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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
四章 聖魔団と治癒の力の聖女の秘密
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 聖魔団のマッシェル村を後にすると、すぐにルナセイラとセイフィオスはルカスの助言通りローゲル平原遺跡のアッシュヘル領を馬車で素通りし、リッセンハウル村へ向かった。


 山道は王都と比べると凸凹道ではあるものの、荒れた山道ではなく馬車二台がすれ違える程度には幅が広く人の手が加えられていると明らかにわかる。


 リッセンハウル村はマッシェル村とは異なり山間に位置する小さい村であった。


 村は木製の高い塀で囲まれており、まるで森の中の要塞のようにも見える。


 門をくぐってすぐの馬車寄せへ馬車を止めて降りると、


 遺跡の石碑はなんとリッセンハウル村の中の一番奥にあった。


 まさか村の塀の中に石碑があるとは思わず、あまりの近さに二人は驚愕する。


 もしこの石碑付近に魔力溜まりが発生した場合、恐らくこの村は魔獣によってあっという間に荒らされると断言できた。


 むしろ生き物が魔獣化しても、塀の中に閉じ込めようとする意図すら伺えた。


 村人は全く怯えたり不安な様子はなく、二人の到着を笑顔で迎えてくれる。


 ――これは一体・・どういう事??


 驚く二人の下に、同じ年の頃と思われる少年が近づいてきた。


 「なぁ、あんたたちはもしや聖女様ご一行かい?」


 少年の不思議な物言いにルナセイラはきょとんとしたが、セイフィオスは鋭い眼差しを少年に向けた。


 「――何が言いたい。彼女は確かに聖女だが、私たちは二人で旅をしている」


 「はっ!面白いこと言うんだな!大勢村の外に待機させといてよく言うよ」


 「――え?」


 セイフィオスの言葉を小馬鹿にするように言いかえす少年に、ルナセイラは唖然とした。


 「影に気付くとは・・君は相当なスキルもちのようだね」


 「あれくらいの気配、簡単に気づけるだろ。色とりどりな蛍みたいに光っているんだからな!」


 「!!――魔力感知か?!」


 「ご名答、俺の前では隠密はできないぜ?」


 驚愕するセイフィオスに少年はニヤリと口角を上げて笑う。


 「――これは驚きだな・・まさかこんな山奥にSSランクがいたとは」


 応えるように笑うセイフィオスの瞳は全く笑っていない。


 「ははっ・・俺は天才だからな!」

 

 面白そうににやにや笑っていた少年はひとしきり笑った後、ルナセイラに向き直り恭しく頭をさげた。


「治癒の力の聖女様にお目にかかれて恐悦至極に存じます!俺はレイン。ルナセイラ様を案内するようフレキセン様の命で参りました。」


 「伝道師様の命でいらっしゃったんですね!レイン様ありがとうございます。私はルナセイラ・オレイヌと申します。付き添ってくれているのはセイフィオス王太子殿下です。案内お願いできますか?」


 「勿論です!ルナセイラ様にお会いできるのを俺はずっとずっと心待ちにしていたんですよ!!エスコートさせていただいてもいいですか?」


 満面の笑みと熱の籠った眼差しでルナセイラを見つめるレインは跪き問う。


 「――私がいるのだから君のエスコートは必要ないよ」


 すっと一歩前に踏み出しルナセイラの腰を引き寄せると、セイフィオスは冷徹な声音でキッパリと拒絶した。


 「――言っておくが聖女様のマジカルナイツの筆頭は王族とか関係ない!能力が一番だ!あんたが筆頭だなどと思いあがらないことだな!!」

 

 レインはふんっと鼻息を荒くしながら言い返すと、ルナセイラの前を歩きフレキセンの元へと案内した。


 村は広場を中心に囲むように平屋の建物が幾つも建っている。


 石碑は村の一番奥にあったので、レインの後に続いて広場へ歩くと、村人たちが夕刻時であっても広場でわいわい楽しそうに談笑している。


 広場の抜けてすぐの村唯一の二階建ての木造の邸がどうやらフレキセンの住まいらしい。

 

 邸は、マッシェル村のルカスの邸と同じように、一階は医務室と自警団専用の部屋も含まれているようだ。入ってすぐのエントランスは二階まで吹き抜けとなっていて、大きな二階への階段が目の前にある。そして、両脇に各部屋ががあるのだが、一階の左は医務室や患者を運び入れる部屋が数部屋あり、右側には自警団の詰め所のようになっているらしい。そして二階は伝道師フレキセンの家族の住居兼執務室となっているようだ。


 レインは自警団の団長だそうだ。間違いなくセイフィオスより年下に見えるのだが、魔力が視えるSSランクなのだから相当強いのだろう。


 執務室に案内されて入ると、ルカスよりも更に一回り以上の齢であろう老人が、部屋の中央のローテーブルを囲む一人かけソファに腰かけており、勧められるままルナセイラとセイフィオスは二人かけソファへ腰かけた。レインは老人の腰かけるソファの後ろに立って控る。


 「遠い所からよくぞお越しくださった。聖女ルナセイラ様に拝謁賜り恐悦至極にございます。私はフレキセン、聖魔団を率いる伝道師の長を務めております。ルカスからは状況を確認しておりますぞ」

 

 優しく慈愛の籠った眼差しで微笑むフレキセンは、腰かけたまま深く頭を垂れる。


 ルナセイラとセイフィオスはそれぞれ挨拶を交わすと本題に入った。


 「ルカス様から伝言を受け取りこちらへ参りました。私たちは浄化の力を使うためのリュキスエント石を探しています。フレキセン様は何かご存じではないでしょうか?」


 「はて?ルナセイラ様は浄化の力が使えないというのですかな?」

 

 「はい、治癒は一人ずつであれば出来るのですが、複数人同時の治癒や浄化はできません」


 「そんなはずはないでしょうなぁ、貴女はすでに聖女として目覚めていらっしゃる。その白い淡い魔力はまさに治癒の力の聖女様の能力です」


 ――え?私もう聖女の力が覚醒しているの?!


