ゆう子「ん?…別に。」
新「多分今日でグッバイだな」
ゆう子「お世話になりました。」
新「いーえ。」
どちらもこないだのちょっとした言い合いをまだ引きずっていた。
新は今だにあそこまでイライラした理由がハッキリしなくて、自分は死者にまで恩着せがましい奴だったのかと、少しショックを受けていた。
先に向かった連中と合流したが
女子連中は気が重いのか、
ほとんど会話もなかった。
式場に着くと既に親族?と思われる方々は着席していた。
受付で気持ちばかりの御霊前を渡し中に入る。
当然のことながら涙を流し鼻をすする音が
そこら中から聞こえていた。
わかってはいたが胸にくる。
喜びという樽の上にズシリと重い落し蓋をボンと落とされた気分だった。
しばらくお経が詠まれたのち
親族席からお焼香が始まる。
背は170前後だろうか、ガッシリしていて、いかにも大工さんな見た目をした男性と、スタイル抜群だがやや痩せすぎな女性が一番に立った。
アスカ「あれ、ゆう子の父さん母さん。」
歩夢に耳うちするアスカちゃんの声が聞こえた。
言われなくてもわかった。
体つきがよく似ている。
くっきり二重はお父さん譲りだな。
お母さんの方はまともに前を向ける状態ではなさそうだった。
涙はとめどなく溢れていて旦那さんに支えられながらなんとかお焼香を済ませた。
大きな体のお父さんも涙を堪えているのはよくわかった。
今、幽霊になったゆう子がウチに居候してる。
正直迷惑だ。という状況を踏まえた上でも
大の大人の弱った姿を見ると流石の新も目頭が熱くなった。
横に目をやると、
女子連中はしっかり号泣していた。
気がつくとゆう子はその場に居なかった。
順番が来て新は歩夢とお焼香をした。
式は滞りなく終わり、お坊さんがお通夜と宗教の教えについて軽く説明した。
最後に、ゆう子の戒名について話した。
短くも素晴らしい人生を確かに歩み
小さくも力強い花を咲かせた。
出会いを繰り返し育み、
ゆう子さんが育てた花は
ここにいるあなた達です。
あなた達が枯れない限り、
ゆう子さんの心の中で咲き続けるでしょう。
そんな様な内容だった気がする。
式がひと段落してロビーに出る。
ゆう子の姿が見当たらない。
まさかあいつ!!
キョロキョロ探していると
ゆう子は外でポツリと空を見上げていた。
声をかけようと思ったが歩夢に呼び止められる。
歩夢「ゆう子ちゃんのご両親に挨拶しよう。」
新「そだね。」
ロビーの中央に目をやると
ご両親の腕にうずくまりながら泣いている
アスカちゃんが見えた。
これまたキツい。
まさかこんなにも自分が悲しさ?を感じるとは。
他人の新でもこのありさまだ、
コレを幽霊となり間近で見ている当人の気持ちなんて計り知れない。
歩夢「この度はご愁傷様です。俺、ゆう子ちゃんと高校の同級生で、バンドやってる歩夢って言います。」
歩夢は簡単な自己紹介と事故にあった当日の夜、ゆう子ちゃんは俺たちのライブに向かっていて事故にあったと説明し、詫びた。
並び立って、ロッシ、新も頭を下げる。
ご両親はあなた達のせいじゃないと
心から言ってくれていたのがよくわかった。
ゆう子のお母さんは突然ハッと表情を変える
ゆう母「あ!あなたが新くん?ギターの子!」
新「あ、、えーっと…はい。初めまして。ギターです」
会釈をする。
ゆう母「今日は来てくれありがとうねぇ〜!!」
手を取られる。
新「あ、、いいえ。」
今度はしっかり頭を下げた。
ゆう母「会ってみたかったの!ゆう子がねライブ行く度によく話してたのよ!」
新「え?僕のことですか??」
ゆう母「そう!新って奴がねー、もやしみたいに細長くて白くて弱っちそうなの!って!あ、気を悪くしたらごめんなさいね?でもほっそいのにカッコいいギターひくんだよー!!ってね…。」
新は黙って驚いた。
ここ数日あいつと過ごしているが
そんな風に見ていた素ぶりは一度も見せなかったし、ましてや光司推しの雰囲気さえ醸し出していた。
ゆう母「ほんと、生前はあの子と仲良くしてくれて…」
ゆう子のお母さんはその後の言葉につまり
涙を流す。
後をお父さんが引き継ぎ新達は、こちらこそと返事を返した。
ゆう母「あ、そう、それからね、」
カバンをあさるゆう子の母
ゆう母「…あら、忘れて来ちゃったみたい。
あの子がね新くんに手紙を書いてたのよ。」
新「え?俺にですか!?」
ゆう母「そうなの!今度、お線香あげに来てね。その時に渡すわ。あ、中は読んでないからね!」
そう言い残しゆう子のお母さんは
親戚たちへご挨拶に向かった。
はすみんは一連の流れを隣でじっと聞いていた。
ゆう子からの手紙は成仏への1番の手がかりなんじゃないか!?
