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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
四章 聖魔団と治癒の力の聖女の秘密
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 セイフィオスとレインのにらみ合いは終わらず、いかに自分がルナセイラのマジカルナイツにふさわしいかのアピール合戦の応酬が始まり、気づけば夜の帳が下りていた。


 流石にこのままではアピール合戦で夜を越してしまうと危惧したフレキセンは、早朝に模擬戦で勝負をしてルナセイラに自分の有用性をアピールする。ということで二人を納得させた。


 ルナセイラとセイフィオスはフレキセンの邸で夕食を共にした後、村の宿屋に泊まることにした。




 ***




 「――あの・・セイ?・・どうしてこうなったの・・かな?」


 部屋に案内されたルナセイラは、なぜかセイフィオスとダブルベッドで向き合って腰かけている。


 「私はルナセイラを守る役目があるでしょ?オレイヌ邸では流石に遠慮したけれど、これからの旅ではずーっと私が同じ部屋でルナを守るよ!」


 「それ・・セイはちゃんと・・休めるのですか?」


 『毎晩同じ部屋で眠る』という話に、セイフィオスが気疲れするのではと心配になり、思わずぽろっと本音を口にしてしまったのがまずかった。


 「・・・・それはどういう意味で言ってる?私がルナを夜這いしちゃうと思って心配しているのかな?それとも夜這いしようとしているの?」


 くすりと微笑んだセイフィオスは、顔を近づけ覗き込んでくる。


 「ちがっ!!・・わ・・私の事気にしてたら・・ちゃんと眠れないんじゃないかって・・おもっ・・おも・・も・・もっ・・もぅいぃっ!セイの馬鹿ぁあっ!」


 セイフィオスに揶揄われた羞恥心で、顔を真っ赤に染め上げながらも身振り手振りで弁解するが、ルナセイラは堪えきれず勢いよくがばっとリネンを被ると、ぱぱっと靴も脱いで身をすっぽりと隠した。


 ぷるぷる震えながら、二人きりの夜をどう過ごしたらよいのか分からず悩み込んでしまう。


 どのくらい時間が過ぎたのだろう。


 ふわっと暖かい人肌の温もりが、リネン越しに伝わってきた。


 「怒っちゃった?・・ごめんね・・ちょっと嫉妬してしまったみたい・・ルナを守るのは私だけでありたいのはワガママだったよね・・」


 ――セイ?・・まさかレイン様に?


 「セイ?・・ほんとに嫉妬したの・・ですか?」


 リネンから少しだけ顔を出すと、気遣うようにセイフィオスへ声をかけた。


 「したよ・・だって・・聖女様のマジカルナイツはずっと聖女様と行動を共にできるんだよ?・・私はルナと二人きりがいい・・誰にも見せたくない・・ひとり占めしたい・・」


 五歳も年上のセイフィオスの可愛いワガママに、ルナセイラの胸はキュンキュン甘く疼く。


 「――・・私も・・セイと二人の旅が好きですよ?」


 「――!!・・それじゃ――」


 「――でも、聖女ローナ様のマジカルナイツは五人もいたんですよね?・・・・しかもSSランクの!」


 「~~~~~~・・・」


 ルナセイラの言葉で言いたいことを察し、セイフィオスは口ごもる。


 「私・・強いマジカルナイツが欲しいから言ってるわけじゃないんです。セイと幸せな結末を迎えたいだけなんですよ」


 「幸せな結末?」


 「はい!・・私は・・アイナさんみたいに、同時に何人もの人を恋愛感情で好きにはなれないです。それは信じてほしいんです!

 ・・だけど、私はセイの安全も大切なんですよ。セイにマジカルナイツ五人分の働きと危険を背負わせたくないです・・」


 「――私の・・身を心配してくれているのかい?」


 「当たり前です・・私だけが生き残っても意味ないです・・私とセイは・・ずっと一緒でしょ?・・・・その為には助けあえる仲間も必要じゃないですか?」


 「・・・・・・・・そうだね・・」


 同調するセイフィオスの声音は、それでも寂しさを滲ませていた。


 「セイは・・どうしたら不安が少しでも軽くなる・・かなぁ?」


 「不安は・・やっぱりあるかな・・だって私たちは恋人じゃないから・・何か証が欲しいと思ってしまうのは・・やっぱり我儘・・かな・・」


 ――!!・・そういえば・・私たち付き合ってないんだったーーーーー!


 ルナセイラは今更ながらに思い出した。


 聖女の役目に集中するために、浄化が終わるまで付き合うのは待ってほしいと告げたのだ。


 だがしかし!二人きりの密室でたとえリネンごしであっても、ベッドの上で抱きしめられているこの状況は、恋人同士でなければ許されないシチュエーションである。


 ――わ・・私・・恋人は待ってって言ったけど・・言ったけど・・こんなことしておいて、恋人じゃないって言い張るのは・・ただのクズなのでは?!


