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幽霊ユウコはイイ女  作者: ボンチュー
二章 「ココロハ」
4/8

4.ハジマリ

第4話


ゆう子の居候を認めた新。

事故にあったあの日の事が徐々に見え始める。




新登場人物


ユイ

新の妹。中3の新春季真っ盛り。兄を嫌っている。








リリリリリリッ!!

リリリリリリッ!!

リリリリリリリーン!!


ぶちっ!


携帯のアラームを乱暴に切り

新はいつも通りもう一度目を閉じる。


数分後もう一度アラームが響く。

繰り返しアラームを切る。


このタイミングで妹のユイか、

母親が起こしにくる。


ドカドカドカドカっと足音をたてて

ドアをドンドンドンドンと殴り


いつまで寝てんのー!!っと大声を出す。


















?「いつまで寝てんのー!!」


ほらきた。


?「ほらー、もう朝だぞ〜!」


二言目が聞こえたら後5分と伝える。


?「7:30だぞー!おーい起きろってー!」


そう、ちょう、日常。


新「あぁ、、あと5分」


?「絶対それ起きないやつでしょーが!」


新「あぁ?、、起きるから」


?「いや、今起きろ!ほら起きろ!」


新「あぁ、、しつこい」


?「し、しつこい!?こっちは良かれと思って言ってんのに……も〜早く起きないと…」


新「…zzZZ」


?「呪っちゃうぞ☆」


新「…zzZZ」


?「家族を☆」


ガバァッ!!


新は烈火の如くスピードで飛び起きた。

忘れていた。

考えてみれば足音もドアを叩く音も聞こえなかった。


新のいつも通りの朝は今日から存在しない。

戻ってくる可能性も低い。


白井家にはあたらしい仲間が増えたのである。

誰も望んでいないし、言ってしまえば、

新しかあたらしい同居人の存在を知らない。












その名も鏑木ゆう子。

先日不慮の事故にあい短い人生の幕を閉じた。

にも関わらず、その故・鏑木は今クラスメイトだった新の部屋の1人掛けビーズクッションに腰掛け寝起きの新を指差しながら笑っているのだ。


恐怖と驚きと怒りが混じっている。


なんと不愉快な朝。

なんとキテレツな朝。

奇妙奇天烈摩訶不思議


シーユーアゲインは望まないよ。






ゆう子「もやし、めっちゃ寝起き悪いね笑!意外だわ〜」


新「…。」


ゆう子「ね!人に起こしてもらっといてお礼もなし!?」


新「…。」


ゆう子「うーわ、ないわ。だからガリガリで幸薄もやしなんだよ。痛みかけ?だんだん黄色くなってくるやつ、くされ。腐れもや、」


新が遮る。


新「…うるっせーよ!!」


新「朝から訳わかんねーこと言いやがって!だいたいお前なぁっ



ドンドンドン!ガチャ!

ドアが開く。


新「はうっ!!?!」


ユイ「ねぇ!朝から何!?うっさいんだけど!」


新「…わりぃ」


ユイ「え、てかなにしてん、、電話とかじゃなかったの?1人で喋ってたの?えこわ…」


新「ちょいちょいちょーい、引かんといて、そこ引かんといてー!」


ユイの眼差しは嫌悪と軽蔑がマニュアル通り映し出されている。

そう、考えてみれば新以外にゆう子の姿も声もわからないのだ。


新「あ、、うーん、えーっと…寝言?(笑)」


ユイ「笑えな。キモっ」


バタンッ!


