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奴隷を夢見たぽんこつウサギ3

 海を渡るのに一週間かかった。

 もう海は飽きた。

 おうちの中よりきゅうくつだし。


「んー。やっと体が伸ばせるのです。二人のおじさんはまた踏み台になるのです?」


「ならねえよ! 今度はちゃんとした船着き場があんだろ」


「ふひぇひぇ。別に踏み台になって貰っても構いませんがね」


「あれ以来、何か腰の調子が悪いんすよ。ホント勘弁してくだせえ」


 結構似合ってたのに。

 また見たかった。


 船に乗るのはたいへんだけど降りるのは楽。

 木で出来た床の上に飛び降りるだけ。


「ふひぇひぇ。町は初めてですか?」


「はい。ずっと洞窟にいたからこんなとこ来たことないのです」


 それにしても、たくさん船が並んでる。

 たゆんたゆんのおじさんの船より大きいのばかりだ。

 こんなに大きいとこぐのも大変そう。


「ふひぇひぇ。 先ずはお洋服を手に入れましょう」


「ドレスなのです?」


「ふひぇひぇ。そうですよ。奴隷は着飾らないといけません」


 街は人が沢山いてうるさい感じがする。

 耳もいまいち音を聞き分けられない。

 でも、二人のおじさんが周りの人を威嚇してくれてるから皆引いてく。


 それにしてもたくさん生えてる石の箱は何なんだろう。

 人が出たり入ったりしてる。


「あの店で服を買いますよ」


「ラビみたいな耳が売ってる! ラビたちの耳むしったの!?」


「ちが、違います。ニセモノです」


 何だ違うんだ。

 ラビの耳もむしられるのかと思った。


「いらっしゃいませ。おや旦那さま。今日はそちらのお嬢様の服を求めに?」


「ええ、このドレスを頂きましょう。丈を直して頂けますかね」


「はい。直ぐにでも。でも、あまり、店の評判が悪くなるような話はやめてくださいね」


 おじさんが選んだドレスは、

 大きさが合わないから直すみたい。

 あっちこちからだのサイズを計られた。


「これでいかがでしょうか。ピッタリ合うと思うのですが」


「いい感じなのです!」


 ワキがムレない。

 すべすべしてる。

 これは凄い。


「本当はお姫さましか着られないんですけどね。アナタは特別な奴隷ですから」


「旦那さま。何をおっしゃっているのです? 流石にお姫様は……」


「ああっと。やっばりこのドレス買うのをやめましょうか!」


「えっ、それは困りますよ!」


「この服は本当はお姫様しか着られないんですよね?」


 どっちなんだろう?

 お店の人が何だか焦ってあわあわして良く分からない。

 町にこれ着てる人見かけなかったから特別なもの何だと思うけど。


「あー! 旦那様のおっしゃっるとおりでした! このドレスは特別な方しか着られないんですよね! うっかりしていましたよ」


「ふひぇひぇ。そうでしょうそうでしょう。これからもこの店をひいきにさせてもらいますよ」


 やっばり特別なんだ。


「ふひぇひぇ。よく似合っていますよ。これで準備は出来ました。早く先を急ぎましょう」


「あの、ありがとうございます! でも、もらって良いのです?」


「ええ、必要経費ですよ。でも着たままだと道中で汚れてしまいますから着替えてくださいね」


 確かに。

 いい服だから汚したくない。

 それにしても、ひつようけいひって何だろう。


「次は食料を買い込みますよ。また何日も移動しますから」


「うん。お腹すいたのです」


「では買い出しは二人に任せるとして、ワタクシたちは食事にしましょうか」


 またビスケットくるのかな?


「じゃあ、終わったら町の出口で待ってますわ」


「やっとひと息つけるぜ」


 二人のおじさんたちがいなくなると、威嚇できなくなったので人がいっぱいだった。


「ちょっと今食べられるモノを買って来ますのでここにいて下さいね」


「分かったのです」


「変なやつらに絡まれるかもしれませんが、無視してくださいね」


 それだげ言うとおじさんはラビをのこしてどこかへ行った。

 かわりに何か近づいてきた。


「お! こいつ鎖に繋がれてるぜ」


「マジだ! 奴隷デブ?」


 変なやつら来た。

 これがたゆんたゆんおじさんの言ってたやつかな。

 ラビと同じぐらいの歳?

