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やってくるのは

「さむい」


寒さに不快感を覚えて目覚めた。

私達メジャーワーカーは普通の風邪などひかないようになっている。それでも寒いものは寒いのだ。快適にして寝たはずが、体が冷えて不快感を覚えるのは常人と何ら遜色がない。

むしろ朝にあまり強くない私にとっては、この時間が一番の弱点と言えるだろう。


朝に弱いと言っても仕事はこなさねばならない。無理矢理にでも体を起こすために窓を押し上げると、部屋の中を外の空気で満たす。

吹き込む風に冬を感じてまた身震いしてしまう。

昼間は秋真っ盛りという感じなのだが、日が沈むとどうしても秋とは呼べないほどには気温が低下する。

眠い目を覚ますにはちょうどいいかとも考えたので底から冷えないように一枚羽織りつつも冷たい風でしっかりと目を覚ます。


吐く息の白さに感嘆しつつ窓の外をみて、自分の阿呆さを鼻で笑った。


寝ぼけていた私は遅刻しないように目を覚ますことで頭が一杯で、時間を気にしていなかった。

外は依然として真っ暗だし、夜が明け日が昇るまであと一時間以上はあるだろう。

仕事なんて日が昇ってから準備しても十分に間に合う。まして夜勤の人たちも眠さに目をこすりだす時間だというのに私は何をしようというのだ。


女王様が亡くなってからというもの、こうやって不規則な睡眠をすることが多くなってしまった。

私自身、女王様の生活リズムに合わせて今まで過ごしてきたから、未だに彼女のいない生活に体がついて行かない。そういうことなんだろう。

どうしようか、無理やり目を覚ましたせいで眠くもないし、もう一度眠りについたとして起きられる自信もない。


まぁ、夜勤の兵士も居るのだ。食堂はずっと空いているだろう。

腹が空いているわけではないが、朝食を取ってから仕事について考えることにする。

そう考えて窓を締めたら、部屋を出る準備をする。とにかく次の行動を決めて暇な時間ができないように行動を心がける。

私は時間を置くと色々考えてしまうと自負している。未だに女王様について割り切れていないし、私に仕事を任して行方をくらました友人のこともよく思い出す。

自己分析を進めながら部屋をあとにした。


朝食を済ませ城の周りを散歩していると日が昇ってきたので、仕事を始めることにする。

始めると言っても私の仕事は今女王様の死因を突き止めるということになっている。


調査すると言っても既にあれから一ヶ月以上経過しているし、犯人がうまいことやったのか手がかりは何も見つからなかった。

これを持って答えとして打ち切られるとも思ったのだが、私自身納得していないし、どうやら上層部が許してくれないようだ。


それもそうだろう。

女王様の死に対する怒りはもちろんあると思うのだが、上層部が必死に議論しているのは今後のこの国のあり方だ。そこでもし新たな役を立てる決まっても同じような犯行が起きてはならないのだ。

そうして私は今日もわからない手がかりを一人で探すことになる。


愚痴を言わせてもらうならば、護衛部隊は女王様がいなくなってから事実上の解体が決定した。私自身、調査という仕事を任されてから部隊長に呼び出されて異動を申し付けられた。

女王様に可愛がられ一生懸命仕事をしてきたつもりが、彼女の死に伴って「守れない兵は護衛にいらない」と窓際族にされる。とんだ皮肉だな。

そうして異動させられたのは、レナと同じ遊撃部隊だ。

ほとんど同僚に会うことはないが、チカゲ隊長にはとても良くしてもらっている。

仕事のために融通を利かせてくれている彼女のためにも、今は頑張っていこうと思えている。


そんなこんなで今日も仕事をしようか。

と思って居たのだが、先程隊長から呼び出しがかかった。



隊長室へ行き扉を開けると、人影は見当たらず私が一番乗りということがわかった。

前々から思っていたが、この隊はマイペースな人が多いと思う。全員の職務形態が違うのだ、なんとかならないんだろうか。


「おはよう。クラウディア」

「おはようございます。隊長」

「招集したが、出払っている物がほとんどだろう。ぼちぼち集まり始めるとは思うが、先に言っておく。今日は君にも遊撃部隊の仕事をしてもらう。」


わざわざ集まって言ってきたのだから重要な要件なのだろう。詳しく聞こうと思ったが、他にも人が集まり始めたので相槌を打つと適当な配置について隊長が口を開くのを待った。