 「フレキセン殿、聖女は白い淡い光を放っているのなら納得できますが、くすんだ灰色のような光はどうなのでしょうか?それも聖女足りえるのでしょうか?」


 セイフィオスは神妙な面持ちで問う。


 「・・・・それはもうお一人の聖女様の事をおっしゃっているのですな?」


 「その通りです」


 「聖女でしょうな・・・しかし、危うい」


 「危ういとは?」


 悲し気に告げるフレキセンにルナセイラは食い入るように問う。


 「そもそも聖女は白い光の力を纏っております。淀みがないほど清く浄化の力が強いと言えましょう。しかし、穢れに染まりやすい聖女が生まれてしまうこともある」


 「それは・・聖女ローナ様と同じ時期に生まれたもう一人の聖女様の事ですか?!」


 「左様でございます、私は聖女ローナ様のマジカルナイツの一人であり、聖女様の夫君の兄であるブレド王子ジェイキンスの子孫です。その為魔力感知できるまでスキルを高めると、魔力を視ることが出来ます。」


 「私と血が繋がっているという事か?」


 「左様でございます。聖女ローナ様の夫君もブレド王国の王子殿下でしたので、ルナセイラ様も王族の血を継いでおられますぞ。」


 セイフィオスの問いに頷くと、ルナセイラへ視線を向けてフレキセンは微笑んだ。


 「私も王族の子孫だったのですか!」


 「まずは順を追ってお話しましょう。

 二百年以上前、聖女ローナ様は魔女になりかけたもう一人の聖女様を救うため、治癒の力の聖女として聖女になられました。

 その時に聖女様に付き従ったマジカルナイツは五名おります。お一人はローナ様の夫君であるロウェイン王子殿下、ロウェイン殿下の兄ジェイキンス王子、後三名SSランク以上のマジカルナイツがおりました。

 ローナ様は真っ白な光で黒く淀んだ靄のような魔力溜まりを浄化する為、マジカルナイツに浄化の力を分け与える加護を授け共に戦いました。そして、最終的に魔女になりかけた聖女を浄化して世界を救ったとされています。これが『聖戦』のことです――」


 「――え?!ちょ・・ちょっと待ってください!

 浄化の力を・・仲間に与えることが出来るんですか?!」


 「――できます。」


 「では・・私が仲間に加護を与えれば、みんなで魔力溜まりを浄化できるのですね?!」


 「少し違いますな、あくまで魔力溜まりや魔女を浄化できるのは聖女様のみ。加護を授かったマジカルナイツは、魔獣化してしまったような生き物を元に戻す力があるのです」


 「根本は私が浄化しなければならないということですね?・・どうやったら加護を与えることが出来るのでしょうか?」


 「・・・・それは・・聖女様が伝承を残されておりません。しかし、信じられるマジカルナイツには必ず加護を与える方法があるのです。授け方は・・試行錯誤して頂くのがよろしいかと・・」


 少し言葉を濁すフレキセンに訝しんだが、新しい情報にルナセイラの心は少しだけ浮きたつ。


 「話を戻しましょう、聖女様の浄化の力や治癒は、ただ触るだけでも力を発揮しますが、願い思い描くことで様々な浄化が出来ると伝えられております。ルナセイラ様が心から願えば聖女の力が応えてくれることでしょうな」


 「そうなのですか?!素晴らしい情報をありがとうございます!試して特訓してみます!!」


 知りたかった情報が手に入り、ルナセイラはセイフィオスと見つめ合い顔を綻ばせた。


 「因みに我ら聖魔団は、聖女ルーナ様のマジカルナイツ四名の子孫によって結成された集団なのです。聖魔団の成人を迎えた団員は、皆マジカルナイツ相当の力を有しておりますぞ」


 「それはとても強い方々なのですね!!頼もしいです!」


 「ほっほ・・後ろに控えておるレインは私の孫でして、歳はルナセイラ様の一つ上ですが、聖魔団の団員の頂点に立つほどの能力を有しておりますぞ。是非ルナセイラ様のマジカルナイツの一人に入れていただきたい。」


 「私のマジカルナイツにですか?!」


 「是非!是非お願いいたします!!ルナセイラ様が王宮へ聖女候補として登城された時より、ずっと陰ながら見守りつつ、力を付けてきました!!俺なら間違いなくマジカルナイツの筆頭になります!!」


 フレキセンからの推薦でレインをマジカルナイツに勧められると、レインも瞳をきらきらと輝かせながら乞う。


 「あの・・とてもありがたいお話ですが、そうなると聖魔団の――」


 「――ルナセイラのマジカルナイツの筆頭は私しかいないよ。勝手に筆頭になろうとしないでくれるかい?君はまだマジカルナイツですらないんだということを忘れないでほしいね」


 ルナセイラの言葉に被せるように、セイフィオスはレインに牽制する。


 ――え?・・・セイはマジカルナイツだったっけ??・・なんか二人のにらみ合いがこわいっ!!


 まるでバチバチと火花が散る音と光が見えるかのように、セイフィオスとレインは激しく睨み合う。


 ――ど・・どうなっちゃうの?!



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