 頭悪そう。


「何かようなのです? あっ、無視しろって言われてたんだ……」


「生意気だなお前」


「こらしめてやるデブ」


 なんか棒でつついてくる。

 とてもうっとうしい。


「はわわわわ。やめて欲しいのです!」


「なに? もっとつついて欲しいって?」


「何でそうなるのです!?」


 話が通じない。

 どうしたらいいんだろう。


「ごらぁ、クソガキども! 売り飛ばすぞ!」


「うわっ、やっべーの来た」


「逃げるデブ。おととい来やがれデブ」


 逃げてった。

 助かった。 

 たゆんたゆんおじさんも威嚇できたんだ。


「全く。困ったもんですね。大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫なのです」


「ふひぇひぇ。それは良かった。さあ、これをどうぞ。タコスです」


 何だろう?

 おじさんはカゴから何か見たこともない食べ物を出してくれた。


「どうやって、食べるのです?」


「この丸い生地から具がはみ出ない様にかぶり付くんですよ」


「んっ。こゆくておいひいのれふ」


 今までこんなもの食べたことない。

 ビスケットとは違って色んな味がする。


「さて、そろそろ二人のところへ向かいましょうか」



 町の出口では相変わらず二人のおじさんたちが威嚇していた。

 こんなに人がいるところに魔物が来たら大変だから皆を守ってるのかな。


「さあ、ここからは馬車での移動になりますよ。乗ってください」


「はー。この箱のなかに乗るのですか」


「ヒヒーン!」


 この動物に引っぱてもらうみたい。


「ずりずりひきづったら疲れちゃうのです」


「大丈夫ですよ」


「踏み台をもってきやした」


 ゴシャア!


「またかよチクショウ!」


「じゃあ、踏み台になって下さいね」


 おじさんたちがみんなのるとツバ吐きおじさんが馬を棒で叩いた。

 いじめてる……。


「あっ! くるくる回ってるのです!」


「ふひぇひぇ。これが馬車ですよ」


 こんなの見たことない!

 これも奴隷の特権なのかな。

 景色が流れていく不思議な感じがする。


 ガタガタとうるさいけど、これは楽チンだ。 

 座ったまま移動できるなんて凄い。


「さあ、夜の方が魔物が活発になりますからね。先を急ぎましょう」


「二人のおじさんが舌打ちしたり、ツバ吐いたりして威嚇してるから魔物はよってこないのじゃあないのです?」


「「流石にそれはねえわ!」」


 違ったんだ。

 町では大活躍だったのに。


「じゃあ、魔物が出たらどうするのです?」


「100人殺した俺の剣で」


「300人殺した俺のこぶしで」


「二人とも殺す殺す言ったらラビが怖がってしまうでしょう」


 殺す?

 怖い?


「食べるなら殺しても良いと思うのです」


「くっ、食わねえよ」


「か、かわいい顔して何ておっかねえこと言いやがる」


 何か変なこと言ったかな?

 食べるために殺すならどれだけ殺しても良いと思うけど。


「まあ、魔物が出たら二人が何とかしてくれますよ」


「はー。でも、ラビも耳が良いから魔物が近くに来たら分かるのです」


「ほう! それは盲点でした。セールスポイントに追加しておきましょう」


 しばらく進んだところで馬車が急に揺れ出した。


「あっ、やべえ。ぺっ」


 ゴシャ!


「ふえええ!?」


「馬車が脱輪したみたいですね」


 快適だったけど快適じゃなかったみたい。

 ころころと車輪が遠くに行っちゃった。


「ちっ。うるせえ! 何なんだよ! 夜営の為ようやく眠れたっつーのに」


「ペッ。テメーの方がよっぽどうるせえよ!」


「はいはい。喧嘩しないでくださいね。早く馬車を直さないと余分に夜営することになりますよ」


 おじさんたちは馬車を直し始めた。

 ちょうど良いのでおしっこしにいこう。


「ちょっとおしっこしに行って来るのです」


「あまり遠くに行くと迷子になりますからね!」


「そんなドジはしないのです」


 と、思ったんだけど。 

 はぐれた。

 迷った。

 どうしよう。


 あっ丁度良さそうな崖がある。

 こんなときは高いところから見下ろせばなんとかなるかな。


 うーん。

 さっぱりわからない。


「あっ。綺麗なお花なのです!」


 もう少し近くで見たい。

 あと少しぐらいなら近付いても大丈夫な気がする。


 ピシッ!


 えっ?

 手元がくずれた!?

 落ちる!


「きゃあああああああああ」


 滑り落ちてる!

 早く何とかしないと。

 でもどうにもならない。


「くふっ」


 突然首に襲撃が……。

 一体何が?

 えっ?

 鎖が枝に絡まってる!

 助かった?


 ううん、ダメ、苦しい!

 鎖を掴んでも楽にならない。

 ああ……。

 もう、ダメなのかな。


 目の前が暗くなって、キーンと耳鳴りがしてきた。


 死んじゃう、のかな?


 ラビは……。

 凄い人の奴隷になりたかったのです……。


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