集まったのは5人程度。この部隊は確か10人も居なかったので、半分以上ならかなり集まったほうだろう。


「おはよう諸君」


一応敬礼...協調性無いな。私以外はほとんど無反応だった。

隊長もそれは分かっているようで、「手短に」と前置きをするとそのまま話を進めた。


「赤の国、王都メノウからこちらに向けて獣の大群が押し寄せてきていると今朝方伝令が入った。数は約3千で規模については未知数とのことだ」


全員静かだった室内だが、一層の静寂が訪れたような感覚に陥る。

さらっととんでもない話が出てきたからだ。


3千!?

サイズにもよるがこれが全て大型であれば国が危うい。そんな数だと思うが。


「大群は進路的にトルマを経由してくる。これらの討伐、君たちに当たってもらいたい。他の部隊も動くと思うが、あえて個別に指示は出さない。やり方も各々考えてくれ。戦果を期待する。」

「「「了解」」」

「以上だ。解散してくれて構わない」


話を聞いている最中、皆にやる気が灯るのを感じた。先程までの気だるそうな雰囲気が嘘のように、一斉に挨拶をすると解散となった。


手短に、本当に手短に危険な任務を与えられて解散になった。

私が隊員のこの緩急に呆気にとられていると、見知った顔があるので声をかける。


「おはようございます。フレアさん」

「おっ、おはよー。クラウちゃん。早いねー」

「そちらも相変わらずですね」


マイペース筆頭フレアさん。眠そう。

さっき命に関わる命令が下ったとは思えないほど楽天的なそれに若干の苛立ちを覚えつつ気になったことを質問する。

その頃には部屋に私とフレアさんと隊長しかいなくなっていた。

一応隊長の前だから礼儀正しく、なんて思ったが対する先輩がこんな感じじゃどうしてても一緒だろうか。

この前のようにちゃんとした要件のときはもっとしっかりするっていうのは知っているし。


「今回の任務、どう思います?」

「どうって、とても危険だろうねぇ。たとえ精鋭でも油断はしちゃいけないよ」


平然と答えてくるが、命がかかった戦いが恐ろしくはないのだろうか。

隊のメンバーも同じような態度だったし、正直今までと価値観が違いすぎて気が狂いそうだ。

そんなことを考えていると、隊長の方からコメントがあった。


「異動してきてすぐの君が彼女らの態度にギャップを感じてしまうのは無理もない。大目に見てやってくれ。もともと実力重視で私が甘やかしているということもあって君の居た場所とは随分違った環境になってしまってな。それでも彼女達にやる気があるのはわかるだろう?」

「確かに。明らかに集まった時と解散のときの覇気が違いましたね」

「そういうことだ。皆同様にこの国を守りたいほど好きということは変わらないと思ってくれ」


街が好きか。ただの戦闘狂も居そうだし、レナの様に内心では何を考えているかわからない人も居そうだけどさっきいた人たちは隊長に対する忠誠心はあるんだろう。

それに最後のあいさつのようにやる気に満々ている様子からあの人たちは確かにこの国が好きなんだなとわかった。


「わかりました、深くは考えません。私もこれで失礼いたします。」

「ああ、ふたりとも気をつけて。私も状況がつかめれば出たいのだが、ひとまず暇な奴らと会議だ。」


隊長達がいつもやっている会議に対して悪態をつき始めたところで私とフレアさんは会釈して退室した。

会議好きな隊長がいるんだろうな。私の所感としては、現状では正直無駄なことをやっているようにしか見えないのだが。


そのままフレアさんと分かれるとまずは戦況分析から入ろうかと思う。

女王様の死から獣の大群が街に攻めてくる一連の流れ、無関係とは到底思えなかった。


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