 先ほどまでのときめきは一瞬で消え去り、胸が罪悪感でじくじくと痛みだす。


 ――っだ・・だめだよ!!・・こんなの不誠実すぎるっ!・・これからも二人きりなら、こういう時間は幾度となく訪れるはず!・・それなのにイチャイチャしておいて、恋人じゃないなんて言い訳するのは絶対ダメ!!


 ルナセイラは勢いのままに飛び起きてリネンから抜け出すと、ベッドの上に正座して覚悟を決めてセイフィオスをじっと見つめた。


 「セイ!!す・・す・好きですっ!・・わ・私と・・恋人になって下さい!!」


  耳まで真っ赤に染めながらも、ルナセイラは真剣な眼差しではっきりと告げてから、額を勢いよくベッドシーツに擦りつけ土下座する。


 「え・えぇえ?!ど・・・どうしたの急に?!・・いいの?!後悔・・しない?」


 突然のルナセイラの真剣な告白に、セイフィオスは驚愕してから目を瞬かせた。


 「し・しませんっ!!」


 「・・私は・・独占欲が強いよ?」


 「う・・嬉しい・・ですっ!」


 「抱きしめたり・・甘えたり・・してもいいの?」


 ーーそれはいつもされているような?


 「私っ・・セイとの2人きりの時間が好き!・・どうして良いかわからなくて・・ドキドキはするけど・・嬉しくてたまらないんですっ!

 これからの旅も・・セイとずっと一緒にいたい!・・だけど、恋人じゃないのにずっと一緒は・・絶対・・おかしいでしょう?

 恋人のようにもっとぎゅって抱きしめてほしくなるだろうし・・恋人のように手も繋ぎたくなるだろうし・・恋人のように頭も撫でてほしいし――」


 想いを早口で必死に紡ぐルナセイラの腕をセイフィオスは勢いよく引き寄せた。


 ぽすっと胸の中に閉じ込めぎゅうっと抱きしめる。


 「――ありがとう・・すごく・・すごく嬉しい!・・私も・・ルナが大好きだ。まさか恋人として・・ルナをこれからも守れるなんて・・嬉しくて堪らないよ!」


 紡がれるセイフィオスの言葉からは陽だまりのような暖かさと、胸をきゅうっと甘く締め付けるような 深い深い愛情が感じられた。


 「私も・・嬉しい・・」


 抱きしめられたまま彼の背中に手を回し、耳を胸に押し付けるとドクンドクンと高鳴るセイフィオスの胸の鼓動が耳朶を甘くくすぐる。


 目の前には、途中までボタンが外され露わになる素肌。普段見ることのできないセイフィオスの逞しい胸板からは、ふわりと微かなコロンが香り、より一層愛おしさがこみ上げルナセイラはのぼせ上がる。


 まるで花の蜜に引き寄せられる蝶のように、気づいた時にはセイフィオスの胸元に唇を優しく触れさせていた。


 「――んくぅっっ!!」


 突如ビクッと身体を強張らせ、あられもない色気の籠った甘い呻き声が部屋に響く。


 ルナセイラは慌てて唇を離してセイフィオスを見上げた。


 微かにだが、セイフィオスの身体が白く光っているように見えるのは気のせいだろうか?


 ーーこれは・・治癒の光?


 「ど・どうなってるの?セイ・・大丈夫?!」


 頬を朱に染めあげ、蕩けたように潤んだ瞳、色気が駄々洩れた面差しのセイフィオスは、はぁ・・はぁ・・と荒い呼吸を繰り返しながら甘い吐息が漏れていた。


 「こ・こんな感覚初めてだよ・・治癒してもらった時と同じ・・・・なのに・あったかいだけじゃなくて・・きょ・・強烈な気持ちよさだった・・よ・・」


 「え?!ど・・どういうことですか?!」


 「多分・・コレ・・加護じゃないかな?・・・聖女の加護」


 「聖女の加護?・・私が?・・どうやって??」


 「触れたでしょ?」


 「な・何がです?」


 「・・・ココに・・ルナの唇・・」


 恍惚な眼差しで微笑みながら、セイフィオスは先ほどルナセイラにキスされた胸元を人差し指でトントンと指で示した。


 「~~~~~っ!!」


 ――ま・・まさかキスが聖女の加護?!


 とんでもない事実に恥ずかしさでいたたまれず、正座していた身体をコロンとベッドに倒れ込ませると、再びリネンを頭から被ってルナセイラはそのまま突っ伏した。


 ――だ・・誰か嘘と言って―――――っ!!

 

 ルナセイラ十七歳。人生初の人肌への口付け(聖女の加護)は――――・・恋人(セイフィオス)の胸でした。



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