新「…しんらつ〜」


おかあーさーん、お兄ちゃんが怖い夢みて寝言言ってた〜きもーい


妹はリビングにいる母に向かって、自分の兄がいかにキモいかを説明していた。



いや聞いてくれ、そして信じろ妹よ。

お兄ちゃんはな、今大変なんだ。

お兄ちゃんの部屋にはな

幽霊がいてな、そいつが話しかけ…

…そんな事を心で思ったがまあ理解はしないだろう。

逆に寝言ってことで片付けてもらってよかった。笑い話で終わりだ。

ゆう子の姿が見えていたらそうじゃ収まらない。


むしろその方が一大事だ。

バンドをやっているのに幸が薄く

17年間彼女も出来なかった男が

突然知らぬ間にギャル系女子をを連れ込んでいて

ちゃっかり朝まで共に過ごしていたなんて事になれば、


白井家緊急会議が始まってしまうところだ。


地方単身赴任中の親父まで帰ってくるトコだ。



ゆう子「…アラームですぐ起きないからだよ」

新以外には聞こえないのに、新にすら聞こえるか際どいボリュームでゆう子が言った。


新「明日からはすぐ起きるから、起こさなくて良いよ…」


ゆう子「わかったよ、」


新「マジで学校来んの?」


ゆう子「行くよ!行かなきゃ始まらない!」


新「…頼むからルール、守れよ。」


ゆう子「もち!任せとき!」













…昨日のことである。


昼下がりの神社を後にして新は隣の幽霊が我が家に来るという事実を飲み込めずにいた。


新「…で、マジで俺ん家に来る訳?」


ゆう子「うん、行くよ!」


新「いや、ほら成仏するためにはさもっとこう、ゴーストに対して適性のある人のとこの方が良くない?」


ゆう子「いや、君ほど◎な人、稀だと思うけど!(笑)」


新「いやバツだわ!特殊能力"幽霊バツ"だわ!」


ゆう子「ウケるなにそれ(笑)いやだって普通死んだ女とここまで会話成立しないって(笑)」


言われてみればその通りだが、もはやそんな常識的観点からの思考、考察はどうでもいい。もう一つの問題は新は自分の部屋に妹と母親以外の異性を招き入れた事がなかった。(こいつ死んでるけど)


ましてや住む。とほざいている。

ありえない。生きていてもありえない。

チクショウドキドキが止まらねーっ…!


…っていや、ちげーだろ!


新は自問自答が止まらなかった。


ゆう子「ね、妹さんいるんだよね?カワイッ?仲良くなれるかな〜!」


新「いや、見えねーだろ!」


ゆう子「えー、見えてよ。(笑)ほら、もやし家は見える家系かもよ!」


新「なんだそれ!」


自問自答<問答無用だった。


もはや逃げることも説得も諦めていたし

どっと疲れていた事もあり

事態を悪化させないことに重きを置くことにした。


家に着く。


新の部屋は玄関を入り右に曲がると

すぐ左側にある6.5畳間だった。


ギターが一本とエフェクターがボードケースからはみ出していて、体にフィットするビーズクッションと小さい机、みっちり詰まった腰くらいの高さの本棚とシングルマットレス。

某アイドルの神なんちゃらの1人で

唯一茶髪のギャル系アイドルのポスターカレンダーがあった。


…まずい、まずいやつが貼ってあるぞ!


ゆう子「おっじゃましまーす!」


新「だー!!待て待て!落ち着け!」


ゆう子「え落ち着いてる!死んでるけど!(笑)」


新「いいから!とりあえず入って良いって言うまで待ってろ!ほら、色々、あるから!」


ゆう子「エロ本くらい気にしないって〜」


新「んなもんねーよ!」


ゆう子「うちねー多分鍵とか閉められてもドアすり抜けられるよ〜」


新「すり抜け禁止っ!」


新は部屋の中へ。


とりあえず転がってる下着はクローゼットに投げる、机の上の雑誌は出窓に投げた。あ、可愛らしいぬいぐるみも俺っぽくないから後でユイの部屋に持ってこう。

…あ!こんなとこに"題名のないノート"が!これが一番まずい!見られたら次は俺があいつと同じ様になることを決意する!どうする、とりあえずスクバに入れとこう!…うし、あとはこの壁のポス、、


ガチャ


ゆう子「え意外と整理されてる!きれいじゃーん」


新「誰が入って良いって言った!!」


ゆう子「あれー!!もやしってアイドルとか好きだったの!?意外ー!バンドばっか聞いてんのかと思ってた!」


新「聞いてるわ!バンドばっか聞いてるわ!」


終わった。こいつ死んでるけど。

そもそもこのポスターはバイト先で貰ったとか言って歩夢が勝手に張って帰ったやつだった。

…まあ好みだったからそのままにしていた。


ゆう子「別にいーじゃん。うちケータイないし、そもそも死んでるし、バラさないよ〜♡」


新「な!べ、別に気にしてねーし!」


わかりやすくホッとした。















そんなこんなで時刻は15時過ぎ。

16時にはユイと母親が帰ってくる。

その前に話しておきたい事があった。


新「ゴースト。もうここに住むということに関してはとやかく言わん。半ば諦めている。」


ゆう子「はい!」


新「ただ、皆が安全に生活するために守って欲しいことがある」


ゆう子「はい」


新「いろんな事がおかしいが、デキゴドを整理したいから順を追って説明してくれ。」


ゆう子「はい!(笑)」


ゆう子は器用にビーズクッションに正座しニタニタしながら新を見た。


新「まず、一つ目はね、成仏を目指す上で、大事なことだから聞く。」


ゆう子「うん、!」


新「嫌な思い出だろうけど、思い返してもらいます!その、、どうやって死んだ?」


ゆう子「(笑)なんだよー!深刻そうに!やめてその空気!」


新「真面目に聞いてる」


ゆう子「うーん。えっとねートラックがきてー走って逃げてーどーんってなってばーんってなってギャーンのちーん。って感じ☆」


新「そっかー!ギャーンのちーん。かー!

