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そのひとくち、至福

ぼくらのハードル

作者: 春隣 豆吉

早川圭吾と内藤裕介、コンビニで遭遇。の巻


 俺、内藤裕介は現在、コンビニのデザート棚の前で悩んでいる。目の前に並んでいるのは入荷されたばかりの「初恋ショコラ」。

 彼女である唯さんが最近お気に入りのチョコケーキで、透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンの女子が好きそうなパッケージ。それにキャッチコピーがまたすごい。「ケーキとぼくのキス、どっちが好き?」って。俺には、このケーキの全てがハードルが高すぎる。

 こういうときは、うちの外面仮面・孝介兄ちゃんの、ど厚かましい性格が羨ましい。兄ちゃんなら気にも留めずにさっさと購入してしまうに違いない。

「は~・・・俺ってヘタレ・・・」思わず独り言をもらしたとき、「あれ?内藤くん?」と声をかけられた。

 声の方向に目をむけると、そこにはテニス部の早川さんが立っていた。

 テニス部の早川さんといえば、唯さんの親友である図書委員会の岡崎さんの彼氏。岡崎さんとは図書室で唯さんを待ってるときとかにちょっと言葉を交わしたことがあるけど早川さんとは特に接点がないので、話をしたことはなかった。

「何かデザートでも買うの?」

「い、いえ・・・その・・・・」

 早川さんは、俺の視線の先をたどると「ああ」とガテンがいったように笑った。


「川田さんに買うの?」

「は、はい。唯さん、今補習授業を受けてて」

「知ってる。涼乃も同じ授業を受けてるんだよ。」

 そういうと、早川さんは「初恋ショコラ」を手に取った。そういえば唯さんが「早川くんは図書委員会で早川王子って呼ばれてるのよ」って言ってたっけ。確かに、買うのに悩む俺をよそにスマートに初恋ショコラを手に取るあたり王子っぽいよなあ。

「早川さんは、それ、よく食べるんですか?」

「涼乃がこのケーキ好きなんだ。ただ、売切れが多いみたいで、この間も“売ってない~”ってがっかりしてたんだよ。

 人気アイドルグループのCMとカロリー控えめなのに本格的な美味しさってことで人気らしいよね。だから、こんなにたくさんあるときに来店できてラッキーだよね。」

 そういうと、早川さんは俺ににっこり笑った。

「そ、そうなんですか」

 俺は改めて視線を初恋ショコラに移す。そういえば、前に唯さんが買ってたときも棚には残りわずかだった。そして手に取ったときの嬉しそうな顔。

「・・・俺も買います。唯さんも、これ好きだから」

 俺は初恋ショコラを1個手に取った。自分の恥ずかしさよりも、彼女の喜ぶ顔が見たいから。

 2人でレジに並んだとき、女性の店員さんがなぜかちょっと挙動不審だったのが気になるけど、俺と早川さんは初恋ショコラを購入して店を出て、学校の正門に向かったのである。


「内藤くんが一緒に買ってくれてよかったよ」

 正門で並んで待っているときに、早川さんがちょっと照れくさそうに笑った。

「え。何でですか?」

「実はさ~、俺も1人ではこれを買うのはちょっと勇気がいるなあって思ってたんだ。そしたら内藤くんがいただろ?いやー、ラッキーだったな」

「確かに1人は恥ずかしいっすよね~」

 俺は肩の力が抜けて、笑ってしまった。そうか、早川さんも恥ずかしいのか。なんだ、俺だけじゃなかったのか。

 その後、唯さんと岡崎さんが並んで歩いてこっちに向かってきた。

 俺が差し出した初恋ショコラを見て嬉しそうな唯さんを見てたら、なんだかハードルを一つ越えられたような気がした。

 だけど、「ケーキとぼくのキス、どっちが好き?」はまだ言えそうにない。




<コンビニ店員のつぶやき>

 私はコンビニのアルバイト。実は・・・世間的に内緒だけど、私はいわゆるBL小説を読むのも書くのも好きな「腐女子」でもある。 

 ここのコンビニでも例に漏れず、スイーツ部門でダントツの売上なのは「初恋ショコラ」。購入していくのは、8割が女子だ。

 たまにCMやってるアイドルグループのファンらしき人が店頭に貼ってあるポスターをカメラで撮影したり、“ポスターってもらえないんですか”って聞いていく。

 あとは、カップルで買ったり、男性が一人で来て買っていくパターンが多い。

 さっき来た高校生らしい男の子たち・・・・栗色の髪の毛に、やけに整った顔立ちの男の子と、素朴な感じながらなかなかの端正な顔立ちの2人組。素朴なほうが身長180超えってところかな。

 棚の前でなんだか楽しそうに会話して、初恋ショコラをそれぞれ1個ずつお買い上げかあ・・・あっ!

 なんか今いいネタが浮かんだかもっ!!


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


同じ高校で彼女が親友同士なのにも関わらず、学年が違うせいか接点のない二人に会話をさせてみたくて、思わず書いてしまいました。

活動報告で2人の声を妄想したあとで書いたので、もう楽しくて楽しくって♪

まさに「俺得」状態の私です。


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