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働きたくない

隊長からお呼びがかかった。

遊撃部隊 普段まとまって行動しない私達にも統率者はいる。

遊撃部隊隊長チカゲ。これが彼女の名前だ。


私に気を遣って普段仲の良いフレアに呼んでくるよう頼んだようだ。

そして、フレアと意外なことにクラウディアさんも同行して隊長室へ向かっている。

フレア曰くやはり隊長も当事者二人の意見を聞きたいんじゃないかということ。

ああ、独断なのね。


「フレアってクラウディアさんと面識あったんだね」

「っていうより交友関係があんまり広くないレナちゃんがクラウちゃんといた事に驚きだよ。この子結構有名なんだよ?」


そうなんだろうか、あまり護衛隊自体を城で見かけないから気にかけたことがなかった。


「入隊数年で頭角を現して護衛の要とも言われるほどの強さがあるんだよ?歳はレナちゃんと同じくらいだったかな」

「やめてください、そんな大それたものじゃありません。それに...女王様を守れなかったじゃないですか」


クラウディアさんがうつむいた。

フレアが傷を抉ってしまったようだ。

うーむ、気まずい。切り替えなくては。


「フレアは昨日夕方に外へ行ったみたいだけど、なにしてたの?」

「え?あー見てたんだ。照れちゃうなぁ...聞きたい?」

「...やっぱいいや」


フレアがモジモジするような手つきでいつもいたずらしてくるときのような表情を浮かべたから聞くのをやめた。どうせまた博打とかだろう。自粛してくれ。

とそんな会話をしていたら隊長室へ着いた。



呼ばれている私から入ればいいんだろうか、先頭に立ってドアを軽く叩いた。


「入ってくれ」


ガチャ。


部屋に入ると中央の椅子に腰掛けている人物と目があう。


「よく来たレナ。それとクラウディア君。ここまでありがとうフレア」


私達と同じ服装をした黒髪の凛々しい美人がチカゲ隊長である。

冷静な気丈夫っぷりは相当なもので、いつも頼れるお姉さんという感じの人と評判とのこと。フレアに聞いた。


私達は隊長の前に横に並んで立つ、3人横並びで私は真ん中。左にはフレア、右にはクラウディア。兵士の形式通り直立の姿勢を取っている。

ゆっくり話すつもりなら椅子とかあると嬉しいのだが、まぁいい。


ちらっと左に目を向ける。

流石にフレアも隊長の前ではかなり真面目でいる。

姿勢をただしている彼女の姿はいつもの残念な感じとは違い、とても絵になってしまうからずるい。


隊長はフレアが私と一緒にクラウディアを連れてくるとは思わなかっただろう。

言葉を探しているんだろうか、少し考えると話し始めた。


「クラウディア君。昨日は災難だったな。」


クラウディアが少し言葉をのむような素振りを見せ、そのまま続けた。


「いえ、正直立ち直るのには時間がかかると思いますが、皆さまのおかげで少しずつ心の整理はできてきました」

「ほう、まだ立ち直れないどころか起き上がれないような兵士も多いが君のような心の強い部下を持てて女王様も幸せだろう」


クラウディアさんと交わされる軽い社交辞令。でもこれが彼女の完全な答えだろう。これからどうするかは知らないが、昨日のことを事実として飲み込んでいるのはよくわかった。

まぁ、さっき私が爆弾を投げたせいで頭の中の優先順位が狂ったのかもしれないが。



隊長は「さて」と前置きすると、ゆっくりと立ち上がり部屋の中央に置いてある椅子に座るよう促し、自身も座ると本題に入った。


「レナ、まさか君がリーゼルの娘だとは思わなかった。」

「だと思います。私も人に言わずに今まで生きてきましたから。」

「飛び抜けた戦績は親譲り、ということか」


私の戦績って飛び抜けていたのか?

疑問を顔に浮かべてフレアに視線を送ると首を縦に振った。


「隊長は母のことを知っているのでしょうか?」


言い回し的に母のことを少なからず知っていそうだったから聞いてみる。


「君の母はこの隊で隊長をしていたらしい。すまないがそれ以上はわからないんだ。」

「そうなんですか!?」

「私は君の母と入れ替わりで隊長になったらしくてな。新人の頃に何回か見かけたのだが、凄まじい力を持ってることくらいしかわからなかった。もしかしたら他の隊長が知っているかも知れないが」


