表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/38

37




 山間部を抜け、コンポール領のワッシュレイ湖までは馬車で向かうと半日かかってしまう。しかし、魔法スキルSSランクのパーティーメンバーが増えたことで、複数人による同時詠唱の重ね合わせで六名全員での転移が可能となった。

 ルナセイラ一行は、コンポール領の一番大きな街エイワーズへ魔法転移で向かい、その後ワッシュレイ湖の付近の町、ノマロンへ馬車で向かうことにした。

 武器問題が解決したことで、旅の目的もリュキスエント石を探す必要がなくなり、予兆の浄化に切り替えることになったのだ。


 「私はコンポール領を治めている伯爵に状況を伝えてくるよ。ノマロンは転移魔法で行けるから、みんな先に行っていてくれるかい?」


 「――わかりました!気を付けていってきてください!」


 セイフィオスはルナセイラのマジカルナイツ筆頭としても動かなければならない。


 彼の言葉は何も間違ったことなど言っていないのに、ルナセイラは引き止めたくて堪らなかった。


 ほんの数時間・・ルナセイラは胸がきゅうっと締め付けられる気持ちを胸に秘め、精一杯の微笑みを作ってセイフィオスを見送った。





 すでにワッシュレイ湖の石碑周辺に『予兆』が発生しているという報告が上がっていた為、いつでも避難指示に応じてもらえるように一番強い権限を持っていたセイフィオスが領主に協力を仰ぎに行くのがベストだった。


 その間、他のメンバー五名は馬車でノマロンへ向かい聞き込み調査だ。


 「あの・・・サーシェン様が外の御者席で良いのですか?」


 走る馬車の中で不安げにルナセイラはヘラに問う。


 「大丈夫だと思います!というかその方が良いんですよ!」


 「その方が良い・・ですか?」


 「はい、彼は匂いで魔力を嗅ぎ分けるじゃないですか!

 万が一潜伏の敵がいた場合、それは魔信仰の信者たちの可能性が高いです。

 視覚による確認よりも、嗅覚による感知のほうが探知が早そうなんですよ。だからサーシェンが自分から御者席を選んだんです!」


 初めて知ることばかりにふむふむと頷きながら納得するルナセイラに、ヘラは「大丈夫大丈夫!」と笑顔で答えた。


 執務室でも感じたが、マジカルナイツ五人の心の距離感がたった一日で、急激に近づいているように感じる。


 メンバーの中でセイフィオスが一番年長ではあるが、ヘラがお姉さんとしてフォローしてくれている。サーシェンとエディフォールはいつも通りだが、レインも一歳しか違わないので、年長二人の存在感はかなり安心できる。


 「ヘラ様は『聖魔団』の調査員もしたのですよね?『魔信仰』の信者はすぐにわかりましたか?」


 「わかりましたよ!私も魔力を視る事が出来るので、すぐにわかりました。真っ黒な靄のようなオーラを纏っているんです」


 ――・・セイが言っていたのと同じだわ・・・・


 「そうなんですか!!」


 「――ところでルナセイラ様!!私の事を様付けで呼ぶのはお止めください!」 


 「え?・・だ・だめですか?」


 「私はヘラと呼ばれたいです!丁寧な言葉もできれば私にはやめてください!」


 なぜだろう。ヘラは自分より背も高くて綺麗なお姉さんなのに、まるで子猫のように瞳を潤ませて懇願されたら・・・


 「わ・・わかりました。ではヘラとお呼びしますね」


 美人さんの涙にはルナセイラは抗うことなど出来ない。

 馬車に乗り込んで出発前からこの調子。


 「え?!ヘラだけずるいだろ!!ルナセイラ様!!俺の事もレインって呼び捨ててくださいね!!」


 「ぇえ!?・・わ・・わかりまし――」


 「――ちょぉっと待った!!それなら僕の事もサーシェンって呼んでよぉ~?」


 「――待て待て!!俺の名前は長いからエディと呼んでくれるよな?!殿下などと呼ばないでくれよ?!」


 ――な・・なんで皆急に呼び捨てされたがるの?!


 急にヘラに便乗してレインもサーシェンも、エディフォールさえも身を乗り出して懇願するので動揺が隠せない。


 「そ・・そんなに呼び捨てで呼び合った方がよいですか?」


 「それはそうですよ!様付けしあうよりかは断然距離感は縮まりますから!!