今すぐほしい!(気になる!)
新の頭は悲しみから興味でいっぱいになった。
外へ目を向けるとゆう子はまだうずくまっていた。
本人に聞いてみるか。
新はゆう子の元へ向かった。
新「…よお。」
ゆう子「グスッ…グス」
新「…心どいか?」
ゆう子「…もやし、ウチもうヤダよ。」
新「なにが?」
ゆう子「もう…ヤダ!なんで、なんでウチ
天国行けないの??ヤダよ。皆の悲しい顔見るの、ツライよぉ…!」
パッチリ二重に涙が止めどなく溢れ
華奢な肩を震わせながら
細長い脚に顔をうずめて
新にしか聞こえない声をか細く震わせて
必死に訴える。
ゆう子「早く、消え、たいっ…!!」
新は迷いながら選び抜いた言葉を伝える。
新「俺…に限らずさ、簡単に「ツライよな?大変だな?気持ちわかる。」なんて言葉、ゆう子には言えない。」
ゆう子「うん…グス、グス」
新「でも確かにわかってることがあって」
新はゆう子の隣に座り諭すように言う
新「お前の今の姿が見える俺は、ゆう子を見てるとすげーツライしすげー泣きそうになる。この心どさはお前にも、誰にもわかるはずがない。」
ゆう子「…うん。」
ゆう子は涙をぬぐい行儀よく新に体を向ける。
新「つまりお互い、誰にも理解出来ない悲しさを抱えてるってトコだけは同じなんだよ」
涙をためは流しを繰り返しながら
上目で必死に頷くゆう子を新は抱きしめたい衝動にかられるが、他人目もあるため気持ちを抑え
こっそりゆう子の手をとりしっかり握り伝える。
ゆう子の体が子犬のようにビクッと驚くのがわかった。
新「だから、この誰にも分かち合えない悲しさを抱えてる寂しさは、2人なら分かち合えんじゃねーかなって。」
ゆう子が強く握り返してくるのがわかる。
新「悔いなくなるまで、一緒に悔やんでやっから。」
新はゆう子の頭にポンと手を置き
新「だから、もう泣くな。」
新は一連の流れが歩夢みたいだと自分で驚いた。
ゆう子の目には先ほどまでの悲しさや、寂しさとは違った種類の涙がたまっているように感じる。
ゆう子「……うんっ!」
ゆう子は泣きながらニッコリ笑い
ゆう子「一緒に悔やんでやっから(ドヤッ)とか……クッサ(笑)」
新「おい!結構カッコつけたけどっ!言わんといて!!」
ゆう子「…もう泣くな(キラッ)wwww」
新「やめてー!!やめたげてー!!」
ゆう子イはタズラに笑い、ありがとと口で形を作り式場へ向かった。
空は夕空。
夜と朝の狭間の景色。
蒸し暑い6月。
新の乾いていた部分の感情が潤っていく。
決意の表情で空を見上げた。
イツワリとじて
シンジツに迫る