…っておい!そこ重要だから!大切なセクションワンだから!さっきの神妙な面持ち返して!」


ゆう子「(笑)はいはーい。…でも聞いちゃう?聞いちゃうの?」


新「ちょーだい、そこちょーだい」


ゆう子「もう仕方ないなー。欲しがりさんなんだからーまったく〜。」


新「あの日はライブに向かってたん?だよな?」


ゆう子「うん、アスカたちと待ち合わせてしてたんだけどウチ遅れちゃってね、先行ってもらったの。」


新「おう」


ゆう子「んで、間に合う時間に普通に着いて余裕あるなーって思ってさ」


ゆう子「差し入れ買ってこーって思ってコンビニ行ったんだあー」


新「え?」


ゆう子「ほら、もやしっ子よくライブハウスでエナジードリンク飲んでるでしょ?知ってたからさー、皆の分買ってやろーと思ってさー。んで道路渡ってたら、バーンでギャーンでちーん(笑)」


新「マジかよ…俺らのために…」


ゆう子「そこまで大げさじゃないし、やめてー!ショボくれないでー、もやしのせいじゃないしね、だから言いたくなかった!」


新はゆう子が今まであんまりにも明るく接してきていたから気づかなかった。

正直ただのバカだと思っていた。

迷惑とも思っていた。


どうやら少し見方を変えた方がいいかもしれない。"純粋な子"だったのかもしれない。

歩夢も散々悲しんでた。俺もしっかりお悔やみ申し上げなきゃいかん。







それから事故にあって幽体離脱を経験したこと、一番最初に家族に会いに行ったけど気づいてもらえなかったこと、アスカちゃんやバイト先の人も皆自分が見えなかったこと、翌日学校に行くと、新だけは気づいてくれた事、自分の机に小さなフラワーボックスが置いてあって物凄く死を実感した事などを話してくれた。


ゆう子「うちねー嬉しかったんだよー?もやしっ子がうちを見て"え?"って言った時、気づいたぁあ!!ってね」


新「俺は怖かったけどな」


ゆう子「(笑)ほら、死んてみればわかると思うけど気付いてもらえないって悲しいのよ!」


新「死んだって事実の方がよっぽど悲しいわ!」


ゆう子「わかってないな!その後の話だよ!やっぱさ気付いてもらわないと幽霊のしがいがないじゃない!」



新「…ごめん、正直言うと俺は普通じゃない経験を今してるから、自分の興味関心を埋めるためにこの状況を楽しもうとか思ってた。不謹慎だった。本当ごめん。」


ゆう子「楽しんでくれて一向に構わないよ」


新「その上で、今ゆう子ちゃんがこの状況に至ってゆう子ちゃんのために何が最善か考えた」


ゆう子「うん!」


新「成仏する方法、本気で探そう」


ゆう子「よ!あっぱれ!よく言った!」


新「元気かっ!」


ゆう子「でも80点!この状況なんだからもっとぶっ飛んで、蘇る方法探そう!とかだったら100点だったなー!(笑)」


新「…さ、次はルール決めだ!」


ゆう子「スルーかよ!(笑)」


話し合って決めたルールはコレだ。


ゴースト五箇条


1. 2人っきりの時以外会話を求めないこと。(他に誰か居る時はゆう子は話しかける→新は携帯のメモで返す。を採用。)

2. 無闇にドアを開けたりモノを触ったりしないこと。

3. 新以外に見える人を見つけた時は声をかける前に新に報告。

4. 新が外出時は自宅待機。出かける時は一緒に行くこと。

5. すり抜けは基本厳禁!覗きもダメよ☆


以上だ。

尚、どうやら汗もかかないしお腹も減らないらしくお風呂とご飯の用意は無用だそうだ。

コレは新にとって非常にありがたかった。



そうして、1日目の夜をなんとか家族に怪しまれずに過ごした。どっと疲れた新は22:00前に就寝。











そして今朝、妹にキモい兄貴呼ばわりされて非常に不愉快のまま新はゆう子と学校に向かった。





ユウレイ来たる始まりの朝。

ゴウレイ響く3日目の事。






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cont_access.php?citi_cont_id=171123131&s こちらからも是非!
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