 マジカルナイツメンバー同士は、もう呼び捨てしあってますよ!だからルナセイラ様も是非!」


 笑みを浮かべながらも力説するヘラの圧がすごい。


 「なるほど・・確かに距離感を縮めるのには良さそうですね!――では私の事はルナと呼んでくださいね!」


 「「「ルナ・・・・」」」


 「え?・・どう・・しました?」


 男三人は頬を染めて名を呼んで固まった。

 

 「――あははっ!!どんだけ純情よ!!

 ルナ!どうやらこの三人はルナが大好きで堪らないみたいね!」


 豪快に笑いながらも、ヘラは「勿論私も大好きだけど!」と付け加える。


 「・・・・私・・友人は今まで二人だけだったので・・なんだか嬉しいです!」


 「二人?!そんなに少なかったのか?!」


 嬉しそうに頬をほんのり朱に染めたルナセイラに、エディフォールが驚愕の眼差しで身を乗り出し問う。


 「ぇ??――私、治癒の力に気付くまで友人はマリーエルとセイだけだったので・・」


 「セイって・・兄上の事か?!」


 「はい・・そうですよ?」


 「そんなに・・な・長い付き合いだったのか?」


 「――はいっ!学園の図書室でお話をする仲間でしたので、もう二年半以上になりますよ!とっても仲良くしていただきました!!」


 「図書室・・・・二年半・・仲良く・・」


 エディフォールは顔面蒼白で俯いてしまう。


 「え?・・・エディ?・・どうしたんですか?」


 「あ~~エディはまあ・・落ち込んでるだけだよ。――まぁ僕も同じだけどねぇ~・・」


 ――エディとサーシェンが同じことで落ち込む??


 「・・・・・あっ!わかりました!!――アイナさんのことですね?!」


 ルナセイラは二人の気まずげな反応の訳に気付き、すっきりした表情で微笑む。


 「「~~~~~~っ!!」」


 「ぶはっ!!ちょっ・・まさかと思うけど・・なーんか図書室でルナに見られたら困るものでも二人は見られたわけ?」


 びくっ!!と肩を震わせたサーシェンとエディフォールの顔がわかりやすいほどに青ざめ引きつる。


 二人より三歳も年上だからだろうか。ヘラはけらけら爆笑しながら二人を揶揄った。


 ――まぁ・・人前では言えない事してたものねぇ~・・


 ルナセイラは流石に見た内容までは口にしない。それでも、ヘラとレインにおおよその予想だけでほぼ当てられてしまい、ノマロンへの道中しっかりエディフォールとサーシェンは二人に揶揄われたのだった。





 コンポール領の街エイワーズは王都ほどではなくとも人の多く行き交う発展した街であった。

 数十店舗は超える五階建て建物。その建物の中にはテナントとしていくつか店が入っていて、大いに賑わっている。露店の通りにも、四十前後の店が並んでいた。飲食店や酒場も多く点在し、昼も夜も賑やからしい。


 しかし、ノマロンは賑わっていたエイワーズとは真逆なのだそうだ。

 エイワーズから馬車で二十分程走らせた場所に位置し、ノマロンは小さな町で人口は200人前後。ワッシュレイ湖の石碑のおおよそ反対側のほとりにある。町は湖で獲れる魚などが主食になっているらしく、路面店には魚類が多く並ぶらしい。


 なだらかな傾斜を馬車で進み、十五分程走らせただけでサーシェンの様子が変わった。

 

 「あのさ・・まだ湖見えてないのにすでに匂いがする・・」


 すぐにレインも馬車の窓を開け、進行方向を確認する。


 「うわ・・確かになんかうす暗く感じるな!!」


 「何があるかわかんないから皆気を付けておいてよ~もしかしたら・・町も危険かもよ?」

 

 「わかりました!あと五分程で到着ですよね?なるべく住民の方たちがどんな状況であっても傷つけないよう防御重視でおねがいします!」


 ルナセイラの言葉に皆同意し気持ちを引き締め直す。


 「了解!!」


 サーシェンは自分の半径五メートル範囲に防御結界魔法を展開し、御者と馬も守れるよう配慮したようだ。

 なだらかな森林の中を進み、町が見えた時にはルナセイラですらも空気の淀みと重さで異変を確信する。

 念のため町の外で馬車を待機させた。サーシェンは魔法石を置いて継続的な防御結界を展開し直す。


 「僕たちが戻ってくるまでここで大人しく待っててよ?結界からでなければ人に襲われそうになっても大丈夫だから!わかったぁ~?」


 サーシェンがしっかりと御者に言い聞かせると、コクコクと強く頷き同意していた。

 

 「――それでは、行きましょう!!」


 嫌な予感しかしないノマロンの中へ五人は入っていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