思っても見ない情報が出てきて少し大きな声が出てしまう。

私の母がこの隊にいたことは知っていたが、まさか隊長だとは思わなかった。

私がそうだったように別の隊の情報は入れようと思わなければなかなか集まってこない。

隊長格の人と話すことはあまりないので、情報は持っていないと言いつつも私よりもたくさん持っているかもしれない。

これまでは名前を出さずに調査してたからどうしても抽象的な情報しか集められなかった。

でも直接名前を出せるようになったことでこれからは情報を多く入れられるようになった。それだけでもうけものかもね。


とりあえず他の情報も欲しいところだが隊長の口ぶりからこれ以上めぼしい情報なさそうだ。


「他の隊長...」


兵士は強さに比例して長命になる。

一般の兵士は大して一般市民と変わらないのだが、強い兵士ほど女王と同等かそれ以上に生きるとも言われているのだ。

隊長格、つまりは年長者を探せば昔のことを知れるかもということだ。逆に敵対したくない人たちとも言えるが。


「話がそれた。その隊長たちとさっき会議があってな。君の話になった」

「そうでしょうね」


リーゼルの娘という情報と、女王の遺言。渦中にいた私の話にならないわけがない。

もしかしたらその場に呼ばれたかも知れなかったのだ。それは結構嫌だな。絶対胃に悪い。


「女王はリーゼルを探せと言ったそうだな。それについてどう思う?」

「私は今まで母を探していました。」


流石にクラウディアに言ったままで真実を話すつもりはないが、ある程度そのままを話す。

クラウディアも少し悩まし気な顔をしていたが、視線を私からそらした。

...まだ黙っていてくれるようだ。


「今までほとんど情報があつまらなく、メジャーワーカーになれば少しは好転するかと思ったのですが、全くその気配はありませんでした」

「女王様は近くにいるとも言ったそうだな。暗殺の件となにか関係があると思うか?」


難しい質問だな。

暗殺と母の件が関係なく女王が母の情報にたどり着いて死に際に教えてくれたのか、死に際に母のことを知ったのか。もしも母が暗殺者なら国を崩壊させるよう企んだものを探し助けてもらえと女王は言うのだろうか。その事をわかっていて隊長も聞いてきているのだろう。


「おそらく同じ答えだと思いますが、現状まだわかりません。こちらからも質問させてもらいますが、暗殺の追加情報はありますか?」


聴取を終え、部屋に閉じ込められていた私に情報を集めるすべは無かったのだ。このくらいは教えてくれるだろう。


「すまない。これは責任者として謝らせてくれ。暗殺者が近くに居そうなうちに調査をすべきだったのだが、未だになにも進んでいない。」

「では会議で何が決定したのでしょうか」


クラウディアが横から淡々と問いただした。

それはそうだ。今何が原因で何が滞っているのかはっきりしてもらおう。


「この街、ないしこの国の、運営方法だ」

「運営方法ですか?」

「そうだ。統率者がいきなりいなくなったと知ったら国民はどうしようもないだろう?」

「たしかに」

「幸い母体は稼働している。私達が普段通りの仕事をすればしばらくは普段通りには街が回っていく筈だ」


理屈はわかった。日々の政治を普通に回すために事件の捜査をするリソースがかけないということだ。


「そこで私達に話が来た。私達遊撃部隊はもとより自由に仕事をする部隊だ。そして女王の警護等身辺の世話をしていた者たちも空いた。そんな私達で調査を進めろということだ。」


そこまで聞いて、大きなため息をつきたい衝動に駆られた。

話の筋が分かってしまった。

分かってしまったからこそ、胸の奥が重い。


結果次第で、この国は変わる。

それを、私たちに委ねるということなのだろう。


まぁ、つまるところ丸投げだ。


めんどくさいにもほどがある。後から本決定が命令という形で来るのだろうか?

疑問は尽きない。だいたい、そんな不確定な調査を行っている途中に政治が回らなくなったらどうするのだろうか?


上層部への不満を顔に出したまま隠すこともしない私に対して、隊長は表情を変えずに続ける。

他の二人も表情を変えない。内心はどう思っているだろうか。


「これは他言無用で頼む。」


隊長の空気感が変わった、とりあえず不満は置いてわたしたちは頷く。


「女王の暗殺は、我々兵士で秘匿する。不用意な心配を何もできない国民たちにさせるよりは方針が決まるまで外に知らせないようにするということになった。」


クラウディアが身を乗り出してなにか言おうとしたが、フレアによって止められた。

クラウディアにも言い分がある口を開かなくてもそんな事はわかった。

まぁ、自分が愛した親みたいな人が弔われないのは不愉快だろうな、とは思うが。


やはりクラウディアは優しいな。

上部の考えに正当な疑問を持つし、ちゃんと女王にも国民の感情にも寄り添った考えができている。


それでも、私が指導者であっても同じ決断をしただろう。

女王の訃報を聞いた国民がどうなるかわかったもんじゃない。それこそ暴動が起きても鎮圧を指示する指導者がいないのだ。


それに、ここで隊長に談判したところで別の隊長たちとの決定に響くことはないだろう。それを踏まえてフレアもクラウディアを止めたのと思う。


「この状況をなんとかするためには君たちの力が必要だ。レナ、君の答えを聞かせてくれ」


とりあえず話すことを話しきっただろう隊長がゆっくりと息を吐いた。

正直自分が納得したかしないかは定かじゃなくても決定事項を淡々と部下に言う。その文句も甘んじて受ける、それでも譲歩は出来ない。


板挟みだね。


私は隊長なんてやりたくないな。っていう同情が先程の怒より勝ってしまった。



さて、―――


私がこれからすべき仕事。

すでに強制を迫られているようなものだが...

犯人探し?いや違うな。

女王の遺言を元に街の運営方針を決める。

大躍進じゃないか、少なくとも働きたい人からしたらね。

私は自分が働く意味を見出せなくなってきたのだ。正直自分を見つめ直す時間が欲しい。


自由に選択できることが今後できなくなってしまうならば、私の答えは決まっている。


「休みをください」

「...今なんと行った?」


隊長は聞き間違えたか?と確かめるに聞いてきた。

何度聞かれようが答えは決まっている。ここは明確に言わないとなし崩し的に言いなりになってしまう。


「私に考える時間を、休みをください!」

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